コラム

所長のコラムです。

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43.クリスマスイブ・イブ

 クリスマスイブはクリスマスの前日の12月24日の夕方でクリスマスでは無いと認識している人も多いと思います。

 現在使われているグレゴリオ暦の日の切換えは正午の12時間前の夜中になっていますが、昔は暦が異なりました。江戸時代の日本では夜明けがその日の始まりでした。このため赤穂事件で討ち入りはじめは12月24日ですが、終わったのは夜明けなので12月25日です。

 一方、ユダヤ教では日の始まりは日没です、このためクリスマスイブは12月25日の始まりの夕方という意味になります。クリスマスイブはあくまでクリスマスということになります。

 時々、12月23日の夕方をクリスマスイブ・イブとイブを「前日の夕方」と表現する人がいますが、全く意味の取り違えということになります。

2025年12月21日

42.赤穂事件の不思議(2)

 赤穂事件の3つ目の不思議な点は、江戸城松の廊下でで切りつけられて無抵抗で額に傷を受けた吉良(上野介)義央の屋敷が内堀の中から外堀の外の両国近くの本所松坂町に幕府によって転居させられたことです。切られた吉良(上野介)義央には何の非も無いはずなのに喧嘩両成敗の名のもとに転居させられます。

 江戸城の内堀内は警備がしっかりしていますが、墨田川の東側の両国はすでに江戸とは言えない田舎でした。人通りも少なく、まさに赤穂浪士に討ち入りをしてくださいとお膳立てをしているとしか見えません。
実は、浅野(内匠頭)長矩が吉良(上野介)義央に切りかかった時に、吉良(上野介)義央も刀を抜いて応戦する幕府の筋書きになっていたのではないでしょうか。しかし、老体の吉良(上野介)義央がやられっぱなしになったのは想定外で喧嘩両成敗にできなかったため赤穂浪士をそそのかして討ち入りをさせたのかもしれません。

 赤穂事件の4つ目の不思議な点は、吉良邸を討ち入りした後の泉岳寺までの経路です。討ち入りが午前4時頃始まり終わったのは午前6時頃です。その後、万年橋を渡り、海岸線を2時間ほどかけて浅野家菩提寺・泉岳寺に到着します。しかし、途中に高輪大木戸があります。大木戸は犯罪者が通るのを防止するためのものです。しかし、この大木戸を何の抵抗も無く通過しています。テロリストを何のとがめなく通過させたなら、大木戸を守る役人は切腹ものです。これも幕府が討ち入りを把握しており、素直に通過させたとしか考えられません。

 赤穂事件の5つ目の不思議な点は、赤穂事件以降に高輪大木戸を泉岳寺直近に移転しています。この目的は大木戸で順番を待つ間暇な時間で泉岳寺に拝観させて赤穂事件を全国に知れ渡らせ、正当性を広めるとにあったとしか考えられません。その後、仇討ちをした浅野家はお家再興しているのにやられた吉良家は断絶しています。

 これらの不思議は幕府のある目的のためであると考えると納得できます。それは目の上のたんこぶである吉良家排除による権益の獲得です。たぶん短気で後先考えない浅野(内匠頭)長矩は幕府の誰かに、あること無いこと吹聴されてうまく利用されたのでしょう。このため浅野(内匠頭)長矩に証言されては困ります。そのために即日切腹させて口封じした可能性が高いです。

 1300年代より矢作川の水利権は吉良付近を支配する大名が持っており、1600年以降吉良家は矢作川の河道を変えて現在の西尾市の吉良吉田付近に持ってきました。そして、灌漑をおこない開墾して農地を増やしました。その過程で干潟の塩田で塩を作っていました。このため塩の製法を教えなかったため浅野(内匠頭)長矩をいじめたということになっていますが、既に塩は十分できていたのでうらみの理由にはなりません。60年前の1970年代までは吉良吉田の海岸ではわらを屋根状に組んだところに塩水を掛けて風で乾かして濃縮した高濃度の食塩水を窯で炊いて塩にする伝統工法をおこなっていました。

 吉良家が居無くなって水利権は徳川家が握り、土木工事で矢作川の流れを変えて矢作新川を作り直轄領の開墾を進めています。

2025年12月13日

41.赤穂事件の不思議(1)

 旧暦の12月14日夜、赤穂浪士47士が吉良邸に討ち入りし,吉良(上野介)義央を打ち取るという赤穂事件ですが、非常に謎の多い事件です。
吉良(上野介)義央が善政をおこなっていたということで非常に評判が良く、吉良地方では忠臣蔵の浄瑠璃や歌舞伎の評判は悪かったと言います。

 ちなみに吉良はキラキラ光る雲母が取れるところから吉良と呼ばれるようになったとのことです。

 赤穂事件の1つ目の不思議な点は、江戸城で吉良(上野介)義央に切りかかった浅野(内匠頭)長矩の処遇です。切りかかったその日に切腹になっており、どうして切りかかったのかの取り調べ記録が残っていません。口封じとしか思えません。

