コラム

所長のコラムです。

コラム一覧

11.放電を使用した空気清浄機の危険性

 空気清浄機には各種方式があるがファン式、電気集塵方式、イオン発生方式がある。この内、電気集塵方式、イオン発生方式は高電圧を使用して放電させてイオンを発生させ集めるべき塵を帯電させて反対極性の電極に吸着させます。

 たばこを吸う人が少なくなった現在では室内で喫煙する機会が少なくなりましたが、1980年台はまだ多くの人が喫煙し、家庭、職場、電車、飛行機内での喫煙が認められていました。このような多くの人が喫煙する場所の汚れた空気をきれいにするために空気清浄機が使用されていました。この時点では、現在の空気清浄機で多く使用されている高性能HEPAフィルターは半導体の製造工場に使われ始めたばかりで非常に高価であったため、家庭や職場で使用される空気清浄機は電気集塵方式がほとんどでした。

 当時、空気集塵方式の空気清浄機が火を出した現象があり、この現象の解明にために高電圧の部門に依頼がありました。対策をするために、現象の再現をさせる必要がありました。火を出した空気清浄機はたばこのヤニが多く付着していたことから、たばこの煙を多く空気清浄機に吸い込ませる必要がありました。このため研究費でたばこが吸えるということで喫煙者が喜んでたばこを空気清浄機の前で吸いました。数人の喫煙者が、1日に一人50本以上吸うようなハードな喫煙をしても付着するニコチンの状況が発火した事故当該機とは程遠いものでした。この状況を3日続けた段階で限られた人がたばこを吸っても明らかに限界と分かりました。そこで縦横10本ずつ並べて100本のたばこを支える容器を作り、100本同時に点火して煙を出し、フィルターのところに火が来たら新しい100本のたばこに交換することを繰り返しました。すると3日後に空気清浄機が発火しました。

 この現象はたばこから発生するススはニコチンと炭素が主成分なので導電性があります。このため集塵されたススが溜まり高くなることで高電圧側の電極と間隔が狭くなりついには大きな放電が発生してその熱でススに火が着き、スス全体に火が広がりついには空気清浄機が燃えることが分かりました。

 上記のことからたばこの煙を大量に処理しないのであれば、電気集塵方式の空気清浄機は発火する危険性はありません。しかし、喫煙場所のようなたばこの煙が漂うような場所でこの頃広告を良く見るこのタイプの空気清浄機を使うと火災の原因になる可能性あります。このような状況で電気集塵方式の空気清浄機を使用する場合にはこまめに電気集塵の電極の清掃する必要があります。

2025年03月26日

10.昭和100年問題

 西暦2025年は昭和100年にあたります。

 西暦2000年になる際はミレニアム問題と言われて、19××年の下2桁を変数にして西暦を表していることが多かった。このため2000年になった瞬間にコンピュータ上では1900年となり誤動作を発生する可能性が指摘され、1999年の年末にはこの年が逆戻りしないようにソフトウエアのコードを書き換えることに膨大な時間と費用を費やしたと大きなニュースになっていました。

 1970年当時から日本のコンピュータが輸出されて海外の基幹コンピュータとして使用されていると言われており、日本のコンピュータは昭和を西暦に変えて年月を決めているとされていました。コンピュータが本格的に作られた1970年代後半の当時も昭和が100年になることは無いとして2桁で表されたため昭和100年は昭和0年として認識してしまい、その結果西暦は1925年になることになり、2000年問題と共にこれも大きな問題になると言われていました。

 しかし、2000年の時とは違い昭和100年はほとんど話題にされること無く、しかも表面上何も問題なかったように見えます。しかし、年末年始に鉄道会社、航空会社においてサイバー攻撃が原因でうまく動作しなかったと報道されているものや年始にかけて銀行がシステムを変更するために数日間運用を停止したものが実は昭和100年問題であった可能性があると思っています。

