5.リストの曲を弾いてみた
随分昔にこちらに書きましたように、2000年になるまでに私が弾いたリストの曲はわずかでしたが、IMSLPを始めとする楽譜ダウンロードサイトのお陰で、大全集(CD)で音から知った曲の楽譜を簡単に手に入れられるようになり、そこからいくつか弾いてみています。そこで、弾いてみての感想などを、CDの巻順に紹介してみます。
*手元に楽譜がある曲が一つも含まれていない巻(CD)は割愛します。
第1巻:ワルツ集
CD紹介文を書いた時点でどれだけの曲の楽譜が手元にあったかは不明ですが、譜読みしようとした曲は1曲もなかったのは確かです。それが今では「メフィストワルツ」「忘れられたワルツ」各1〜4番、「調性のないバガテル」、「Valse-impromptu」、と、このCDの大部分の曲の楽譜が手元にあります。
で、自分で弾く曲としては、「メフィストワルツ第3番」が一番です。決して易しくはないですが、何とかなりそうな範囲ですし、家族受けも最高です。次回以降の発表会の、それも有力な候補曲です。「同第4番」も譜読みしましたが、冒頭のリズムがちゃんと取れているかどうか自分でよく分からない、という問題を抱えています。「第1番」を自分で弾く曲だと思ったことは一度もない、のですが、「第2番」も見た感じで同レベルに難しそうで、この2曲は譜読みもしていません。「第2番」も「第3番」に劣らず好きなのですが、弾く際の難易度にはかなり差があるように思います。一旦はメフィストワルツに分類されていた「調性のないバガテル」は、他の4曲ほどは難しくもない曲で、一応弾けるのですが、面白さも程々、のように思います。
「忘れられたワルツ」は、4曲とも譜読みしていますが・・・やっぱり題名が・・・人前で弾くプログラムに載せる気が失せるような題名だとは思います。曲としてはCDの冒頭を飾っていた「第2番」が一番好きであるようですが、ノンペダルでタッチの切れで聴かせるこの曲はちょっと難しいです。「第4番」も何だか妙に難しい。で、実際に弾くのはペダルをしっかり踏んで弾ける「第3番」になります。「第1番」は弾く気がしません。(ここまで14.02.09)
第2巻:バラード、伝説曲、ポロネーズ
上記それぞれ2曲ずつの楽譜を持っています。有名なのは「伝説」の2曲です。どちらもかなりいい曲だとは思うのですが、自分で弾いてみる気にならないのは、若い頃に今一つな演奏で聞いてしまった記憶のせい、なのかもしれません。CD紹介頁に書いたように、弾いてみたのはポロネーズ第1番だけ、これは素晴らしい曲だと思うのですが、どうにも難しく、諦めの境地です。
第3巻:BACHの主題による幻想曲とフーガ、他
CDの方には全部で3つしかないS評価を付けたのですが、楽譜が手元にあるのは「BACHの主題による幻想曲とフーガ」の1曲だけ、それも殆ど見ていません。これは聞いて楽しむ一枚、ということで・・・第4巻:超絶技巧練習曲
フィルアップ分はともかく、メイン曲集の楽譜は昔から持っています。が、最後まで辿り着いたのは1曲もない・・・「夕べの調べ」で1回くらい辿り着いたことがあったかもしれない・・・という状態です。弾きたいと思うのは、これと「吹雪」の最後2曲ですが、「夕べの調べ」の方がまだチャンスがあるような気がします。老化の着実な進行にもかかわらず、これらの曲に挑戦して投げ出した当時より上手くなっているような気がしているので、気が向いたら再挑戦するかもしれません。
第5巻:サンサーンス、ショパン、ベルリオーズ編曲集
サンサーンス原曲の「死の舞踏」だけ楽譜を持っていて少し練習しています。今は無き夏井先生のピアノ編曲物サイトで、ホロヴィッツの再編曲版と対比されて、「こういうものは先に手を出した方が圧倒的に不利」と書かれていたのは、リスト編曲版のメンデルスゾーン原曲の「結婚行進曲」及びサンサーンス原曲のこれ、だったように記憶していますが、ホロヴィッツ編より大人しい分だけ難易度が多少とも低く、比較的見通しの良い楽譜です。どこまでテンポを上げられるかまだ分かりませんが、そこそこ弾けそうです。家内受けもよく、しかも程よい長さなので、将来的には発表会候補曲かもしれませんが、その前に飽きるかどうかが問題かも。
第6巻:オペラ編曲集その1(ノルマ、グノーのファウスト他)
