コラム

所長のコラムです。

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24.日なたが熱いわけ

 このところの異常な高い気温が問題になっています。夏に日なたで太陽光を浴びると非常に熱くなるのは当然です。1平方メートルに1kWのエネルギーがあるためです。

 体の高さが1.5メートルで幅が40センチメートルなら0.6平方メートルになり体全体で600ワットのヒータの熱を受けていることになります。600ワットの熱をずーっと浴びれば熱くなるのは当然です。ほかっておけばどんどん熱が体に入り込みすぐに熱中症になりそうですが、汗の気化熱でなんとか冷やしているのでしょう。

 太陽光発電はこの高い光エネルギーを電気エネルギーに変換します。つい10年前は変換効率が10%であったために100Wだったものが最近は変換効率が20%になってきたので200Wになっています。一般家庭の契約電力は30Aなので3kWです。つまり3×5メールの太陽電池があれば3kWとなります。これだけあれば使い切れないので売電するか、蓄電池に蓄電して夜も使用できることになります。

2025年08月13日

23.微小な光で部分放電を検出

 電圧を加えて絶縁破壊を発生する前に、絶縁破壊に至らない小さな放電である部分放電が発生します。以前はコロナと言いましたが、今は言わなくなっています。この部分放電を測定する方法で、放電時に発生する微小な光を検出する方法があります。それはイメージインテンシファイアー(II、光倍増管)を用いる方法です。

 小生が初めてIIを見たのは1983年の高電圧技術グループに入って直ぐのことです。当時はUHVの開発がひと段落して、直流送電のための機器開発が進められていました。そうした中、空気中に棒対平板電極の構成で、棒側にマイナスの100 kVの電圧を印加して暗流が流れた状態がIIでどのように見えるかのデモをしていました。肉眼では何も見えなかったのにIIを通して見るときれいな円錐状に光っていました。マイナスの電圧を加えた電極から電子が放出され、放出された電子が加速されて空気中の窒素分子と酸素分子に衝突し、エネルギーの高い励起状態になった窒素分子と酸素分子が元の状態に戻る際に光を放出します。この光を100万倍に増幅して観測したものです。

 このIIは新月で星の微小な光しか無い、肉眼では全く見えない状況で敵の侵入を監視する暗視装置で、中東戦争でイスラエル軍が開発したものだとのことでした。価格は20万円と聞いたような記憶があります。

 このデモ以降、部分放電が発生するけれども場所が分からない場合やどの様に放電しているかを観測する場合には、頻繁にIIを使って実験をしていました。今では暗視装置として非常に安く手に入るようです。

2025年08月08日

22.ゴキブリは雨が嫌い

 鉄筋コンクリートの高層階に住んでいる時には気にならなかったゴキブリですが、低層階や木造の2階建てでは頻繁に見ます。よくよく観察するとゴキブリが住居に侵入してくるのは大雨の前のようです。ゴキブリは湿気があるところを好むと思っていましたが、水は必要かもしれませんが濡れるのは嫌なようです。

 人が入る玄関が隙間があって入りやすいようです。このため人が出入りする玄関等のところを通るので、ゴキブリに対応した噴霧型の薬剤を定期的に噴霧しておくと容易に入れないようです。2025年の6月以降、梅雨といってもしとしとでは無くざーざー降りになる前日の夜中にトイレに行こうとすると廊下でゴキブリが悶絶していることが2回ありました。どちらもビニール袋にいれてさようならをしました。

 住居に入ってきて定住すると独特の匂いがしますが、現状ではまだ侵入後定住はされていないようです。

 匂いに関しては小生は敏感なようです。変電所で活躍するガス絶縁開閉装置に使用される六フッ化硫黄(SF6ガス)中で放電すると微量な分解ガスが発生します。必ずしも皆が感じ取ることはできないようですが、この分解ガスはほのかな甘い匂いがします。この匂いを結構強く感じます。また、ひどいスギ花粉のアレルギーを持っていますが、スギ花粉も甘い匂いがします。スギ花粉の到来を匂いで感じることもあります。

2025年07月30日

21.沿面放電を観るトナー法

 絶縁物表面に放電が進展する状態を沿面放電と呼びます。放電のエネルギーが小さいときには絶縁物表面の放電の痕跡はほとんどありません。沿面放電の現象を何回か経験すると分かってくるのは、光の反射に変化があることです。放電が進展した部分とそうでない部分では光の反射の具合が異なり放電の進展具合が分かります。この放電の進展具合を第3者に伝えようとして写真を撮影してもほとんどの場合上手く写りません。