2025年03月19日

9.PTFEはスポンジのごとし

 PTFEは絶縁抵抗が高すぎて問題を引き起こす可能性について「8.PTFEは絶縁材料として過ぎたるは及ばざるがごとし」で書きましたが、他にも変な特性があります。PTFEは合成すると長いひものような構造になります。しかし、不活性のため他の分子とはほとんど結合せずにお互いに絡まっているだけの状態です。このため、内部はスカスカのスポンジのような状態になっています。

 PTFEはスポンジのようにスカスカなのでいろいろなものを内部にため込み保持します。ため込むだけならたいしたこと無いと思われるかもしれませんが、ため込んだものにより体積が変化します。空気中に置いておいた場合に比べてSF6ガス中に入れると体積が大きくなります。PTFEは他の分子とは結合しないため滑りやすいという自己潤滑性を持つため軸受けに使う場合があります。空気中では問題なく動作したものがSF6ガス中では動かなくなることがあります。しかも、室温を超えると急に柔らかくなるので相当気を付けてPTFEは使用する必要があります。

2025年03月12日

8.PTFEは絶縁材料として過ぎたるは及ばざるがごとし

 「4.アブレーション材料のPTFE」で書いたようにPTFEは遮断器のふいごの材料に使われていると書きました。遮断器は接続された2つの電極を切り離し電流を零にした瞬間にアークが消えて完全に切り離されます。この瞬間、切り離された2つの電極(2つの電力系統)間に高い電圧を発生します。極端な場合、交流電圧の位相が180°異なることもあり得ます。(これについては機会があれば書きます。)

 このふいごに使用されるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)はアブレーション材料としだけでは無く、優れた絶縁特性、高い絶縁抵抗率を持つために、何か困りごとがあった時につい使いたくなる材料です。

 しかし、「過ぎたるは及ばざるがごとし」のことわざにあるようにPTFEは極めて難しい材料です。抵抗率が高すぎるために一度内部に電荷を溜めると容易に放出しません。

 これは材料の時定数に関係しています。時定数はその材料の抵抗率と誘電率を掛け算したもので単位は秒です。時定数の時間が過ぎると電荷は約1/2.7(=0.367)倍に小さくなります。PTFEは製造方法にも拠りますが時定数が100万秒になることがあります。これは約2年です。2年経ってやっと電荷が0.367倍になるということです。

 このように一旦電荷を蓄積する(帯電)と途方もない時間経たないと電荷を放出しないため、この電荷が製品の絶縁特性に悪影響を及ぼす可能性があります。(これについても機会があれば書きます。)
このためこの高い抵抗をあえて下げるために混ぜ物をして時定数を下げることもあります。

2025年03月06日

7.昨日の水道水と今日の水道水は違う

 毎日お世話になっている水道水ですが、昨日の水道水と今日の水道水は同じと思っているかもしれません。しかし、少なくとも電気的には全く異なります。と言うのは水道水には、消毒用の塩素や空気中の二酸化炭素が溶け込んであり日々違うだけでなく、上水道に入る川の水には雨の量や空気中に漂うほこりやしみ込んだ大地中のミネラル成分にもばらつきがあります。海岸から数十キロメートル離れていても海水のしぶきや中内陸部から飛んでくる黄沙の成分も入り込んできます。このため、塩素イオン、水素イオン、二酸化炭素イオンが日々変わり水の抵抗率を大きく変化させます。

 純水を用いた実験で抵抗率の実験をする際に上記の塩素イオン、水素イオン、二酸化炭素イオンを純水器で除去する必要があります。ある一定の抵抗率の純水にするために純水器を循環させる必要がありますが、日によって水道水の抵抗率が大きく異なり、ある抵抗率になるまでの時間に大きなばらつきがでます。

 1日違っても抵抗率は10倍以上異なることがあります。水も魚や肉と同様に生ものということです。

2025年02月26日
» 続きを読む