「キミハダレダネ?」
「わたし?・・・わたしはかすみ。・・わたしどうなったの?しんだの?」
「オマエハベチャポンテンニヨッテムイシキガツナガッタノダ。
 ソレデケデハナク、コンナトコロマデクルトハナ。」
「こんなところ・・・。ここでなにをしてるの?」
「ワレハマダモドラヌ。トキガミチヌユエニ。」
「まだ・・じゃあいつかかえってくるのね。」
「ソウダ。ヒトノムイシキハカクジツニカワッテキテイル。」
「わたしたちがかわればいいの?ヘナモンはかわらないの?」
「ヘナモンモカワリハジメテイル。ソレハニンゲンガカワッタカラダ。」
「わたしたちがかわればヘナモンもかわる・・・。」
「サア、ベチャポンテンガヨンデイル。モトイタトコロニカエソウ。」
「ありがとう・・・あなたヘーナモンさまね。」
「ソウヨバレテイタ。スコシワガチカラヲワガイノママニシヨウ。」
「さようなら。またあえるよね。」
「ミライデナラナ。トチュウイロイロミルダロウ。ダガ」
「けっしてしゃべるな、でしょ。いわれなれちゃった。」
「サア、ベチャポンテンガヨンデイルゾ。」

カスミンは浮いていた。ふよふよと、薄暗い中を。
(おりょ?ここどこ?どこに向かってるんだろう?)
体は一方的に流されていく。
(な〜んか昔の下水道みたいな所だなぁ〜あ、扉だ。)
そこは酒場のようだった。未だ営業前らしかった。従業員がいたが
目の前を過ぎても気が付かなかった。
(あ、そうか。魂だけみたいなモノだもんね。隠さなくても良かったんだ)
なおも体は店の奥の倉庫の入り口へ流れていった。
「あら?」
中にいた女性が気が付いたように声を上げた。女性の体からは
図鑑にも載っていないような奇異な茸がわんさと生えていた。
「キ、キノコのヘナモンだぁっっ!!」
思わず叫ぶカスミン。
「ヘナモン?ああ、あんた上の街の子だね。って、ひょっとして
 べちゃぽんてんじゃない?」
「知ってるの?ってか見えるの?!・・!!!きゃあっ!」
裸を見られたのも恥ずかしかったが、目が慣れると周りに同年代の
男の子が何人も裸で樽の淵に固定されていたのに驚いた。
「もう、照れちゃって。初めてじゃないんでしょ?」
「は、初めてですぅ!あの、急ぎますんでこれで失礼します。」
「お達者でぇ〜。」
「ああ、物凄いの見ちゃった。何だったんだろ一体。それに此処何処?
 ・・・・あんなに沢山見たの初めて、、、キャーッ!」

そうこうしてるといつか蘭子さんと通った道になって見慣れた風景が
目に飛び込んできた。
「遠かった〜。やっと帰ってきたよぉ〜。」
部屋に戻るとべちゃぽんてんが真っ青な顔で覗き込んでいた。
「カスミ〜ン、ちょっとあんた今ドコ飛んでるのよぉ〜。
 普通は一寸イッて直ぐ戻ってくるのよ〜。長すぎだって。」
「おーい、ベチャポンテ〜〜ン。」
「どわっ!あんた何んで幽体離脱しとらっせるの?早う戻りんて!」
「分かってるわよぉ〜。んしょ。。。あれ?戻らない。」
「ああ、それじゃあ私に重なって。よし。行くよ!」
べちゃぽんてんはカスミンの股間に思いっ切り息を吹き込んだ。
「きゃあああああっ!!」
あまりの感覚にカスミンは飛び跳ねた。
「良かったぁ〜・・・よかったよぉ〜、カスミーン!」
緊張から解き放たれ泣き出すべちゃぽんてん。つられて泣き出すカスミン。
何がどうしてか分からないが泣いた。でも何故か嬉しかった。

「そっかぁ〜、ヘーナモン様の意識に触れたのかぁ〜。そりゃ深い所まで
 潜ったものだねぇ〜。は、帰って来ないはずだよ。」
「そんなに大変なの?」
「そぅよお〜。でも本当に良かった、無事に戻れて。」
「・・ねぇ、」
「ん?」
「私って何か変わった??」
「そーねぇ〜、強いて言うなら、」
「言うなら?!?」
「裸で抱き合うのが嬉しそうになった。」
「ありゃ。ちょっと何よそれーっ!」
「うふふ。御免なさいな。でも前なら恥ずかしがって拒んだでしょ。」
「そりゃ、確かに一緒にお風呂入るだけで、こんな風に裸でお布団入って
 抱き合うなんて事、ゼッッタイなかったよ。でもそれって関係あるの?」
「心を開かないと出来ないでしょ。人間とヘナモンもほんの少しずつ
 何世代に渡って心を開いて静かに理解すれば良いのよ。」
「そう・・だよね。急いで無理する事ないよね。」
「そ。歌にもあるでしょ。♪お願い 緩やかに 時を紡いで♪」
「あ、それ聞いたことある〜。♪宇宙(そら)や 風と 友達でいて♪」
「うふふ。」
「えへへ。・・・・ぁぅ。」

