とーにかく機械いじりと解析と発明が好きでしょうがないおやじだ。 仕事と言うよりは趣味だね。 |
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スターリングエンジンの壁 1816年英国生まれのスターリングエンジンが200年もの間、なぜ実用化されなかったのか? 答えは2つ @外燃機関であるスターリングエンジンは高温熱交換器・再生器・冷却器という3種の熱交換器 が必要であるが、熱交換類の容量・サイズを大きくできない。 死容積が増えて出力が落ちるからである。そのため、高温熱交換器は温度差で受熱量を確保しなければ ならず、1000℃程度の熱源が必要となる。 Aスターリングエンジンはシリンダー内部に配列された上記3種の熱交換器をHe等の作動ガスが往復する。 往復する作動ガスの流動損失は圧力に比例して増加し、更に、この流動損失は回転数の二乗 に比例するため、エンジン回転が1000rpmを越えると出力・効率がお辞儀をする。高速化できない。 高圧容器化したエンジンは重く、低速のエンジンは大きく、耐熱高級材をまとったエンジンは非常に 高価となり、実用化されなかった。 このデメリットを解消したのが、弊社のMo2SE,Mo3SEです。機械工房で紹介しております。 スターリングエンジンの技術遺産 以下にアイシン精機で多くの優秀な技術者が開発したその他のスターリングエンジンを紹介します。 当時のアイシン精機は世界で最もスターリングエンジンの開発に意欲的であり、多くの開発費を投入 してきたのですが、実用化の壁を打ち破ることができずに2000年に開発を断念した。しかし、これらの 技術的な遺産を弊社のホームページでこうして紹介することで記憶に残したいと思う。 @アイシン精機のスターリングエンジンの開発は1977年に東京ガスとの共同開発によるSTR77モデル からスタートした。ワッブルタイプ(揺動型駆動方式)で出力は8kW程度であった。 次いで、名古屋通産局から補助金を頂いて50kW級スターリングエンジンMT78、79の開発を 1978〜1980年に行い、50kW出力級4気筒ダブルアクティング斜板駆動のエンジンの基礎を築いた。 A自動車用スターリングエンジンは1986年頃から開発が始まり40馬力モデル(AE87) と60馬力モデル (AE90)を相次いで開発した。作動ガスに水素を使用しており、3000rpm以上の高速回転が可能でした。 上記自動車用SEはカローラに搭載され、テストコースで時速110Km/Hのスピードで走行しておりました。 トヨタ自動車の豊田英二さんや豊田章一郎さんにも試乗していただきました。マンマシンとしての応答性 に課題がありました。つまり、作動ガス圧と燃料コントロールの高速同時制御に難点があったのです。 BNEDO汎用スターリングエンジンは上述したように30kW出力で効率42%を得ることができたエンジン で、ダブルアクティング4気筒斜板駆動エンジンで非常にコンパクトにまとめられておりました。その応用先は チラー式ヒートポンプ(20RT)でした。この冷暖房機は実際に工場に設置され実用機として3万時間運転された ことで世界初でした。 上記NS30Aスターリングエンジンのもう一つの応用はコージェネシステムでした。1994年頃から大阪ガス や出光興産等で評価されましたが、やはり当時の内燃式ガスエンジンを上回る信頼性が得られませんでした。 C小型7.5馬力スターリングエンジンは1990年からGHP(ガスエンジンヒートポンプ)の未来型という位置 づけで開発してきたが、結果は価格面と信頼性の面でガスエンジンヒートポンプ(GHP)を凌駕できません でした。 D宇宙用ソーラスターリングエンジンの開発は1990年頃から始まり、当時の宇宙科学研究所、航空宇宙技術 研究所と共同で行われました。世界的に宇宙技術開発が盛んな時代でした。結局、このエンジンは宇宙に 行けずに終わりました。エンジン形式がセミ・フリーピストンでディスプレーサがモータ駆動され、対向する パワー・ピストンがフリー駆動でリニアー発電機200Wがその外周に配置されていた。 Dアイシン精機最後に開発された幻のアドバンス型エンジンは低コストを狙い、内燃機関のクランクをそのまま 利用して直列に5気筒を配列したもので20kW出力を狙って開発され、工場内の焼却炉に取り付けられました。 どういうわけかカラー写真が残っておりません。 ここに記載されたスターリングエンジンは私が直接係わって開発したエンジンおよび初期のSTR77、MT79エンジンを掲載しましたが、この他、25Psスターリングエンジン、小型エンジン等多くのスターリングエンジンが開発された。おそらく、これらのスターリングエンジンの開発に投入された研究者は延べ100人を超え、その開発費は200〜300億円程度になるでしょう。しかし、冒頭に述べた通り残念ながら実用化にいたりませんでした。 |