 第五代将軍徳川綱吉が切腹を命じたとういことになっていますが、まずこれが非常に不思議です。綱吉は日本で初めて命は大切であると宣言した将軍であり、人も動物も保護すべきであると捨て子の保護を義務化する「捨子禁止令」や動物の殺生を禁じる「生類憐みの令」を出しました。しかし、役人の一部はこれを拡大解釈して動物を虐待したものを厳罰としたので犬将軍と揶揄されてしまいました。
このように現在に通じる考えで文治政治をしようとした綱吉がちゃんと取り調べをせずに切腹をさせるはずがありません。

 赤穂事件の2つ目の不思議な点は、大石内蔵助が書いた手紙に幕府から監視されているが特に何もされていないと記しています。敵討ちを禁止していたのに大々的に敵討ちをしようとしている人物たちを放置しています。
 しかも、47士の約1/3の16名の大人数が潜伏したのは江戸城の西側にある平河天満宮で、尾張藩と紀伊藩の上屋敷の直ぐ近くです。この場所の幕府での位置付けは、万一江戸城が攻められたときに将軍が半蔵門を通って尾張藩と紀伊藩の警護のもと甲州街道に逃げ込む重要な場所です。このためこの周縁は警備を厳しくしておかないと一大事になります。このような重要な場所にテロを企てる集団を放置するのはよほどの理由でもない限りあり得ません。

残りは次回

2025年12月08日

40.油が染みた紙や布は大変危険

 この頃、コインランドリーで発生する火災の原因として、油が染みた服やタオルはよく出てくるようになりました。これは油が空気中の酸素で酸化された結果、熱が発生するためです。乾燥時に高い温度にさらされると、乾燥用の熱風に加えて衣服に付着した油の酸化での温度上昇が加わり温度が300℃以上の上昇し、布や紙の発火温度に達して燃えるものです。

 しかし、乾燥機に入れなくても、油が染みた紙や布が積み上げられると染みた油が酸化して高温になり発火することがあります。

 発火温度になっても酸素が供給されなければそれ以上燃えないので、洗濯乾燥機内部で火が出ていてもドアを開けなければ燃え広がることは無いはずです。しかし、びっくりして火を消そうとしてドアを開けてしまうと酸素が供給されて一気に燃えるいわゆるフラッシオーバが発生するため非常に危険になります。

 フラッシオーバは気体の絶縁破壊を表現する言葉でもあり、気体が高温になることを意味することでは同じなのでこのような表現になっていると推測します。

 森において枯れ葉が堆積して腐葉土になる過程で内部が発酵と酸化で非常に高温になり手を入れられなくなる現象と似ています。場合により枯れ葉の発火温度に達すれば火が出る可能性もあります。山の火事は落雷が原因とよく言われますが、場合により大量の枯れ葉が堆積して腐葉土になる過程での高温が原因の可能性もあります。

 かつて大型変圧器の部分を模擬したモデルや実規模大のモデルの絶縁試験を行うために危険物建屋内で大量の絶縁油を扱っていました。絶縁油中で実験をした電極やサンプルから絶縁油を拭きとる場合に紙を大量に使用していました。絶縁油を用いた試験をおこなう際に、最初に教えられることは油を付着した紙は、蓋のついた金属製の容器に入れて必ず蓋をするように言われました。こうすれば、酸素の供給が制限されて発火する可能性が低くなる上に、万一紙が発火しても他のものに引火しないため安全となります。

2025年12月01日

39.微小ギャップが破壊電圧を低下させる

 高気圧のSF6ガス中で0.025 mmのポリエチレンテレフタレート(PET)を2枚重ねて電極間に挟むと標準雷インパルス電圧で約25 kVで破壊を発生します。電界で表すと500 kV/mmです。しかし、0.025 mmのPET 2枚に幅の狭い0.025 mmのPET片を入れると0.025 mmのPET2枚が約15 kVで破壊を発生します。電界で表すと300 kV/mmです。これはPET片の断面である0.025 mmの沿面でSF6ガスの絶縁破壊が発生し、その放電が0.025 mmのPET 2枚を貫通させてしまいます。このような微小なギャップの放電が全体の破壊を決めてしまうことが多くあります。

 微小なガスギャップが先に放電を発生する原因は比誘電率の影響と絶縁破壊電圧の差にあります。

 気体のほとんどは比誘電率がほぼ1であるのに対して、PETのような高分子材料はPE(ポリエチレン)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を除きほとんどは比誘電率が3以上です。PETは大体3.2程度です。先の構成でガス側に加わる電界はPETの3.2倍になります。また、大抵の場合気体よりも固体の方が、破壊電圧が高い特性を持っています。このため、ただでさえ低い破壊電界のガス側にPETに加わる3.2倍の電界が加わるため、SF6ガス側が先に絶縁破壊を発生します。

 SF6ガスの0.025 mmという短い放電がどうしてPETの高い破壊電圧を低くするのかが問題です。これには放電の先端の高い電界、高い圧力、高温の熱のどれかが影響していると考えられますが、未だにはっきりしていません。大変興味ある問題です。

2025年11月24日
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