36.大鈴山・鹿島山(おおすずやま・かしまやま)(2016.05.15)   参考サイトはこちら

前回の平山明神山には軽々と登れたので、レベルを上げて、ガイドブックやネット上で「素人向けとしては難コース」として紹介されている、堤石峠から大鈴山に登るコースを選びました。平山明神山の「西の覗き」から隣に見える山です。

参考サイトでは、平山明神山に立ち寄っていますが、その立ち寄りの途中に両側が切れた「ナイフリッジ」があり、時間も1:10程余分にかかるようなので、今回は平山明神山は割愛することにしました。こちらのサイトも拝見して、平山明神山を割愛しても手応えがありそう、と考えての判断で、実際にも十分な手応えがありました。

前回は3年前と全く同じルートなので、一応ガイドブックは持参したものの、1/25000の地図は用意しなくてもいいことにしました。今回は、初めてでもあり、レベルの高いコースでもあり、当然地図と磁石は必携と考えました。ただし、岩古谷山−鞍掛山稜線を歩いた時には、等高線に現れない細かい凹凸が多すぎて現在位置把握が出来なくなり、参考サイトの地図を持っていれば少なくとも御殿岩の看板で現在位置確認ができたはずなのに、という思いをしました。今回のルートは同じ稜線の続きですから、素の1/25000よりも、それをベースに色々書き込まれた参考サイトの地図の方がいいのではないの?と考えて、それだけ持参することにした・・・のですが、これについては後で反省することになります。

なお、前回の下りで子供が二人とも「靴がきつい」と痛がり始めてしまいました。今回は「素人向けとしては難コース」を歩くのですから、まともな靴を履かせねばなりません。一回目の寧比曽岳の時に同時に履き始めたモンベルの靴ですが、耐用年数1年でした。幸い次男には長男がモンベルの前に履いていた靴がピッタリだったので、これをあてがい、長男には前日の土曜日に(モンベルまで行かずに)近所のDEPOでキャラバンの靴を買いました。親が履いているのと見た目似たものになりました。

前回よりは歩行距離が増えるので「少し早め」に出ることを予定していたのですが、予定以上に早起きできてしまったので、犬の散歩を済ませて「大分早め」の7:30には発車できました。

開通したばかりの新東名を走り、新城インターで降りて田口を抜けるまで前回と同じです。今回もナビはR473旧道(堤石トンネル方向)に逸れるところで何も言ってくれませんでしたが、今回は自分で正しく左折して、和市登山口には9:00頃到着です。2週間前より時刻が早かったこともあってか、自宅から1:30で走れました。

駐車スペースには既に10台ほど停まっていて、我々の車は普通に停められました(右、9:05)が、そのまた後から来た車は停めるにあたり色々工夫するはめになっていた、かもしれません。靴を履きかえて出発です。

この日のルートの最初と最後は東海自然歩道歩きの際に歩いています。東海自然歩道の本線は、この駐車スペースの奥から上がることになっているのに、一年前に歩いた際には、駐車スペース入口にある案内看板のところまで出てしまったので、今回は前回に歩き損ねた区間を歩くべく、駐車スペースの奥に行ってみました。

見つけた入口(下左、9:08)に道標はありません。これではそのまま直進して駐車スペース入口まで出てしまうのも当然です。画像の奥に進む緩い坂道を登って、駐車スペース入口からの道に合流(下右、9:10)、こちら側には「緩い坂道」に案内する道標があります。これで東海自然歩道で未踏となっていた数10m?をつなぐことが出来ました。子供たちが見ているのは、後述の「ヤマビル注意」の看板です。

その先、堤石峠までは以前歩いた道です。水場で汲んだ水の重量に負けて家内の脚がつったのはこの辺りだったっけ、などと思い出しながら登っていきます。

「十三曲り」に入って、少し登りがきつくなる、のですが、その二曲り目の標識の下にも、「ヤマビル注意」の看板(下左、9:25)がありました。1年前には無かった看板です。しっかり読みましたが、ヤマビル退治に必要な「塩」の持ち合わせもないし、そもそもヤマビルがどういうものなのか分かっていなかったし、不気味に思う以外何もできません。

「十三曲り」を淡々と登って、堤石峠に到着、ここで東海自然歩道から分かれて、「平山明神山」の看板方向(上右、9:41)に左折していきます。

左折した先は、道と言うよりは崖でした・・・

左画像(9:52)が最初の本格的岩場だったと思います。上で調子こいている次男だけ見ていると傾斜が分かりにくいかもしれませんが、長男と私の姿勢でお分かり頂けるとおりの「崖」です。次男と長男の間に赤く映っているような赤テープを頼りに進んでいきます。

