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第1章 映画を作るのは誰か
 
第2節

プロデューサーの役割(3)

 

 プロデューサーの報酬は、基本的には定額部分と成功報酬部分からなる。定額部分は多額ではないため予算段階でほぼ確定するが、成功報酬部分は出資者や配給会社との交渉に基づき契約により定められ、個々のケースにより算定方法が異なる。

 次の表は、米国のあるベンチャー・キャピタルが定めるプロデューサーの成功報酬の算定方法である。

 例えば、10 億円の投資額の映画を製作し、そのリターンとしての手取額が20 億円あったとすれば、プロデューサーの成功報酬は、

 ただし、制作費が予算オーバーとなったとき、ペナルティーとしてプロデューサーに金額的負担が課せられる場合もあり、最終的に持ち出しとなる畏れもある。

 優れたプロデューサーとなるためには、映画に対する深い造詣とともに、法務・財務・労務・マーケティングといった実務に関する幅広い知識及び経験が必要とされる。また、パッケージの作成に至るまでに要する費用を賄うだけの資金力(ほぼ自己資金)も不可欠である。そして何よりも、1年以上にもわたる不確実で困難な製作過程を乗り切り、映画を完成させるという強靱な意志の持ち主でなくてはならない。

 ここ20年あまりの間に国際的に配給されたイギリス映画の多くはデビッド・パットナムのプロデュース作品であり、イギリス映画に対する国際的評価を上げることに多大な貢献を残した。デビッド・パットナムに匹敵する大プロデューサーはまれである。彼の存在はイギリス映画にとっての幸運であったと言えるだろう。今後、日本映画に次代のパットナムが現れるだろうか。そうでない限り、国際化の流れの中で、日本映画の興隆はないだろうと私は考えている。