ヘンデル原曲の「”アルミラ”よりサラバンドとシャコンヌ」だけ持っています。複数の知人より、オペラ編曲物の中では一番弾き易い、とのコメントも貰っていますが・・・シャコンヌに入ると私には十分に難しい。頑張って練習したら弾けるようになるかも、というところで中断中です。
第7巻:詩的で宗教的な調べ
、第8巻:クリスマスツリー、他
それぞれ表題曲集のみ全曲持っています。前者の第6曲と第7曲、後者の全曲、を一応弾いてみてますが、それぞれCD紹介頁に既に書いていたところに付け加えるものはありません・・・状況に変化なし、です。
第9巻:ソナタ、エレジー、コンソレーション他
ソナタ、コンソレーション、グレートヒェン、とこの巻の大部分の楽譜はありますが、どれも弾いていないと思います・・・コンソレーションの一つくらい読んだことはあるかも・・・第11巻:後期小品集
「灰色の雲」、「不吉な星! 不運、凶星」、「悲しみのゴンドラ1,2」を持っていて、一通り弾いています。簡単ですし。しかし、どうも「こけおどし」っぽくていけません。敢えて「こけおどし」狙いで一つ練習するなら「ゴンドラ1」でしょうか、でも、お勧めする気にはなりません。第12巻:巡礼の年第3年、他
表題曲集を全曲を持っていますが、多分「エステ荘の噴水」の途中撤退が、それでも一番沢山弾いたことになっているのだろうと思います。
第14巻:聖エリザベスの伝説、他
全部で3つしかないS評価を付けたCD紹介頁に、「特にトラック1、6、7に注目!」と書いていました。その、トラック1,2,3,6,7の楽譜を入手して、「特に注目」の3曲を弾いています。トラック1=聖エリザベスの伝説の導入曲、はCDで聞くと実に奇麗なのですが、自分で弾くのは少々退屈だったりしますので、あまり弾いていません。
トラック6=聖スタニスラウより第1ポロネーズ、ならハワードの録音で感じていた凄さを、弾きながらでも感じることができます。技術的にも殆ど問題ありません。しかし家内の受けは(予想通り)かなり悪いです。こちらに登場したフォーレの舟歌10番=「初代幽霊みたいな曲」=との比較では、「初代」よりはマシ、との判定にはなりましたが、それでも家でこの曲ばかり練習するのは憚られる感じです。とは言うものの、リストの陰気で簡単な曲を弾いてみたい、ということでしたら、陰気の種類が大分違いますが、「悲しみのゴンドラ」より、こちらを断然お勧めします。
トラック7=聖スタニスラウより第2ポロネーズ、の方は、家内の受けも良く、発表会の候補曲の一角を占めています。CDで聞いて「やたらと難しそう」と感じたのですが、譜面づらは至ってシンプルで読み易いものです。但しオクターブ進行が多いので読み易くてもかなり難しくなります。大詰めのprestoの爆走オクターブは、ハワードのテンポでは到底弾けない(ハワードさんだってかなり怪しい)のですが、そこまでテンポを上げなくても許される曲なのではないかな、と思っています。
この曲の魅力は、トニカに安住することなく上昇を続ける楽想と、それに伴う頻繁な転調にあるのだな、と感じています。主調はヘ長調ですが、ファンファーレの後で2オクターブ上昇を続ける主要主題が、最初はニ長調で提示され、次が変ホ長調、3回目と4回目=最後=でようやくへ長調になりますし、コーダで最初の頂点に達するのは変ニ長調、という具合です。(ここまで14.02.15)
第19巻:自作歌曲編曲集(愛の夢、他)
「愛の夢3曲」は3つとも弾いてみたことがある、ような気がします。第3番は間違いなく弾いたことがありますが、ノタノタとしか弾けません。これだけ有名な曲だと余程パリッと弾かないと目立ってしまう・・・と思うと、尚のこと、練習に身が入りません。それ以外では、この1枚で一番好きな「ライン川、その美しき流れ」だけ手に入れてみました。奇麗な曲なんですが、1曲だけ弾いても短いし中途半端な感じがして、こちらも練習に身が入らないまま中断中です。
第22巻:ベートーベン全交響曲編曲集
楽譜があるのは1番から5番まで、全部目は通しましたが、一番頑張ったのは第3の第1楽章、でも弾けないところだらけ、のまま変化なく、最近は弾いていません。
第28巻:ダンス&マーチ
