愛知県碧南市 悪い子は耳元でゴソゴソと 棚尾「毘沙門さん」を守るムカデ
<毘沙門さんを攻撃するものあらば、このムカデたちが動き出す? 碧南の民話「毘沙門さんとうわばみ」のストーリーにおいて「うわばみ」を追い払ったのは、実は「おみくじに描かれたムカデ」であったとも。水屋にある「ムカデ」の彫刻を見る> 毘沙門さんが鎮座する棚尾「妙福寺」を訪れる。鐘楼門にて「繁栄の鐘」を鳴らしてみる。垂れ下がるヒモを引っ張ると、ゴーンと大音響が響き渡る仕組み。 向かって右手に大きな水屋が目に留まる。手を洗っていると、頭上より小さな視線がこちらを見張る。 見上げれば、ワラワラと足を並べるムカデたち。真っ黒な小さい目をしているものあり、全く目のないものありと様々である。 このムカデたちは、毘沙門さんを守る役目をおっている。 碧南の民話で有名な「毘沙門さんとうわばみ」。髷に結びつけておいた「毘沙門さんのおみくじ」が「うわばみ(大蛇)」から命を救った物語である。 「毘沙門さんのおみくじ」を引いてみれば分かる。「ムカデの絵」が描かれている。 「うわばみ」の天敵は、ムカデであったのだ。 開放的で誰でも気軽に参拝出来る棚尾の棚尾の毘沙門さんである。 だが、その事に乗じて境内で悪さを企むと、このムカデさん達が夜中にやって来たりして。ゴソゴソッと耳元で音がしたら…。
「毘沙門さんと虎」といえば、聖徳太子が関係している。聖徳太子が物部守屋を討伐するための秘法を毘沙門天から授かったのが、虎の年、虎の月、虎の日、虎の刻であった故にである。 「そんなんじゃなく、ただムカデだけだとあれだれ、虎にしたんじゃ…」と、棚尾「妙福寺」の境内で日向ぼっこをする老人が語る。 参道を行けば、弘法堂の向かいに一体の虎像が身構えていた。だがその姿はどこかコミカル。 コンクリート製で真っ赤な涎掛けをされている。傍らには賽銭箱も用意されるが、何故か硬貨は開け放たれた虎の口へ。 虎は皆に愛されているのである。虎の口は、そうした愛のお賽銭によるのか定かではないが、修復された跡が見える。 のんびりと構える妙福寺の虎像に、棚尾の平穏な一日が過ぎて行く。
< text • photo by heboto >