< 原子力発電というもの >
−その4−
ある日、久しぶりに会った息子と、しゃぶしゃぶをつつき合っていた。
しばらくすると、沸騰した湯の表面に灰汁が目立ってきたので、網ですくおうとしたその時、
思わずこう呟いてしまった。
「おっと、これだこれだ、これが日本列島!」
・・・・
地震大国・日本の原発は、「豆腐の上の原発」だといわれる。
事故停止中の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)
日本列島は、地下のマグマの上に浮かぶ東西南北4つのプレートが、
マグマの対流に乗ってゆっくり移動しつつぶつかり合う、その真上にあるという。
3月の東日本大震災も、東西のプレートのせめぎ合いが直接の原因だった。
何億年をもかけて岩盤がしっかり固定されてきた欧米の大陸とは違う。
日本列島は、たったここ数千年でも海岸線が著しく変動しているほど不安定な地域なのだ。
「豆腐の上」どころか、
「しゃぶしゃぶの灰汁」のように、刹那で浮沈する列島だと考えるべきだろう。
とはいっても、地球のライフサイクルは動植物のそれに比べれば十分に長い。
だからたとえ地震国・火山国であっても、慈しむべき国土であることに変りはない。
問題なのは、人間が作り出した放射性物質だ。
自然界には存在しなかった人工物質が、これから何千年、何万年と放射能を発し続ける。
その安全な処理方法がいまだどの国でも確立されないまま、どんどん原子炉内で生産され続けている。
原子炉で生産される放射性物質「プルトニウム」を燃料として再利用するというのが、
上掲の高速増殖炉「もんじゅ」だ。
そのもんじゅは、95年に起きたナトリウム漏れ事故以来稼動できていない。
「三人寄れば文殊の知恵」という。
しかし、
危険性は見て見ぬ振りをし、燃料処理コストも口をぬぐってきた。
「正心誠意」の知恵は出さず、儲け主義だけの非科学的力学に基づいて推進され、
「ぼくらの知恵の足りないところはよろしくねっ」
と、幸運を神頼みされた文殊菩薩は、さぞかしお怒りではなかろうか。
福島では大変な事態が起きてしまった。
にもかかわらず、幸か不幸か止まらなかった他の原発は現在も運転され、
さらに新規に建設されようとまでしている。
似非学付き「政官業」という非科学的力学体制の推進力には、驚愕するばかりだ。
2011.10.18
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