ヴェルディのオペラ(初演年代順)(兼DVD/LDリスト)
このサイトのあちこちにヴェルディは苦手、と書き散らした覚えがあるのですが、それはそれ、今は一番好きな作曲家になっています。その魅力を少しずつ書いていこうと考えています。 タイトルにリンクがある作品は単独解説頁があります。
オベルト、サン・ ボニファーチョ 伯爵 (1839) |
|||||||||
一日だけの 王様 (1840) |
Krilovici- D'Intino-
Terranova- Trimarchi- Picconi; Queler. 1987 Livorno 盤 (HouseOfOperaより購入、演奏者についてはこれだけの情報しかありません) |
||||||||
ナブッコ (1842) |
|||||||||
イ・ロンバルディ (1843) (1847=改作 「イェルサレム」 初演) |
|||||||||
エルナーニ (1844) |
|||||||||
二人の フォスカリ (1844) |
サンティ指揮サン・カルロ歌劇場、ヌッチ、スコーラ、ペンダチャンスカ
題名を直訳するとこうにしかならないのですが、日本語としては「フォスカリ父子」が自然でしょう。フォスカリ父子、ルクレツィア、十人委員会の4つの指示旋律を採用、転調を重ねた挙句譜面上「重変ロ短調(実はイ短調)」が登場、など、ワーグナーの向こうを張るような新しい音楽を開拓した作品、とされているようですが、最初から嘆いてばかりでドラマが全然ないストーリーではオペラとして楽しめません。同じく中世イタリアでの権力闘争を描いていても「シモン・ボッカネグラ」とは台本だけでも大差がつきます。音楽だけ鑑賞しようとしても、合唱及びヒロイン(ペンダチャンスカ)の歌がオケから遅れるのが頻繁に耳につきます。オケの精度もやや粗いかもしれません。ヌッチとスコーラの父子はちゃんと歌っているのですが、録音のせいか、きつい声に聞こえてしまいます。個人的にはコレクターズアイテムと思います。(04.09.25) |
||||||||
ジョヴァンナ ・ダルコ (1845) |
シャイー指揮ボローニャオペラ(1990) HouseOfOpera盤(DVDCC618)としてはトップクラスの画質音質で英語字幕つき、ジージーいうノイズだけが減点対象です。永竹さんが「最悪の台本」と言われるのを恐いもの見たさで手出ししましたが、これはちょっと凄いです。「アッティラ」第3幕の水準で全編終わってしまいます。これではヴェルディの作曲も職人仕事になってしまうのもやむをえないでしょう。主役を歌うダンは姿も声も押し出しが良くて今一つ品が無いあたりが妙に役柄に合っています、が、後半バテ気味。父親がブルゾン、カルロ7世がラ・スコラですから、望みうる最高のメンバーでの演奏と思いますが、感動にはほど遠かったことを白状します。(05.08.08) |
||||||||
アルツィーラ (1845) |
Hofman, Hovsepian,
Boggasch, Ostermeier -Passau 1998 HouseOfOpera盤(DVD690)ですが、舞台稽古の記録の流出もの?。正面に据えた不動のカメラからの映像も音質も貧弱で、目立ったノイズが無いというだけの素人レベルです。まず口上(ではないが説明しようとするとキリが無いのでこう書きます)に続いて序曲が一旦始まりますが、それが声に遮られて中断、もう一度口上から再開しますが、幕が上がっても下がっても一切拍手は無く、最後にも批評するような声が入ります。それでも白熱の稽古ならいいのですが、合わせる事を第一優先にしたような感じで全く盛り上がりません。となると、こちらも観る/聴く気力が早々に萎えてしまいました。他には無さそうという意味では貴重な映像ですが、これで「アルツィーラ」を見た、という気には全然なれませんでした。(05.12.17) |
||||||||
アッティラ (1846) |
ムーティ指揮ミラノ・スカラ座、レイミー、ステューダ、ザンカナーロ リージョンコード0の輸入盤で日本語字幕無し。「セミラーミデ」のアッスールと似たキャラのアッティラを、これまたレイミーがノリノリで歌っています。ステューダはここでは烈女役、こちらは王女様をやっているときと同じくらいに似合いませんが、でも技術のあるこの人は好きです。音楽は「ナブッコ」よりずっと滑らかになっていますが、台本作家のソレーラが放り出した後の台本をピアーヴェが仕上げた第3幕でのテンションの下がり方は、予備知識から想像していた以上のものがありました。悲劇とはいいながら時代絵巻の娯楽大作、に成り損なった感じです。(05.06.18) |
