40.油が染みた紙や布は大変危険

 この頃、コインランドリーで発生する火災の原因として、油が染みた服やタオルはよく出てくるようになりました。これは油が空気中の酸素で酸化された結果、熱が発生するためです。乾燥時に高い温度にさらされると、乾燥用の熱風に加えて衣服に付着した油の酸化での温度上昇が加わり温度が300℃以上の上昇し、布や紙の発火温度に達して燃えるものです。

 しかし、乾燥機に入れなくても、油が染みた紙や布が積み上げられると染みた油が酸化して高温になり発火することがあります。

 発火温度になっても酸素が供給されなければそれ以上燃えないので、洗濯乾燥機内部で火が出ていてもドアを開けなければ燃え広がることは無いはずです。しかし、びっくりして火を消そうとしてドアを開けてしまうと酸素が供給されて一気に燃えるいわゆるフラッシオーバが発生するため非常に危険になります。

 フラッシオーバは気体の絶縁破壊を表現する言葉でもあり、気体が高温になることを意味することでは同じなのでこのような表現になっていると推測します。

 森において枯れ葉が堆積して腐葉土になる過程で内部が発酵と酸化で非常に高温になり手を入れられなくなる現象と似ています。場合により枯れ葉の発火温度に達すれば火が出る可能性もあります。山の火事は落雷が原因とよく言われますが、場合により大量の枯れ葉が堆積して腐葉土になる過程での高温が原因の可能性もあります。

 かつて大型変圧器の部分を模擬したモデルや実規模大のモデルの絶縁試験を行うために危険物建屋内で大量の絶縁油を扱っていました。絶縁油中で実験をした電極やサンプルから絶縁油を拭きとる場合に紙を大量に使用していました。絶縁油を用いた試験をおこなう際に、最初に教えられることは油を付着した紙は、蓋のついた金属製の容器に入れて必ず蓋をするように言われました。こうすれば、酸素の供給が制限されて発火する可能性が低くなる上に、万一紙が発火しても他のものに引火しないため安全となります。

2025年12月01日