カスミンは少しブルッと震えた。
「ふふんぅ〜。」
「な、なによぉ〜。」
「いじけなさんな。私もよ。・・ね、見えないしお風呂でしちゃおうか。」
べちゃぽんてんはよりにもよってな提案をした。
「えぇええええ゛っ!」
「二人でしちゃえば恥ずかしくないって。」
「はずかしいっ!!」
「じゃ、お風呂の中でしちゃお。それならしたことあるでしょ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1回だけ。」
「初めてでないならよござんす。さ、行こう!って立てる?」
「んしょ、、腰に力が入らないよぉ〜〜。」
ぺたんとしたまんまで座って情けない声を上げるカスミン。
「しょうがないなぁ〜。さ、オンブしてあげるから掴まって。」
「御免ねぇ〜・・・・この傷、私が付けたの?」
声が凍る。
「あぁ、これね。ちょっと舐めてくれる?直ぐ治るから。」
「ゴメン。本当にゴメン。」
許しを乞うように無心で舐めるカスミン。
「あ!本当に治ってく?!うそぉ〜!」
「言ったでしょ。私は淫具のヘナモンだって。人間はこういうプレイも
 長い歴史を持つからねぇ〜。呪術は使えないけど快復はご覧の通りよ。」
「つくづく凄いヘナモンだねぇ〜。」
「さ、早く乗ったのった。私も出そうなんだもん。」
「ごめん。これで良い?」
カスミンが腕をべちゃぽんてんに回すと、べちゃぽんてんはカスミンの
腰に手を回し担ぎ、浴場に向かった。

「よっと。。。」
べちゃぽんてんはカスミンを背負ったまま湯船に浸かった。
「くふぁ〜〜〜。」
くつろぎの声を漏らすカスミン。
「このままする?」
「!ぃ・・ぃやだぁ!・・離して脚!」
カスミンは慌てて腕を縁に固定した。が、下半身に力が入らない。
「ジョークよ、冗談。さ、脚離すよ。」
べちゃぽんてんが離すとすぅっと脚が沈んだ。それを確かめて
カスミンの隣に座る。
「あ、あのさぁ・・・横に座られると・・困るんだけど。」
「どしてさ?すること同じなんだし。」
「恥ずかしくて出ないのっ!んもぅ!!ベチャポンテンのバカ!」
「あはは、それもそうだね。向こうなら良いでしょ。」
そう言うとべちゃぽんてんは真っ直ぐ反対側へ進み、四つん這いになった。
まるで尻を、菊門を披露するかのように。
「月が綺麗だねぇ〜。雲一つないときた。」
後ろでドギマギするカスミンを後目に月見にふけるべちゃぽんてん。
「・・・ふぇぇ〜、ベチャポンテン〜。私ヘンになっちゃたよぉ〜。」
不意にカスミンが情けない声を上げた。
「何!?どうしたの?何処か具合が悪い??」
気になって振り向くべちゃぽんてん。
「だってお尻の穴見て興奮しちゃったよぉ〜。私ヘンタイになっちゃった。」
「・・・あのね、重ねて言うけど私は淫具のヘナモンなの。全身から
 エロエロオーロラが出てるの。だから私の何処を見てもハァハァするのが
 普通なの。分かった?」
「・・・分かった。。」
べちゃぽんてんの説明に頭では理解しながらも、カスミンはなおも
ドキドキが止まらない自分が恥ずかしかった。

