愛知県碧南市 なぜかみんな遠目に見ている「斉宮社」 静かに微笑む歌い手
<真っ赤な着物で演歌歌手が朗らかに歌う。秋祭りに訪れた人々の前で一所懸命に歌を披露していた。それなのに観客の数は20人あまりの少なさ。だが、さすがはプロである。ふて腐れることなくキッチリと仕事をこなしていた。本当はみんな遠慮がちに遠くから見ているのだが> 今日は祭である。こんなに人が少ないはずがない。実際に観客はもっといた。その数、軽く数えて200人はいるだろう。ただ、皆さんは役員席テントや会館、それに境内の縁という縁に並んで、遠巻きにその演歌歌手さんのステージをジッと眺めているのだ。 演歌歌手さんが「もっと近くへ来てください。」と、呼びかけても同じ。千福の人たちは、シャイで奥ゆかしいのだ。 他の時間帯にも、この斉宮社本殿前は、ポッカリ空いている事が多い。誰もその空間に入ろうとしない。 目立つからか?参道から堂々と進んでくる者は、おそらく余所者。我々の知らない、 地元民だけが知っている理由がこの神社には隠されているのかも知れないと、勘ぐってしまうほどの不思議な光景である。
毎年6月上旬になると斉宮社の境内一帯と周辺、参道に「紫陽花(アジサイ)」が咲き始め、人々を喜ばしている。辺り一帯に”あじさい祭”の幟が立ちはじめるころ、斉宮社だけの祭が催される。 テント下ではジュウジュウと音を立てて美味しそうな焼き鳥・唐揚げが出番を待っている。 長い竹をつたってそうめんが流れる。次々とやって来る人たちは挨拶を交わしながら、境内に咲く紫陽花を楽しむ。 用意された食べ物を手に紫陽花を祝う宴がいつまでも。地元親交の暖かい祭「アジサイ祭」はとっても和やかな雰囲気。(記事内容:斉宮社2003年10月12日・あじさい祭2004年6月13日)
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