感電には2種類ある
感電に2種類ある、とはどのようなことでしょう。1つは可逆性的な感電、もう1つは不可逆性の感電です。この2つの違いを説明するために感電とは何かを明確にする必要があります。
そもそも感電とはどのようなことでしょう。人間の組織は、大雑把に骨、脂肪、筋肉、神経、血液で構成されています。抵抗率は、骨>脂肪>内臓>筋肉組織>神経組織>血液となっており、電気を流しやすい抵抗の低い組織は血液と神経です。神経は脳で発生した電気信号を筋肉に与えて動かしたり、痛みや接触を脳に伝えるために電気を流しやすくなっています。逆に脂肪は非常に抵抗が高く良い絶縁物です。
このため高い電圧充電部に接触して体内に電流が流れるのは抵抗の低い血液と神経です。神経細胞は0.05 V、0.001 Aという程度の非常に低い電圧電流で信号を伝えているので、家庭に来ている100
Vのコンセント部分を触っただけでも過大な信号となります。この過大な信号が神経に流れ込むことが感電です。大抵は強烈な痛みを感じます。
ここで可逆性感電と不可逆性感電に話を戻します。
可逆性感電とはどのようなことでしょう。高圧充電部を触って神経に大きな電圧電流が流れて刺激を感じるけれども、神経そのものが損傷を受けず元の状態と変わらず電気信号を伝えられる感電です。冬に服を脱ぐときにぱちぱち音がしたり、絨毯を歩いてドアノブでパチッと音がして神経に電流が流れびっくりするものがこれに相当します。これは電気のエネルギーが神経組織を壊すことが無かったために、幸いに元に戻ったことになります。パソコンやスマートフォンでリセットがかかった状態と似ています。
一方、不可逆的感電は、神経に流れ電圧電流が神経の電気抵抗でジュール熱を発生して温度が上昇して44 ℃を超える温度になり神経細胞が壊死してしまうものです。いわゆる火傷で神経細胞が壊死してしまうので2度と電気信号を通すことができなくなってしまいます。この神経細胞の壊死が腕で発生すれば腕が動かなくなり、心臓で発生すれば死んでしまいます。パソコンやスマートフォンの内部で電気配線が切れて故障した状態と似ています。