「・・・・・あのさぁ・・。」
おずおずと尋ねるカスミン。
「なぁに、カスミン?」
半ば次の質問を予期しているように答えるべちゃぽんてん。
「ベチャポンテンの何処を見てもドキドキして良いんだよね。ね?」
「そうよぉ。うなじに興奮したって、足の指に欲情しても良いのよ。
 勿論股間は魅了されたって不思議じゃなくてよ。」
「じゃ、じゃあその・・・オシ・・・・ッコ見てドキドキしても、」
「全然普通よ。ふふ、私から見せてあげる。準備は良い?」
あえて前を向き、カスミンから顔を背けてあげる。
カスミンは食い入るように一点を濡れた瞳で凝視していく。
その視線を感じ、べちゃぽんてんは腰を少し上げ恥丘を湯面から上げた。
指で体付きの割りにはくっきりとした花弁を広げて尿道口を露わにする。
「ん。。。」
べちゃぽんてんがくぐもった声を上げ、少し震えたかと思うと
透き通った、少し黄金色に輝く水が見事な放物線を描いてカスミン目掛け
真っ直ぐに飛んできた。
「うわっ!!・・・・でちゃった・・・・・」
文字通りの呼び水にカスミンもつられて湯の中で膀胱の締め付けを解いた。
水圧に下腹部を圧迫されるがままにカスミンの体を駆け抜けた水が漏れる。

尿が抜け出る快感に酔いしれながら目の前の光景に呟く。
「自分のもあんなかな。」
「ちょっとソレどういう意味だい!」
沽券に関わったのかムキになるべちゃぽんてん。叫びと共に水圧が上がり
カスミンに掛かりそうなまでに放たれた。
「!!って、こういうコトよ!」
カッときたカスミンは回復した腰を前にせり出しべちゃぽんてんに
浴びせようとする。二人の小水と小水が丁度真っ向からぶつかった。
「。。。。ぉ、オシッコとオシッコがぶつかったぁ〜。おかしぃ〜。」
「っくふゅふゅ、、、ヒーローアニメじゃあるまいに。。
 なにも正面衝突しなくたって。。。。っふゃふゃふぁはははは!」
「あははははははは!へーん!」
二人は放尿が終わっても暫しそのままの格好で笑い続けた。
あまりにも滑稽な非日常に鈴が転がるような笑い声を発し続けた。
「ははは、腹痛い。・・・はぁ、疲れちゃった。」
そう言うとカスミンは再び腰を湯船に浸けた。べちゃぽんてんも再び
カスミンの横にやって来た。
「はぁぁ〜。おしっこするのが楽しいなんて、ヘンなの〜。」
ちょっと罪悪感も混じりながらカスミンが喋る。

「そうねぇ〜。でも何の不自由もなくオシッコ出来るのって
 物凄く喜ばしい事なのよ。」
「そう?」
しみじみと呟くべちゃぽんてんを疑うカスミン。
「そりゃそうよ。体細胞が健全で、血液が順調で、腎臓や膀胱や尿道が
 正常でなけりゃならないのよ。あ、括約筋もね。それに淋しい病気は
 おしっこする時も辛い思いするのよ。」
「さびしい病気??」
「ま、そういう病気もあるって事で。それとは違うけど尿道結石も
 オシッコするのが辛い症状よね。」
「尿道に石・・・うわっ!痛そうーーーっ!!」
「だからぁ〜」
べちゃぽんてんは、そっとカスミンの下腹部に手を添える。
「良いおしっこが出せるのは健康な証拠なの。」
「そっか〜。・・・でも恥ずかしいなぁ。」
ほんのり頬が染まるカスミン。
「そうね。恥ずかしいって思う気持ちは無くさないでね。」
べちゃぽんてんは頬をカスミンの首筋に擦り寄せた。
「ベチャポンテン・・・、私、、、、」
その後の言葉が続かなかった。何故最後に私なんて言ったのかも。
「カスミン・・やっと生まれてくれた私達の宝。」
目の前がクラクラする、最大限の祝いの言葉に。
「大好きよ。あなたとお話出来て本当に良かった。」
「私も・・・。ねぇ、今度はいつ会えるの?」
「あらあら、お別れの挨拶もしてないのにもう次の約束?」
「だって・・・。」
「その話は寝間着を着てからにしましょ。」
「・・・うん。」
二人は手と手を取り合って部屋へ入っていった。

カスミンは寝間着を、べちゃぽんてんは肌襦袢を羽織って布団の中にいた。
「ねぇ、今日は泊まっていってくれるよね?」
カスミンはすっかり甘えん坊モードになった。
「う〜ん、そうしたいんだけど、、感じるのよねぇ。これが。」
べちゃぽんてんは難しそうに頭を人差し指で擦りながら答えた。
「感じるって・・・・何を?」
「いやね、【そろそろする頃】ってのをね。カスミンのは以前から
 今日辺りだろうってのが分かってたんだけど、今感じてる相手は
 滅多にそんな風にならないし、こりゃ一丁揉んでやるかというか
 揉まれてやるか、ってな訳で悩んでいたのよねぇ〜。」
「ふ〜ん・・・それって珍しいの?」
べちゃぽんてんの説明が今一つピンと来ないので要点を聞き直すカスミン。
「まぁね。次がいつになるくらい特別なパターンね、こりゃ。」
「・・・・・じゃあその人の所に行ってあげて。」
「・・・・・良いのかい?御免なさいねぇ。でもまだ余裕はありそうだし、
 せめてカスミンが眠るまでは一緒にいてあげるわ。」
べちゃぽんてんはカスミンの肩を優しく叩いた。子守をするように。

