38.絶縁屋と遮断器屋の発想の違い

 変電所において回路切換えのために定常電流や事故電流を遮断する動作をする遮断の開発をする技術者(いわゆる遮断器屋)と技術的な議論を交わす際に話が合わない思いを何度も感じました。

 まず、ベースとして、絶縁の開発をする技術者(いわゆる絶縁屋)は100回に1回でも破壊すると、絶縁上の大変な問題として受け止めます。一方、遮断器屋は100回に1回でも電流遮断に成功すると、成功であると喜びます。遮断成功が0回でなければ、改良すれば100%に近づくと考えるためです。

 この差はどこから来るのかです。絶縁も遮断もうまくいくか神のみぞ知る確率の世界です。

 絶縁では、いろいろな意見を受け入れて対応しその絶縁破壊の原因を探り取り除くことをおこないます。

 一方、遮断器では理論からガスの温度分布、熱の流れ、電離分解・再結合を検討して遮断の特性を向上させようとしますが、最後の最後アークが消えるかどうかは確率なのか良く分からい現象が立ちふさがります。何回も遮断に失敗して他の技術者からいろいろ言われて本当にそのまま開発を進めて良いのかを常に悩み続けます。1回でも遮断に成功すれば自分を信じた結果であると帰着します。

 このような経験を繰り返して遮断器屋は、自分を信じるという「自分教」という宗教家になるため、自分の意見はなかなか曲げないという性格になりやすいと思われます。

2025年11月10日