第10巻:ヘクサメロン&幻想交響曲 お勧め度:A

趣味の悪さをあきれられる覚悟でお勧め度Sにしようかとも思ったのですが、原曲より面白いというわけにもいかないのでAとしました。勿論SだAだというからにはヘクサメロンは眼中に無い。ピアノ編曲ものの頂点、幻想交響曲を勧めております。

ヘクサメロン「(1837)、副題はベッリーニのオペラ「清教徒」の行進曲によるブラヴーラ(この語の意味を知りません)大変奏曲。ベルジョイオーソ侯爵夫人なる人物がリスト、タールベルク、ピクシス、ヘルツ、チェルニー、ショパンの6人に各人1変奏曲ずつを依頼し、それをリストが一曲にまとめあげた(ここのいきさつがどうも良く分かりません)、音楽における共同作品の最高傑作、というより、そんな企画はこれしかない無いに近いシロモノです。ブックレットにはディアベリ変奏曲プロジェクト等が他の例として取り上げられていました。ショーピースとしてリスト自身ヴィルトゥオーゾ時代にはよく弾いたようですが、多少馬鹿馬鹿しい。リストの演奏は誰にもそんなこと言わせなかったのでしょうが。

UN PORTRAIT EN MUSIQUE delaMarquise de Blocqueville」(1869)は、3トラックのうち3番目だけがリストのものらしいのですが、これがどういう曲なのか解説を読んでもよく分かりません。わずか3分余り、聞き飛ばしています、というより、このCD殆どトラック13から聴いているのが私の実情です。

ベルリオーズの「幻想交響曲」(原作1830)のピアノ編曲(1833)については賛辞を並べる以外余り書くことはありません。この瑞々しさはベルリオーズにもリストにもハワードにも名誉になるものと思っていること、カラフルな原曲ならでは色彩感あふれる名編曲が出来たこと、2本の手で音が足りなさそうだけれど最終楽章の一部を除いてそんなことを感じさせないこと、ベルリオーズの改定前のスコアから編曲しているのでわずかに聞きなれている版とは違う所があること、楽譜は入手困難(少なくとも昔は)だったのを、あえて入手した知人に見せてもらったことがあるけれど、到底人間が弾けるようには思えなかったこと、・・・・騙されたと思って聴いてください。原曲が無茶苦茶面白いので、原曲と比べて面白くないぞ、といわれるとちょっと辛いのですが。

第5巻の「イデー・フィクス」がプロモ−ションビデオに例えたなら、この編曲はライブに対するCDに当たるのでしょう。リスト自身が弾かなければ始まらなかったとしても、フランス国外で原曲に触れることの出来た機会を考えると、この編曲を弾いて回ったリストが幻想交響曲を世界的有名曲にしたのは想像に難くない。幻想交響曲をドイツ語圏に紹介したのはシューマンということになっていますが、その時シューマンが見ていた楽譜がリスト編のピアノ版、まさにこの編曲の楽譜だったのです。

 

この位で収まれば、1つページでもう1巻分入れてしまいます。

第11巻:後期小品集 お勧め度:C

アルバム名 "THE LATE PIECES" を直訳すれば後期作品集、ですが、後期作品のアルバムは他にも沢山あるので、小品集としました。なにせ全部で30トラックです。1865年作曲が2つある他は全部1870年以降の作品です。第1巻や第3巻の紹介の折、やや否定的に紹介した、「意味」が自家中毒しそうに重い曲が集められています。その昔、fj.rec.music.classical にてお勧めとして紹介したこともあるのですが、気が変わっています。なお、以下で[ ]で囲った数字はトラック番号です。題名を日本語訳で書きますので原題はCDで確認ください。

「意味」が重い曲、の典型が「不眠!−質問と答え」[1&10]、「灰色の雲」[2]、「不吉な星! 不運、凶星」[7]、そしてワーグナーの死に関連して作曲された、「悲しみのゴンドラ1,2」[18,19]、「RW−ヴェネツィア」[20]、「リヒァルトワーグナーの墓に」[21]、といったところです。聴く者に色々考えさせる所は、カタカナ書きをした「ゲンダイオンガク」の大先達でしょうか。このあたりの作品はポリーニがソナタのCDの埋め草に録音した前後から、有名になってきた、少なくともピアニストの側からレパートリーに変化をつけるのに格好の材料と思われるようになった、ようですが、私はこれらが後期リストのベストとは思いません。音楽はまず「感じる」ものと思ってますので。「ゴンドラ1」なんか簡単だから弾いてみましたが、そう面白いものではないです。

重くないのもあります。「トッカータ」[4]は1分足らずながらお見事、「夢の中で」[14]、「忘れられたロマンス」[16]、はちょいと耳を引きます。[6][27][29,30]は他のアルバムでも似たものが出てきます。・・・こんな調子で30トラックの好みを並べても始まりません。アルバム構成を工夫しようとした気配はあるものの雑多に詰め込まれた印象は拭えません。興味あればCDに直接当たってください。演奏のレベルは高いと思います。

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