楽譜を持っていて弾いていないのは「半音階的大ギャロップ」「メフィストポルカ」「死のチャルダッシュ」くらいだと思います。弾いているのは「チャルダッシュ・オブスティネ」、テンポを上げようとすると、オクターブの跳躍も高速アルペジョも難しく、切れ味良くは弾けないのですがそれでも大好きです。短すぎるので発表会候補曲だとは思っていませんが、それでも上手くなりたい曲です。
第31巻:シューベルト編曲集その1、第32巻:その2、第33巻:その3
「魔王」や「アヴェ・マリア」を含む「12の歌曲」と、「白鳥の歌」とを持っていますが、弾いてみたのは「アヴェ・マリア」と「セレナーデ」くらいだったと思います。Doverの楽譜ですが、印刷がきたなくて、やる気が削がれます。
第38巻:レ・プレリュード、演奏会用練習曲、他
春秋社のエチュード集は持っているので「3つの演奏会用練習曲」「2つの演奏会用練習曲」は持っていることになりますが、見たことはありません。また、正確に言うと「メフィストワルツ第1番」は、第1巻ではなくて、こちらの巻の稿の楽譜を持っていることになります。どちらにせよ弾いていません。
第39巻:巡礼の年第1年−スイス
表題曲集を全曲持っています。ある程度弾いたのは「泉のほとり」「オーベルマンの谷」の2曲、前者はホロヴィッツに近づくことすらできず敗退、後者は、まあ、形にはなりますが、人様にお聞かせするようなものではありません。
第43巻:巡礼の年第2年−イタリア
第2年の本編と補遺は持っています。「結婚」は発表会候補曲と考えたこともあります(聴衆の子供達が寝る、と家内に却下されました)。最後の連続オクターブをちゃんとは弾けていないのですが、練習すれば何とかなる範囲だと信じています。最近余り弾いていませんが。他の曲は事実上弾いていません。
第45巻:スペイン狂詩曲、他スペイン関係曲集
マイナー系のリストばかり漁っていると、たまにはメジャー系リストも弾いてみたい、と思うのです。ただし、「春秋社から楽譜が出ていなければマイナー」はそれでいいと思うのですが、春秋社から出ていても、幾ら有名でも、「愛の夢3番」も「結婚」も、私のイメージでは「メジャー系リスト」にはならないのです。
やっぱり、”表面的な効果を狙ってばかり!”との謗りをものともせずに技巧の誇示をいとわない作品群、1)「ハンガリー狂詩曲」、2)「超絶技巧練習曲」、3)「ダンテを読みて」「メフィストワルツ1番」といった大曲群、を三つの頂点とする三角形に含まれる範囲こそ「メジャー系リスト」という気がします。・・・というところで、「ハンガリー狂詩曲」が手元に無いことに、つい先日気が付いた、ことをここで白状しましょう。「スペイン狂詩曲」は、春秋社であれば「ハンガリー狂詩曲」とセットですが、私の場合はポロネーズ第1番目当てで買ったDoverの楽譜に付いていた、のでした。上記の三角形でいうと、ハンガリー狂詩曲よりずっと真ん中に寄った曲だと思っています。
10年以上手元にありながら見送っていた「スペイン狂詩曲」を、今年になってから意を決して初めて譜読みしたら、最後まで辿り着けたものですから、「ポロネーズ1番」(春秋社の楽譜にないけれど響きはメジャー系っぽい)や、「”アルミラ”よりサラバンドとシャコンヌ」(冒頭のリズムがスペイン狂詩曲と同じ)あたりに向けていた精力を全部こちらに振り向けて、せっせと弾いています。
ゆっくり弾いて弾けない箇所はない、とは思います。が、プロが弾いているテンポまで上げようとすると、どこまで難しいのか、まだ見当すらつきません。シフラが12分を切っているこの曲を25分くらいで弾いている段階ですが、それでも弾いていて楽しいのです。退屈な箇所も無いとはいえない「ポロネーズ1番」に対し、「スペイン狂詩曲」はどこを弾いていても退屈しません。発表会の曲にするには長過ぎるのですが、そういうのとは関係なしで、弾けるようになりたい!と努力中です。
第48巻:パガニーニ練習曲全稿
子供の頃、先生の気まぐれ(!)で、第3、5、6曲をやらされました。全くの力不足で、全然弾けませんでした。それっきり、です。
以上、2014年2月の状況です。状況に大きな変化がありましたら、書き足すかもしれません。(ここまで14.02.22)
・・・「クリスマスツリー」から「ポーランド風」を弾いたのはこちら。
その後は、こちら。