愛知県碧南市 5円玉から生まれる新たな物語 毘沙門さんと5円玉との関係は?

碧南の不思議な話

毘沙門コイン (びしゃもんこいん)

毘沙門さんの賽銭箱に5円玉を投げ入れてみれば 不思議な光景に出会う

賽銭箱に立つ5円玉

<「毘沙門さんの賽銭箱にはなぜか不思議と5円玉が立つ」 厚さ2ミリにも満たない5円玉が器用に立つ姿は、なにやら毘沙門さんからの吉兆を告げるメッセージか? 逃げる5円玉、追いかける婦人…。いつしかその光景は民話となり、後世に語り継がれるかも知れない> 縁日でない日には、いたって静かな棚尾・妙福寺の境内。時折、熱心な信徒がごく当たり前のように参拝へと訪れる。 私も時間の許す限り、毘沙門さんへと参る。もちろん御利益を願ってのことだが、なにより境内の落ち着いた雰囲気が好きなのだ。 幼少の頃より祖母に連れられ通い、親しみのある毘沙門さん。だが、私は一度もその姿を見たことはない。 「ぜひ一度、お目に掛かりたい」と、毘沙門堂を目をこらして覗くが、薄暗く真っ赤な提灯が目立つばかり。 残念がる私の視界に、キラキラと輝きを放つ存在。賽銭箱に5円玉が立っている。この光景は初めてではない。 私はこの毘沙門堂で何度も5円玉が立つ姿を目撃している。さらに正月の縁日において、参拝する婦人の投げた5円玉が、内より跳ね返り、境内を転げ回った光景を目にしている。 「あららッ…」と五円玉を追いかける婦人の姿に、「また5年玉か!」と声を上げたものである。 厚さ2ミリに満たない5円玉が立つ偶然、逃げる5円玉…など、「毘沙門さんと5円玉」といった新たな民話が生まれそうな気配がする。

香炉に結ばれたおみくじ

<「毘沙門天のおみくじ」に描かれる2匹のムカデ。「うわばみ」(大蛇)はムカデを苦手とする。棚尾に古くから伝わる「毘沙門さんとうわばみ」の民話を思い浮かべ、おみくじを引く。ただ吉凶を占うだけでなく、「毘沙門さんのおみくじ」は災難から守ってくれる御利益がある!?> 毎月3日に催される棚尾・毘沙門天の縁日には、多くの参拝者で賑わう。 山門にある「繁栄の鐘」を鳴らし、露店が並ぶなかを妙福寺本堂へとお参り。さらに戻り、阿弥陀堂や弘法堂を経て、目的の毘沙門堂へと至る。 これが一般的な毘沙門天の縁日におけるルート。さて、毘沙門天の縁日を訪れたならば、ぜひとも「おみくじ」を引いてみたい。 なぜならこの毘沙門天のおみくじには、「毘沙門さんとうわばみ」という民話が伝わるからである。 ある日、ひとりの男が葦原で葦を刈っていた。その男は、道ばたで拾ったという」毘沙門天のおみくじ」を頭のまげに結んでいたという。 当時、棚尾の葦原には「うわばみ」(大蛇)が棲んでいるとされ、村人たちは恐れていた。 男の知らぬ間に、うわばみは背後に忍び寄り襲わんとする。男の頭に飛びかかる寸でのところで、うわばみは何者かの力によって弾かれてしまう。 諦め退散したうわばみに、男は命拾いした。のちに男が助かったのは、頭のまげに結んでおいた「毘沙門天のおみくじ」が守ってくださったのだと話は伝わる。 毘沙門天のおみくじを見て欲しい。2匹のムカデが描かれているはず。このムカデ達は毘沙門天に仕える僕(しもべ)であり、また「うわばみ」にとってムカデは天敵の存在である。

ヘボト自画像ヘボトの「街談巷説(がいだんこうせつ)」

色を塗られたお地蔵さんの姿

「真っ白なお地蔵さん」

棚尾・妙福寺の弘法堂北壁に鎮座するお地蔵さん(正確には阿弥陀さんだが…)には、真っ赤な法衣を纏い、真っ白な肌と着色が施されている。 また、堀切にある「堀切地蔵」と、中山へ向かう旧道途中にあるお地蔵さんと、私の知っている限り3体の着色されたお地蔵さんがいる。 このような着色をされたお地蔵さんは「化粧地蔵」と呼ばれ、日本海側に多く見られるものであり、あまりこの西三河地方で馴染みはない。 碧南市内において、棚尾のほかに見かけたのは、天王・阿弥陀寺裏にあるお地蔵さんだけである。 では、なぜ局地的に棚尾で見られるのか? 棚尾のふるさと館で佇む老人から話を聞いた。 「土人形を作る先生が色を付けたと聞いた。元から白い訳じゃない」と。堀切地蔵に関しても「平成の初め頃に色を塗って今の姿になった」とお地蔵さんの世話をする、近くのクリーニング店主さんは仰った。 全てではないかも知れないが、どうやら棚尾に真っ白なお地蔵さんが多いのは、土人形と関係がありそうである。

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