 どうすれば上手く伝えられることができるかということで昔から使われている方法にトナー方があります。コピーに使用する黒い粉を放電した絶縁物の表面に振りかけ、その後風で飛ばす(通常は口から呼吸の空気を噴き出して飛ばす場合が多いですが)と放電した痕跡の場所は帯電しているためこの部分にトナーが付着して沿面放電の形状が分かるというものです。

 黒いトナーだと絶縁物表面に残る帯電が正か負か分からないので、この違いを明確化するために用いられるのが炭素の粉と硫黄の粉を混ぜ合わせた後十分振って帯電させて使用するものです。帯電列において炭素は正に硫黄は負に帯電します。この混合した粉を沿面放電を発生した絶縁物の表面に振りかけると、正に帯電した炭素の粉は絶縁物表面の負に帯電したところに付着します。負に帯電した硫黄は絶縁物表面の正に帯電したところに付着します。この結果、絶縁物表面で負に帯電したところは黒(炭素の色)に正に帯電したところは黄色(硫黄の色)になるので正負が明確になります。

 カラーコピーが出始めた頃はコピーのトナーに黒は炭素、黄色は硫黄を使っていたと思われ、上記のように正に帯電したところは黒、負に帯電したところは黄色になって、わざわざ炭素と硫黄を混ぜなくてもカラーコピーのトナーで代用できました。しかし、カラーコピーが普及して10年位経った後にカラーコピーのトナーをこの沿面放電の正負を確認するために使用したところ、明らかに負に帯電するべきところが黄色、正に帯電するべきところが黒になりました。一時はどうしたことかと驚きましたが、その頃はカラーコピーのトナーも進化して粉の紛体内部に別の材料を入れるようになっていて必ずしも炭素と硫黄を使用していませんでした。このため基礎に戻って炭素と硫黄を混ぜた粉を使用することで事なきを得ました。

 昔の材料と今の材料は異なる可能性が高いことは十分考えておかないと痛い目にあう事例の1つです。

2025年07月20日

20.靴のクッションに注意

 靴のクッション材に良く使われるウレタンは以外に早く劣化します。コロナ騒ぎでオンラインで急遽講義をすることになり、2020年4月にマイク付きのヘッドフォンを探して購入しました。この時にはほぼ同時に日本全体でオンライン会議をするために需要が高く通常のものが無かったため、ゲーム用のヘッドフォンしかないためそれを購入しました。購入したマイク付きのヘッドフォンは耳当てと頭に接触する部分はウレタンの薄いシートが取り付けられていました。

 使い勝手も良く、非常に肌ざわりも良かったのですが、先日オンライン会議をするために取り出したところ、耳当ても頭の部分もウレタンのシートがボロボロになっていました。まだヘッドフォンとしては機能がしっかりしているのに大変残念な思いをしました。

 ウレタンはそのクッション性の良いことからベットのマットやスニーカーの靴底にも使用されています。しかし、前述のヘッドフォンと同様に期待される特性を維持するウレタンの寿命は結構短く”製造後”7年から10年です。これは購入してからの年月では無く、製造なので気をつけなければいけません。ヘッドフォンも製造から2~3年経過したものを購入したため購入後5年でダメになってしまったと思われます。

 ウレタンフォームでできたベットのマットも寿命は7~9年と言われており定期的に交換をする必要があります。ヘッドフォンやベッドのマットはウレタンが劣化していても見た目や寝心地が悪くなるだけで健康被害には直接なりません。

 一方、スニーカー等の靴底に使用されているウレタンが劣化すると歩いたり走ったりしている最中に急に剥がれたり割れて欠落することがあり大怪我の原因になります。購入して1年経っていなくても製造から7年経っていれば発生する可能性があります。気をつける必要があります。

 また、近頃スニーカーを投機の対象にすることがあるようですが、通常の保管をしていると上記のようにボロボロになり商品価値を保持できません。もしウレタンを劣化させたくないのであれば、真空にして酸素と接触させないだけでなく、冷蔵庫等で冷やして劣化速度を小さくしておく必要があります。数十万円がタダ同然になってはどうしようもありません。

2025年07月18日
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