||||||||
マクベス (1847=初演版) (1865=改訂版) |
|||||||||
群盗 (1847) |
Huffstodt- Collins-Allman-
Shanks; Kamirski. 1987 Sydney HouseOfOpera盤(DVD8681)で字幕なし、舞台上演の私家版記録のようです。パルマのリゴレット(詳しくはこちら) と似たような由来でしょうが、一台だけのカメラなど、機材がアマチュア級のもののようで、照明が正常だった以外では収録状態は劣ります。作品は永竹さんに「凡作」と切り捨てられていますが、私にはまあまあ楽しめました。「マクベス」と並び、心理の動きの複雑な原作(=シラーの戯曲)を選んだ点では「ルイーザ・ミラー」以降につながるものがあると思います。これをオペラに仕立てるにあたっての扱いが月並み、という非難になるわけですが、私には安心して聞ける「堂々たる月並み」と思えました。何より出演者が皆「凡作」などとは思わずに熱演しているのが嬉しい。貧弱な音声ですが声の聴き栄えがして響きに臨場感もあり、不動のカメラを通して見るのと合わせて、実際に舞台を見ているような気分が出ます。並行して作曲していた「マクベス」には及ばないとは思いますが、「ルイーザ・ミラー」以前の作品としては「まあまあ」ではないでしょうか。(05.12.17) |
||||||||
海賊 (1848) |
Pulumbo指揮パルマ歌劇場 リージョンコード0の輸入盤で日本語字幕付き、思い切り控えめな字幕ですが、あると無いとでは大違いです。「ナブッコ」のことを思えば随分滑らかな音楽になったものだとは思いますが、これだけ裏も表も無く「芝居がかった」芝居に滑らかな音楽が付いてしまうと、何だかこちらが恥ずかしくなってきます。「マクベス」は勿論のこと「群盗」と比べても問題意識の欠けた「海賊」の台本より、当時のヴェルディの作曲技術も意識も先を行ってしまっていたのでしょう。歌手は大体よく、ただ太守役がブルゾンみたいな顔だけど声が無いな〜と思っていて、見直してみると何とご本人でした。もうお年なのでしょうか。1987年の「リゴレット」には割れんばかりの拍手を送ったパルマの聴衆がごく大人しいのは、乗り切れない指揮に対する不満の表れなのかな、などと勝手に想像しています。物理的条件は「群盗」の怪しい盤とは比較になりませんが、あえて比べるとあちらの方がまだ好みだ、ということになってしまいます。(05.12.26) |
||||||||
レニャーノの戦い (1849) |
サンティ指揮ベリーニ大歌劇場 リージョンコード0の輸入盤で日本語字幕付き、まともな日本語です。音質画質も十分優秀です。イタリア愛国運動を強く意識した作品と言われていますが、それを極端に強調するような演出がどうか。愛国運動者に受けるのをあてこんだようなところが思い切り目に付いて微苦笑してしまうのが避けられず、「心ならずも相思相愛の相手とは違う相手と結婚してしまった女をめぐる三角関係」という本筋の方は全然心に響いてきません。この演出のせいか、観客が拍手するタイミングを計りかねているのが、こちらのノリを一段と損ねます。だからといって別の演出で見たとして違う印象になるかどうかも怪しいものです。「リゴレット」等後年の名作の萌芽のような音楽があちこちに聞こえるのですが、そういう音楽にもワクワクできない点では「海賊」と五十歩百歩のような気がします。妙に忙しい木管パートを楽々こなすオケは十分に優秀、歌手陣はしっかり歌っているものの軽量感は否めませんが、その中ではヒロインに存在感があります。この珍品オペラを知るためには不足無い一枚だとは言えそうです。(07.03.18) |
||||||||
ルイーザ・ミラー (1849) |
|||||||||
スティッフェーリオ (1850) (1857=改作 「アロルド」 初演) |
|||||||||
リゴレット (1851) |
|
||||||||
イル・ トロヴァトーレ (1853) |
|||||||||
ラ・トラヴィアータ (椿姫) (1853) |
|||||||||
シチリアの晩鐘 (1855) |
