映画のクレジット・タイトルや映画関係の書籍の中で様々な名前のプロデューサーが現れる。「プロデューサー」、「エグゼクティブ・プロデューサー」、「ジェネラル・プロデューサー」、「アシスタント・プロデューサー」、「ライン・プロデューサー」、「プロダクション・マネージャー」などである。
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どこがどう違うのかはこういった言葉だけ聞いてもなかなか分かりにくい。事実、内容がよく分からない言葉もある。例えば、エグゼクティブ・プロデューサーについて、ある本では次のように書いている。 |
「おそらく最も説明がつきにくいタイトルだろう。製作に関与しなければその人が何をしたかを実際知ることはできない。映画製作の資金調達を進めた人かもしれないし、スタジオの上層部に一言取り次いでくれた以外何もしなかった人かもしれない。俳優が要求したために彼(又は彼女)がそうタイトルされることもある。・・・・・・・(中略)・・・・・・・再度言うが、あなたがそこにいないと知ることは難しい。」 |
資金調達の条件として、大口の出資者にエグゼクティブ・プロデューサーのクレジット・タイトルを与えることもあるという。それを喜ぶ人がいるというのは万国共通である。
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このように、クレジット・タイトルだけからはプロデューサーの種類を分けることは難しい。ここでは、プロデューサーを実質的に機能別に分類したいと思う。商業映画には大きく分けて三種類のプロデューサー業務を行う者がいる。「プロデューサー」、「ライン・プロデューサー(Line
Producer)」及び「プロダクション・マネージャー(Production Manager)」である。 |
映画製作用語の辞典である『FILM FINANCE & DISTRIBUTION a dictionary of terms :
John W.
Cones』(以下、『映画製作用語辞典』と呼ぶ)では、「プロデューサー」を次のように定義している。「映画の形成と成果について最終的な責任を負う者」。この内容については前節で説明した通りである。米国でのプロデューサーという呼称は日本でのプロデューサーより重く、より敬意をはらうべき響きを持つ。日本では次に述べるライン・プロデューサーも含めてプロデューサーと呼んでいるようである。
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「ライン・プロデューサー」は、その機能としてプロデューサーと重なる部分が多い。ライン・プロデューサーはプロデュースの職業的な専門家であって、他の映画製作主体に雇用され、その代理として金銭や製作進行に関わる実務的な処理を行う。多くの場合、資金調達や配給ルートが確定した後の段階で雇用され、その後の映画完成に至るまでの作業の責任を映画製作主体に対し負うことになる。なお、資金調達をも任せられる場合もある。プロデューサーと決定的に異なる点は、プロデューサーが負うべき「最終的な責任」をライン・プロデューサーが有しないこと、原案の確定及び脚本の作成といった企画段階に参加しないことである。あくまで雇用される者に過ぎない。ライン・プロデューサーを雇用する主体は、プロデュース経験の乏しい脚本家、新米プロデューサーやプロデューサーを兼務する監督、投資家、保証会社、製作会社などである。熟練した有能なプロデューサーであれば、ライン・プロデューサーを雇用することは不要である。 |