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第1章 映画を作るのは誰か
第2節

プロデューサーの役割(1) 

 プロデューサーの役割を明らかにする前に、商業映画を取り巻く製作環境を知る必要がある。

 下図を参照していただきたい。

 

 第2図は、商業映画製作・上映に関わる機能(Function)とその相互の関係を簡略に示したものである。これは、あくまで機能別の相互関係であり、例えば、監督や俳優がプロデューサーを兼務したり、配給会社が自ら製作することなどもありうる、ということに留意する必要がある。

 第2図を解説すると次のようになる。

 プロデューサーは、外部から持ち込まれた又は自らの原案を基に脚本家に脚本を作成させる。その脚本と製作予算等を記載した提案書(「パッケージ(Package)」と言う。詳細については後述する)を出資者と配給会社に提示し、双方から出資及び配給の承諾が得られれば、監督等スタッフ及び俳優との正式契約を締結し、映画を完成させる。その後、完成フィルムを配給会社に渡し、上映その他の利用により資金を回収する。これを経済的な観点から換言すれば、プロデューサーは、資金を調達し、その資金を映画作品に投下し、上映その他の利用により資金を回収し、これを分配する。つまり、一種の事業家であると言える。

 プロデューサーの役割を箇条書きにすれば次のようになる。
 @ 原案の確定
 A 脚本家の選定・契約と脚本の完成
 B 予算書の作成
 C パッケージ(提案書)の作成
 D 資金及び配給ルートの確保
 E プリセールス
 F 監督その他スタッフ、俳優等との契約
 G 撮影所の選定、ロケーション・スカウティング
 H スケジュール管理・予算執行管理
 I 決算処理、回収資金の分配