ムーティ指揮ミラノ・スカラ座、ステューダー、メリット、ザンカナーロ、フルラネット 最近は違うパッケージでも出てますが、何れにせよ英語字幕の輸入盤です。 全5幕に長いバレエが付く「グランドオペラ」形式によっていて非常に長く、特にバレエシーンは私には退屈ですが、その点だけ何とかなれば(バレエは飛ばしてしまえば)、技術のある歌手陣が迫力満点の競り合いを随所で聞くことができます。個人的には「トロヴァトーレ」「トラヴィアータ」よりも好きです。永竹さんは「シチリアの晩鐘」のエレナ公女を「ドラマチックな声と、軽やかなアジリタの技術を要求されるので非常に難しい役」、アルリーゴを「三点dまである上に、チェンジ・ボイスのあたりの音が多く超難役。多分フランス人テノールの発声法とイタリアの発声法が少し違ったので、こうなったのだろう」と書かれてますが、この両役をステューダとメリットが見事に歌っています。ヴェルディの他の作品の主役にはやや細めということになりそうですが、この難役にはぴったりです。(03.10.13初出、06.06.24変更) |
||||||||
シモン・ ボッカネグラ (1857=初演版) (1881=改訂版) |
|
||||||||
仮面舞踏会 (1859) |
レヴァイン指揮 メトロポリタンオペラ、 パヴァロッティ、 ミッロ、ヌッチ |
||||||||
運命の力 (1862=初演版) (1869=改訂版) |
|
||||||||
ドン・カルロ
(1867 =パリ初演) (1884=四幕版) |
|
||||||||
アイーダ (1871) |
レヴァイン指揮メトロポリタンオペラ、ドミンゴ
他のDVDで今一つなのが多いと思っていたドミンゴが絶好調、なるほどこれが超一流の声か、と思いました。作品としてはヴェルディ晩年の5作品では最下位だろうと思いますが。(03.06.15) |
||||||||
オテロ (1887) |
|||||||||
ファルスタッフ (1893) |
ロッシーニのオペラ(初演年代順)(兼DVD/LDリスト)
タイトルにリンクがある作品は単独解説頁があります。
成り行き泥棒 (L'Occasione FA IL LADRO) (1812) |
ジェルメッティ指揮シュツットガルト放送交響楽団(シュヴィツィンゲン音楽祭1992年)、
パターソン、コルベッリ、ギャンビル DVDCC981のヴェルディ「オベルト」のおまけに付いてきた物ですが、DVDCC985と同一内容と思われます。英語字幕付き。ジリジリいうノイズが入る分だけ「ブルスキーノ氏」には負けますが、HouseOfOperaとしてはトップクラスの音質、画質です。ヒロインのパターソンの声が美声には程遠いですが、ドタバタ劇の感興を損ねることはありません。従者がやたらと上手いと思ったらコルベッリでした。ドイツ人観客のノリの悪さは相変わらずですが、「ブルスキーノ氏」よりも無理の無いドタバタで演技が皆上手く、こちらの方が入りやすいです。 |
||||
ブルスキーノ氏 (1813) |
ジェルメッティ指揮シュツットガルト放送交響楽団(シュヴィツィンゲン音楽祭)、
コルベッリ、リナルディ、キューブラー、フェラー 英語字幕付き。これLDからのコピーではないかと思うのですが、HouseOfOperaにもかかわらず、80年代として最高の音質、画質もそこそこです。同じシュヴィツィンゲン音楽祭のライブでも歌手は「アルジェのイタリア女」以上に(私の印象はともかく)名のある人がずらり。リナルディが勿論非常に上手いのですが、「なんて暑いんだ」の連発で笑いが取れなかったのはドイツ人観客のノリの悪さ、でしょうか。高水準の演奏だろうと思うのですが、十分には楽しめなかったのは、同時入手の「エジプトのモゼ」と見比べるような私の見方のせい、が一番かもしれません。 |
||||
アルジェの イタリア女(1813) |
|||||
イタリアの トルコ人(1814) |
ヴェルザー=メスト指揮チューリヒ歌劇場
、バルトリ、ライモンディ リージョンコード0の輸入盤で日本語対訳つき。前作とはうって変わった、劇中劇であるような無いような、シニカルな筋立てです。面白いかというと、知的好奇心(?)は十分刺激されますが、腹の底からは笑えません。ここまでしなくても・・・。音楽の質は十分高いのが勿体無いとすら思えます。 チューリヒオペラの最高に聞き映えのする録音がここでも気持ちいい。バルトリを素晴らしいと言って良いのか自信が持てないのは「セヴィリアの理髪師」と同じ感じです。他の歌手については良い録音に載って最高に聞こえる、と言ってしまえるのですが。(05.03.13) |
||||
セヴィリア の理髪師 (1816) |
|
||||
新聞 (ガゼッタ) (1816) |
バルバチーニ指揮リセウ・オペラ(バルセロナ)、フォルテ、プラティコ他
