39.微小ギャップが破壊電圧を低下させる
高気圧のSF6ガス中で0.025 mmのポリエチレンテレフタレート(PET)を2枚重ねて電極間に挟むと標準雷インパルス電圧で約25 kVで破壊を発生します。電界で表すと500 kV/mmです。しかし、0.025 mmのPET 2枚に幅の狭い0.025 mmのPET片を入れると0.025 mmのPET2枚が約15 kVで破壊を発生します。電界で表すと300 kV/mmです。これはPET片の断面である0.025 mmの沿面でSF6ガスの絶縁破壊が発生し、その放電が0.025 mmのPET 2枚を貫通させてしまいます。このような微小なギャップの放電が全体の破壊を決めてしまうことが多くあります。
微小なガスギャップが先に放電を発生する原因は比誘電率の影響と絶縁破壊電圧の差にあります。
気体のほとんどは比誘電率がほぼ1であるのに対して、PETのような高分子材料はPE(ポリエチレン)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を除きほとんどは比誘電率が3以上です。PETは大体3.2程度です。先の構成でガス側に加わる電界はPETの3.2倍になります。また、大抵の場合気体よりも固体の方が、破壊電圧が高い特性を持っています。このため、ただでさえ低い破壊電界のガス側にPETに加わる3.2倍の電界が加わるため、SF6ガス側が先に絶縁破壊を発生します。
SF6ガスの0.025 mmという短い放電がどうしてPETの高い破壊電圧を低くするのかが問題です。これには放電の先端の高い電界、高い圧力、高温の熱のどれかが影響していると考えられますが、未だにはっきりしていません。大変興味ある問題です。