一匹のでんでん虫がありました。
ある日、そのでんでん虫は、大変なことに気がつきました。
「わたしは今までうっかりしていたけれど、わたしの背中の殻の中には
悲しみがいっぱい詰まっているではないか」この悲しみはどうしたらよいのでしょう。
でんでん虫は、お友達のでんでん虫の所にやって行きました。
「わたしはもう、生きてはいられません」と、そのでんでん虫はお友達に言いました。
「何ですか」とお友達のでんでん虫は聞きました。
「わたしは何と言う不幸せなものでしょう。わたしの背中の殻の中には、
悲しみがいっぱい詰まっているのです」と、はじめのでんでん虫が話しました。
すると、お友達のでんでん虫は言いました。
「あなたばかりではありません。わたしの背中にも悲しみはいっぱいです」
それじゃ仕方ないと思って、はじめのでんでん虫は、別のお友達の所へ行きました。
するとそのお友達も言いました。
「あなたばかりじゃありません。わたしの背中にも悲しみはいっぱいです」
そこで、はじめのでんでん虫は、また別のお友達の所へ行きました。
こうして、お友達を順々に訪ねて行きましたが、
どのお友達も、同じことを言うのでありました。
とうとう、はじめのでんでん虫は気がつきました。
「悲しみは、誰でも持っているのだ。わたしばかりではないのだ。
わたしは、わたしの悲しみをこらえて行かなきゃならない」
そして、このでんでん虫はもう、嘆(なげ)くのをやめたのであります。
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