52.ヨーロッパでの権威主義

 CIGREのWGに参加していて権威のある学者には意見が正面切って言えない、いわゆる権威主義の雰囲気を何度か感じました。

 まず、IEC60060-1において上昇法による破壊電圧の試験法です。現在の2025のバージョンではどうなっているか分かりませんが、2010のバージョンで図A.3(b)の交流や直流での上昇法で平均破壊電圧を求める試験方法において、最初はU01、U02、U03と電圧をある時間(通常1分の場合が多いです)一定にして次の電圧レベルに上げていき1回目の絶縁破壊が発生した際に、2回目からはU01とU02の間の電圧である時間保持した後、次はU02とU03の間の電圧である時間保持する試験方法が示されています。

 この方法は一貫性が無く、2回目以降も最初のU01、U02、U03に合わせるべきではないかとコメントしたところ、他の委員からの反応は無く凍り付いていました。この表は会議に参加していたハウスシールド氏の提案で盛り込まれた図であることは後から知りました。当時EUで権威あるハウスシールド氏の提案に異議を申し立てるようなことはEUの人からは考えられないということが良く分かりました。

 明らかにおかしいのに変えられないのは日本でもままあることなので納得してしまいます。結局、先の提案は黙殺されて変更なく規格に盛り込まれました。

 また、レムケ元教授が新しい碍子の観測装置の発表をした際に、鉄塔に登るのは大変なのに校正はどのようにするのか、と質問した時も会場が凍り付きました。レムケ元教授からはこれから検討する旨の返答がありました。しかし、高電圧の測定の大家であるレムケ元教授に物申すとはどういうことなのかという雰囲気でした。

 この数年前にUSAの委員が、いろいろ意見を言っても聞いてくれない、面白くないから委員を辞めると言って辞めてしまったことも思い出されます。

 このような大家に対して物おじしないで意見をするところで、IECのFDISの変更を申し出たドイツに対して平気でNOと言うことが予想できたので意見を求められた可能性があります。

2026年03月02日