愛知県碧南市 人生に疑問を感じたら西端「無我苑」で答えを見つけてみよう
<「瞑想回廊」という摩訶不思議な施設。非日常的な空間の中、哲学という難解な世界へと導く。お勧めはイタリア・フェレンツェ「メディチ家」の椅子を模した「瞑想の椅子」のある部屋> 西端の田園地帯を歩き、坂を上がると奇妙な鉄筋コンクリート製の建造物を発見。 全国でも稀な哲学を題材とする「哲学たいけん村・無我苑」の「瞑想回廊」と呼ばれる施設である。 哲学思想家の「伊藤証信」(1876~1963)が”無我愛”を提唱し、昭和9年(1934)に西端の地で開いた「無我苑」に由来。 黒石の噴水、伊藤証信時代の無我苑に使われた瓦が沈む池を臨む回廊を抜けて施設へ。 外界とは異質の空間が広がり、2階へと通じる階段には、世界の偉人名言が並ぶ。 良い香りに誘われ、薄暗い部屋へ。人の手を模した椅子に座る。一枚の絵をジッと見る。現実逃避の心地良さに似た気持ち…これは癖になる。
<数寄屋造りの市民茶室「涛々庵」に見る日本古来の伝統美。手入れの行き届いた日本庭園に溜息をつく。飛び石の先に現れる「関守石」(せきもりいし)は、これ以上進めない事の印。関係なく眠る黒猫を羨ましく見る> 「瞑想回廊」の西には、市民茶室「涛々庵」がある。日本庭園に囲まれ、お淑やかな人々と共に上品な雰囲気を醸し出している。 隣接には研修道場「安吾館」、観光に訪れた人を持てなす「立礼茶席」がある。 日本庭園の飛び石には、シュロ縄で結ばれた拳大の石が置かれている。これは「関守石」(せきもりいし)といって、”これ以上進む事をご遠慮願いたい”との意を表す石。 そんな事お構いなしに黒猫が茶室の奥へと入っていく。市民茶室を寝床とする噂の黒猫だ。人間の事情を余所に実に羨ましい限り。
碧南市が誇る市民茶室の「立礼茶席」では一服250円でお茶・お菓子付きが用意される。 碧南で一番静かな街といわれる西端、その西端においても最も静寂した場所で味わう茶は格別である。 美しく調えられた日本庭園を眺めながらの一時に、猥雑な日常とは隔絶した世界を楽しむ。 隣接する研修道場「安吾館」も利用者のいない時間帯ならば、ゆっくりと見学させてもらう事も出来る。 広い床の間に、たった一輪の小さな花…とても高尚な空間に、自分もピンと背筋が伸びる思いになる。 この市民茶室で頂く「立礼茶席」は人気があるらしく、平成16年(2004)度の統計によると、年間8056服の利用があったという。
< text • photo by heboto >