水の比誘電率を知っていますでしょうか。理化学辞典では約80と書かれています。比誘電率とは2つの電極間に電圧を加えた場合に真空の場合に比べてどれくらい電荷を貯められるかを示す指標です。通常のプラスチックは3~5程度ですから、非常に大きい値と分かります。
比誘電率が大きい材料で同軸ケーブルを作製すると伝搬する電磁波の速度が遅くなるので遅延回路にも適用できます。高い電圧のパルス電圧を作る際に、空気では長い同軸管が必要ですが、水を用いれば約1/9のの長さで同じ時間のパルスを発生できます。
この比誘電率はどの様な条件で測定されているかは余り知られていないようです。私も水の絶縁特性を測定していましたが、ちゃんと知っておかなければいけないと調べました。測定する周波数が 1 kHzのような高い周波数では純水も水道水もほとんど変わりませんが、家庭に来ている電気の周波数である 50、60 Hzでは差が出てきます。
この原因は二酸化炭素が大きな影響を及ぼしています。二酸化炭素が水に溶け込むことでさらに低い周波数では比誘電率が10万になることが実験で分かりました。生物の組織が低い周波数で比誘電率が高く、生物の細胞膜等の影響とされていますが、これも二酸化炭素の影響と考えられます。興味のある人は 『花井正広、高村紀充、荒岡信隆、:「200 kHz 以下の周波領域における水の比誘電率と導電率に及ぼす二酸化炭素の影響」、電気学会論文誌A(基礎・材料・共通部門誌)、第144巻、第6号、228-234頁、2024年6月』 を参照してください。
水は本当に奥が深いです。