愛知県碧南市 酒と私とブルーシート ドンチャン騒ぎの桜舞 中山神社の夜
<中山神明社に昔からある古老の桜。正面の鳥居からやって来た参拝者を出迎える。その大きく広げた桜色の笠の下で、女子高生達が楽しげに花見をしていた> 碧南で花見をしたいと相談されれば、まず名の上がる中山神明社の桜。春になると境内をグルリと囲むようにして桜たちが咲き誇る。 その桜の総量はおそらく碧南で一番ではないだろうか。その桜の中で最も美しい桜が、中山神明社拝殿前に存在する一本の桜。 中山神明社が桜の名所となる遙か以前から、ここに鎮座している。低く大きく広がる桜の笠の下で女子高生達が花見をしていた。 この桜の下は特等席。今は女子高生か…、時代を反映する人々をずっと見てきた、この桜の木。
<ドンチャン騒ぎの夜桜舞を繰り広げる季節がやってきた。桜がまだ蕾でしかない時期から予約席を示すビニールテープ。春爛漫に咲き誇る桜の下で、酒を片手に酔いしれる人。ブルーシートに転がる酔っぱらいの頬も桜色に染まり春爛漫> 毎年、碧南市では「桜まつり」と称して、桜の名所である市内三カ所に咲く桜を夜間ライトアップしている。 中でも人気なのがこの中山神明社。桜咲く以前の段階から予約を現すビニールテープが敷地内に張り巡らされる。夜ともなれば、夜桜を楽しむといった風情は消えうせ、ただ桜の木の下で酔いつぶれる人々がゴロゴロと転がる姿。 灯された提灯の明かりに照らされる泥酔者の顔にも春が来て桜色となりけり。人と桜が一体になれる場所、それが中山神明社である。
桜よりも早くに、「碧南市役所」前の通りに春を告げにやって来る花がある。 「菜の花」特有の鮮やかな黄色は碧南市民の待ちに待った光景だ。 菜の花は別名「アブラナ」ともいい、種子から菜種油がとれる。また種類によっては「おひたし」や「和え物」として食卓に上がる(碧南市役所前の菜の花は食べてはダメ!)。 碧南市役所前の通りを彩る菜の花は、聞くところによると個人の寄贈によるものという。 世知辛い現代の社会において、なんと心温まる話だろうか。花には不思議な力があるのを最近知った。苛ついた気分を優しい気持ちに変えるチカラ。 醜い電線が空を覆うことのない碧南市役所前の通りにて、菜の花が作り出す黄色のラインに沿って歩いてみてはいかがなものか。きっと心躍る気持ちになる。
< text • photo by heboto >