愛知県・碧南市 光の世界を愉しむ 闇夜に浮かび上がる「パワーステーション」
<見渡す限りの闇に不安げになる。眼前に浮かび上がる光の城に思わず喜びの声。静寂に包まれたこの広大なステージを独り占めする贅沢。凍えそうな夜にふて腐れた表情も、いつしか感激の顔へと変わる。想いを込めた最高のプレゼント> 碧南市と対岸の西尾市を結ぶ橋は4つ。「上塚橋・中畑橋・棚尾橋・矢作川大橋」である。 どの橋にも、その橋上で共通して見えるものがある。遙か彼方に輝くパワーステーション。平成3年(1991)に第1号機が営業運転を開始し、現在5基の発電機が稼働する石炭火力としては国内最大の発電所である。 天空へと放たれたグラデーションのライトは、高く夜空の雲へと届き、その光景はまるでオーロラを見るよう。 このパワーステーションがもたらす神々しい風景をより楽しめる場所がある。 碧南名産のニンジン畑が一面広がる川口町一帯。街の雑踏とは無縁な静寂の世界。 どこが畑か道なのか、全く見当を付かせない漆黒の闇。 「川口公園」近くには、灌漑用の溜池がある。鏡のようになった水面に逆さのパワーステーションが映る。 眼前に見えるのは、もはやパワーステーションという現実的な存在ではなく、ファンタジーな世界に登場する「光の城」といった趣。 凍えてしまうくらいに寒いけれど価値はある。冬の透明感ある空気がきっと心地良く思えてくるだろう。
パワーステーションのすぐ近くには「釣り公園」がある。 発電行程から出る温排水が魚の生育を増進させると噂になり、人気の釣り場。 昼間は家族連れなどが訪れ、ほのぼのした雰囲気だが、夜には真剣な太公望たちが殺伐とした雰囲気を作り出している。 といっても彼らが狙う場所は限られており、そこに近づかなければ問題はない。 夜の「釣り公園」は何も釣りだけを楽しむ場所ではなく、実は夜景がとても綺麗な場所としても知られている。 遠くの対岸知多の工場群や、運が良ければ出港する運搬船などの光景を見ることが出来る。 ボーと汽笛が響き渡り、ゆっくりと船が衣浦港を後にする光景は旅愁を誘う。
< text • photo by heboto >