これと同クラスの岩場が次々と現れます。そういうところには目印の赤テープの他にロープも設置してあるのですが、ロープの風化具合がよく分からないので、ロープに頼り過ぎないように心掛けましたが、そうとも言っていられないところもありました。

基本的にはルートには稜線上です。なので、赤テープを見逃してしまうと、稜線上の登りきれない岩を登り始めてしまいます。そういう岩の一つを途中まで登って、おかしいな、と思い見渡すと、右下に赤テープと踏み跡が見えました。

長男と家内が丁度右に曲がるべき地点に居たので、そちらに進むように指示した上で、岩壁をトラバースして先の方で本来のルートに合流しようとして、少しだけ進んでみましたが、ちょっと無理そうです。

戻ろうとしたのですが、その「少しだけ進んだ」距離を戻るのが、私としてはこの日で一番怖い思いをした瞬間になりました。同じ場所の岩壁トラバースでも、登りと下りは大違い、「怖い」と感じてしまうより「前」に引き返す決断をしなければならない、ということを痛感しました。

登るにつれ、背後に岩古谷山の岩壁が立ち上がってきました(下、10:05)。
 

登って登って、標高では岩古谷山より高い第1ピークに到着(下左右、10:23)。岩古谷山−鞍掛山の稜線と、険しさでは変わらず、人工物の補助が少ない分だけ厳しい、と言う感じですが、凹凸の頻度では大違いで、(この日に歩いていない岩古谷山−堤石峠間も含めて)岩古谷山より北側の稜線では、ピークの数を間違えずに数えられます。

第1ピークから急降下の後に急上昇して、第2ピークに到着(右、10:37)。一応「矢筈山」という名前もあるようです。この2つのピークの間も険しかったのですが、問題なく通過しました。

しかし、第2ピークからの急降下の途中では、ちょっとしたドラマが発生しました。

左下画像は、私が下りているところを、先に下りていた家内が写したもの(10:47)ですが、ここに、ロープ・鎖などの人工物は一切ありません・・・ルート外ですから。

下右は下りきった後でルートに戻ってから写したもの(10:50)です。左下に見えている看板が指しているのが、本来のルート、そして我々が降りたのは、中央から右下に伸びる大きな岩の向こう側だったのでした。

上右画像の岩の傾斜では、素人には無理、というのはお分かり頂けると思いますが、その向こう側というのも手掛かりが比較的沢山あっただけマシ、という程度の場所でした。稜線を辿ると自然にこの岩の上に出てしまうようになっていたのでしょう。
 
岩の上で見渡して、赤テープが見当たらないのだから見つかるところまで戻る、と出来れば正解だったのですが、何とかなりそうなので下りてしまいました。

それでも何とかなりきらずに擦り傷を作ってしまった家内には、ここがこの日で一番怖かった場所だったようです。私にとっても二番目に怖かった場所でした。

登り直して、第3ピークに到着(右、10:54)。ここからの下りでも、いきなり凄いのが来ました。

まず、上から見下ろします(下、10:56)。さすがに、ここはロープだけでなく一部鎖も付けられています。

二人目に私、三人目に長男が下りているところを家内が上から写したものです(下左右、10:58)。

私が下から写しました(下、10:59)。
長男の左上に見えている家内の居る辺りが、一番怖そうなところ、でしょうか。

この岩場の後も、再びルートを見失ってから登り直したりしていました。いつの間にやら谷筋に下りてしまい、正解はどちらかな、と左に上ってみたら赤テープが見つかり、事なきを得た、という経過で、まだマシな普通の斜面だったので、この2回目は怖いというところまでは行きませんでした。

そして第4ピークに到着しました(右、11:19)。・・・・ここで迷いました。

「右:岩古谷山・十三曲り」の方から来たので、これは迷いようがありません。「左:平山明神山頂へ」の示す方角には急降下する道の先に、(写しておけばよかったのですが)まぎれもなく平山明神山が見えています。

迷いを引き起こしたのは、撮影位置の後方に稜線が伸びていて、その先に大鈴山が見えていたから、でした。大鈴山への道を示していた道標が失われた状態なのかも、と考えてしまいました。