BS2から録画したので、この(←)パッケージは持っていません 。 聞き覚えのある序曲と思ったら、チェネレントラのがこちらからの流用でした。かなりの美人揃いの女声陣はスタイルも抜群(バレエ団と比べても心持ちウェストが太いだけ)、それで下着姿とかスリットスカートとか胸ポチ(写真のフォルテにはあらず)とか、大サービスです。音楽の出来も演奏の出来も十分高いと思います。最大の問題は台本でしょう。クエーカー教徒に化けて、偽の決闘を申し込み、トルコ人に化けて、と、「ご都合主義で筋をこじつけている」どころか、単に筋が通っていません。ここまで通らないと観賞の妨げにもなります。BS2だと日本語字幕だから良かったのですが、DVDの英語字幕だと、この滅茶苦茶話(粗筋はこちら)を理解できたか、自信ありません。(06.12.03) |
||||
オテロ (1816) |
プリチャード指揮トリノ放送響(ペーザロ歌劇場)、アンダーソン、メリット、ブレイク
|
||||
チェネレントラ (1817) |
|
||||
泥棒 かささぎ (1817) |
|||||
エジプトの モゼ (1818) (1827= 仏向け改作 「モイーズと ファラオン」 初演) |
|
||||
リチャルドと ゾライーデ (1818) |
(Rossini, Pesaro 1990) Anderson, Matteuzzi, Ford, Furlanetto, Chailly | ||||
エルミオーネ (1819) |
|
||||
湖上の美人 (1819) |
ムーティ指揮スカラ座、
アンダーソン、デュピュイ、ブレイク、メリット、スルヤン 日本語帯付きですが英語字幕のみ。超高音テノールが二人必要なので上演機会がどうしても少なくなるらしいですが、いい作品です。オペラ・セリアに分類されますが、死人は舞台裏での一人だけで、ぎりぎりで死人ゼロの「泥棒かささぎ」よりも悲劇度合いが薄く、その代わりに、予定調和の穏やかさがあり、その台本の基調を格調高い音楽が支える点で、この作品にも「ウィリアム・テル」を予感させるものがあります。2時間半弱と比較的短いのは有り難い。 スコットランドが舞台だからではないでしょうが、アンダーソンも「セミラーミデ」より無理なく演じています。歌も出だしだけ不安定ですが、それ以降は大丈夫。ズボン役のデュピュイは美人である分ホーンに比べると少し女性らしさが出過ぎですが、それでも許容範囲内で歌もまあまあ。テノール二人のうち特にメリットは何とかぎりぎりハイC連発を当てている感じで衰えを隠せていませんが、脇役なのでよしとしましょう。 |
||||
ビアンカと ファリエーロ (1819) |
バルンボ指揮ガリシア交響楽団、バーヨ、バルチェローナ | ||||
マオメット 2世 (1820) |
|
||||
マティルデ・ ディ・ シャブラン (1821) |
(Pesaro 1996) Franci, Futral, Spense, Frontali | ||||
セミラーミデ (1823) |
|
||||
ランスへの旅 (1825) |
|||||
ウィリアム ・ テル (1829) |
ムーティ指揮スカラ座、ステューダ、メリット、ザンカナーロ 日本語の帯がついていますが、英語字幕のみ、と日本語で断っています。この英語字幕がかなり読みにくいもので、こちらの粗筋をしっかり読んでから見直す羽目になりました。オペラの台本としては、愛し合うソプラノとテノールが早い段階で別れたきりで結末が無い、息子の頭の上のりんごを射落とす有名なシーンも全体のストーリーの中では単なる挿話にすぎない、等々締まりを欠くように思うのですが、音楽は素晴らしい。ロッシーニのブッファの諸作品からは、活気はあるけれど同時に無機質な印象も受けるのですが、ここではリストがピアノ曲に編曲した歌曲で聞かれる伸びやかな音楽の完成した姿が聞けます。いささか長いのが玉に瑕で、ストーリー展開上寄り道や停滞の場面が随所に挟まるのですが、しかしそういう場面でも音楽の品位の高さは少しも下がらないように思います。(バレエシーンだけは飛ばしてしまいますが。) 「シチリアの晩鐘」と重なる主役3人では、ステューダとメリットが超難役を歌いきっていて文句なし、ザンカナーロはあちらの悪役の方が似合ってはいますが、これも見事です。以下大量動員されている準主役級も大体いいのですが、敵役のゲスレルが弱いのは残念です。演出は史上最悪級とおもっていますが、この作品を見るには他に選択肢が無いのですから、とやかく言いますまい。(04.08.15初出、06.06.24変更) |