参考サイトのコースタイムだと、平山明神山方面と大鈴山方面との分岐は登山口から3:15、その分岐まで2:20で歩けた、としたら早すぎるのですが、それにしても大鈴山方向に踏まれていそうな稜線が見えます。磁石を出してみると、平山明神山が真東よりは少し北に見えているようですが、偏角の誤差がどちら側に出るのか覚えていない素人には、見えている方角だけでは、ここが分岐ではないとまでは言い切れません。

というわけで、大鈴山方向の稜線を少し進んでみました。赤テープはありません。最初はなだらかで踏まれているように思えたのですが、数10m進んだところで、稜線が急降下になり、踏み跡も分からなくなりました。どうも違うような気がしてきて、第4ピークまで引き返し、道標の「平山明神山」方向に下り始めました。

「もし間違っていても、そのまま平山明神山に登っちゃえばいいよね」とか言いながら下っていると、前方から年配の4人パーティがやってきました。この方々に分岐があるかどうか聞ける!と喜んだのは良いのですが、そして、確かにその分岐から来た、と言っていただけたのは良いのですが、この方々がとんでもない人達でした。

*リーダー格と思しき男性の発言を赤字で書いています。

岩古谷山に行きたいのだけれど、この山かね?
「えっ、方向はこっちですけど、でも、ここからだと、かなり遠いですよ」

今はどこなのかね
(持参の参考サイトから出力した地図を見せて)「今はこの辺りのはずで、岩古谷山はこれ、この間は本当に大変ですよ」

大神田から平山明神山に登って(我々の前回のルートと同じ)からここまで来たので、そっち(大神田)に下りたいんだけど
「堤石峠からそっち側に下りる道は無くなっています(この頁の内容を良く覚えていました)。
 和市に下りてから堤石トンネルを通って戻られたらいかがですか?」
でも遠回りだし.・・・

聞く耳をもっていなさそうだったので、それ以上の説得は諦めましたが、どのガイドブックを見ても簡単とは書いていないコースに入るのに地図も持たず、土地勘も予習も無い、となると・・・。

万一ご本人達がこの頁をご覧になられたら気を悪くされるかもしれませんが、はっきり申し上げて、遭難予備軍です。本当は来た道を戻るべきところだったのでしょう。そのまま先に進んでしまったとしたら、堤石峠に向けての、登りでも結構大変だった崖の連続を、無事に下りられたのでしょうか。

遭難予備軍とすれ違って、さらに下ってから、また崖上りです(下左11:44、下右11:45)。

遭難予備軍ご一行も、この崖は無事に下っていた訳です。

そして待望の分岐の道標が見えました。参考サイトのコースタイムには、これまで負けてばかりだったのですが、今回は登山口からのコースタイム3:15のところ、2:50で歩けました。

ちゃんと、左が大鈴山/右が平山明神山、と書いてあります(下左、11:58)。

微妙に12時前でしたが、昼食にしました。稜線上の木と木の間の平らなところにコンロを置いて、多少とも木々が風除けになるようにして湯を沸かしながら、弁当を食べて(上右、12:06)、その後でカップ麺も作っていただきました。前回と同じ流れです。この場所に12:37まで居ました。昼食準備中に、後方から声だけ聞こえていた若い男性二人組が平山明神山方向に進むのを、見送りました。

昼食休憩後は、グミンダ峠まで下がって、大鈴山に登る、グミンダ峠から大鈴山まで45分だから、とりあえずグミンダ峠を目指そう、ということで歩き始めたのですが、ここから、後で振り返ってもよく分からない展開になっていきます。

分岐からは暫く下りが続いて、少しだけアップダウンして、グミンダ峠を過ぎてからは標高差200m近い一気の登り、なのですが、そのグミンダ峠の道標を見落としました。後で確かめるとかなり貧弱な道標なので、見落としたこと自体は仕方ありません。昼食後に少し眠気が来たので、一歩一歩をしっかり踏みしめること、呼吸が乱れない速度維持、に意識を集中していたようには思います。

問題なのは、一気の登りに入ったのに、頭が「まずグミンダ峠まで頑張ろう!」から切り替わらなかったことです。

左下画像は13:19ですから、グミンダ峠は過ぎています。赤テープは適度な間隔で付けられていて、ルートの確認はできます。木の根が多く出ているから手を使わずとも何とか登れる、という感じのかなりの急登が延々と続いている、のですが、それでもまだグミンダ峠を目指しているつもりだったのでした。
なお、この登りの途中で、次男のズボンの裾を「黒っぽい小さな尺取虫みたいなの」が登っているのを、家内が見つけて、爪で弾き飛ばしたらしいのですが・・・帰宅後youtubeで調べたら、まさしくそれがヤマビルだったようです・・・

 

三叉路になっている鹿島山への稜線に達しました(上右、13:36)。信じがたいことに、この期に及んでも、まだグミンダ峠より手前に居るつもりでした。幸い、「山頂入口」の看板を、正しく「大鈴山山頂」と理解して、そちらに進みました。

軽くアップダウンしてから、最後の坂を登ると・・・次男が、

「大鈴山って書いてあるよ!」 「・・・ へっ?」 


     (上画像は13:44)

ここで、昼食以降ずっと停止していた思考回路がようやく再稼働して、先の三叉路が鹿島山への三叉路であることを正しく認識しました。

頂上で小休止後、来た道を下っていき、三叉路を13:53に通過しました。その先、鹿島山に向かう、ほぼ稜線上の道にも赤テープはあります。こちらは「一般レベル」のルートなのですが、それでも登山道が稜線から外れるところで、赤テープを一瞬見失う場面はありました。

鹿島山には14:29に到着。眺望はありません(下)

小休止後、鹿島山の斜面を池葉守護神社経由で和市まで下りる道に入りました。普通の傾斜の、変化に乏しい道でした。

池葉守護神社には14:57に到着、ここで家内が横になっての大休止を試みたのですが、次男の妨害に会って断念していました。

神社と杉の大木を写して(下、15:03)から出発しました。

神社から降りてすぐ、東海自然歩道の道標です(下左、15:05)。ここから先は以前歩いた道になります。すぐ下の水場の水をいただいてから、さらに下りていきました。15:32に見えてきた駐車スペースの車は随分減っていました。

帰りの車は行きと同じ道を走りました。家内が「シャキッとしたいから何か飲みたい」というので、田口バス停向かいの休憩所に立ち寄り、自販機でそれぞれの飲み物を買って飲んだ、のですが、その家内は田口から降りる坂の途中で早々に沈没していました。子供達は「(行きも寝ていて見そびれた)新城インター手前の踏切を見る!」と言っていたのですが、二人ともそれより手前で沈没しました。

 

(岩古谷山−鞍掛山稜線では使いにくかったとは言え、)堤石峠−大鈴山間はピーク毎に現在位置確認できたのですから、なおのこと、地図は1/25000を持参すべきでした。持参していれば、第4ピークが分岐ではないことに疑問は生じなかったはずです。
参考サイトの地図は、画面では等高線も見えるのですが、プリントアウトしたものでは等高線が殆ど読み取れなくなっていたことに気付いて、対応すべきでした。
グミンダ峠を見落としてからの思考停止はどう反省すればよいのでしょうか。もっと先だと思っていた頂上にひょっこり到着して喜んでいただけ、なので実害は全くなかったのですが、今回はたまたま道を外さなかっただけのことです。もし違うところを歩いていてしかも現在地を大きく見誤っているとしたら、それは遭難です。
参考サイトの地図にもコースタイムを記入していたのですから、経過時間と照合するだけでもグミンダ峠通過には早いタイミングで気付けたはずなのに、そもそも時計すら見ていませんでした。平山明神山分岐での昼食後で、後は歩くだけ、という気の緩みがあったのは否めません。

  

素人には文句なく難コースと言えます。コースを外さない限り最小限の補助はありますが、コースを外さずに歩けるか、が問題。ガスで次の赤テープが見えなくなったりしたら、ちょっと動けません。そのまま夜になるならビバーク必至です。天候不順が予想される日であれば自重下さい。「遭難予備軍ご一行」など論外です。
難度と裏腹ですが、文句なく楽しいです。眺望はそれほどありませんが、それでも大いに楽しめました。乳岩から登る三瀬明神山に十分匹敵します。
思考停止は大問題ですが、歩みの方は、息が切れない程度の速さを維持して休憩を少なくする、というのが無理なくできており、実力アップを実感できました。今までは参考にしているサイトのコースタイムには毎回負けていたのですが、今回は(平山明神山立ち寄り分を差し引いた)コースタイムが6:30のところを、昼食休憩込みでも6:30を少し切りましたから、かなり速く歩けています。
岩場歩きには改善の余地が大いにあるようです。家内が写した画像を見て、自分の体が岩壁に近すぎるように思えました。

歩行コース(推定):
参考サイトの地図と等高線の見え具合を比較ください

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