「ありがとう。でもいいよ、私は。早く行ってあげて。それに、、、、」
「それに?」
「目が覚めてアナタがいなかったら寂しいもん。起きてる内にちゃんと
 お別れの挨拶したいの。」
照れ照れになりながらも自分の気持ちをカスミンは伝えた。
「・・んも〜、嬉しい事言ってくれちゃってぇ。あなたってホント
 良い子ね。将来の旦那さんが羨ましいわ。」
べちゃぽんてんは名残惜しそうにカスミンをぎゅうぅ、と抱きしめた。
「だ、だんなって何ですか!」
「もうムキになって。今直ぐお嫁さんになっても恥ずかしくないわよ。」
「そ、そういう問題じゃなくてですねぇ!!も、知らない!」
プイッとそっぽを向くカスミン。
「御免御免。あんまり可愛いから、ちょうらかしたくなったんよ。」
「ぅ・・バカ。」
「えっへへ〜♪叱られちゃったから御無礼しようかね〜。」
そう言ってべちゃぽんてんは床から出て着付け始めた。
カスミンは敷き布団の上でチョコンと座って彼女の背中を眺めてた。
「・・・ねぇベチャポンテン。私、前に自分が二人になりそうだったの。」
「あらそう・・・って!何それ?あんた人間じゃなかったの?!?」
「人間です!ちょっと色々あってね。鏡の自分が出てくるって言うか。
 その時、私は自分が二人になる事が凄くイヤだったんだけど、
 ベチャポンテンだったらどう思う?」
「そりゃ困るわね。」
べちゃぽんてんの即答にカスミンは表情が明るくなった。
「だよね。・・・・・でもどうして?」
「ん?ホラこのお腹にあるのはヘーナモン様から賜った物だからね。
 ヘーナモン様が二人にならない限りこれは一つだし、それで私だけ
 二人になったらどっちかが持て余す訳でしょ。それじゃあ自分の
 お役が果たせないしね。自分の役目を勤められるのって、自分は
 いて良いんだ!って感じられるしね。」
「・・ぁ、そーいう事。」
帽子男とは別の答にちょっと残念がるカスミン。

「期待に応えられなかったみたいね。でもね、私は仲間達の長なんだから
 時々はそうやって意識しないと、ね。」
「ふ〜ん・・・え?・・仲間達??・・・長????」
ちょっと目を白黒させ始めたカスミンに追い打ちが来る。
「あれ?知らなかった?【べちゃぽんてん】って呼び名は私以外は
 品種名みたいなものだって。他の娘は総称で呼ばれているのよ。」
何処から突っ込んで良いのか分からない事をさらりと言ってのけた。
「って事は・・・私そっくりのベチャポンテンがいっぱい・・ふぃ・・」
「みんなあなたに似てないわよ。鏡写しなのは私だけ・・あれ?
 ちょっとカスミン!?どうしたの??!ねぇっ!」
重要な事を聞く前にカスミンは気絶してしまった。

真っ暗な中、カスミンは上も下も分からないで浮いていた。
遠くから沢山の自分が全裸でやってくる。
いつの間にか自分も一糸まとわぬ姿になっていて、その事に気付く内に
自分の四肢に自分が絡みついてきた。その内一人の自分が股間を自分の
顔に擦り寄せて口を塞いだ。
(ちょ、ちょっと待ってよ・・・い、いゃぁ〜〜〜!)

くはっ! と反射的に飛び起きようとするカスミン。だが何か柔らかい肉に
顔をぶつけてしまった。鼻先が奥にめり込んだらしい。
「ふぶっ!」
「んきゃぉ!」
「なになに〜?!・・・・!!!」
「ぅんもぉ〜?!・・・・!!!」
カスミンは鼻に付いた糸を、蘭子は股間とそこから滴る糸の行方に
目を奪われた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
あまりの事に互いに口をパクつかせる二人。

この前後の事を知る者は、いない事になっている。
「へくちゅっ!」
いや、いるんだけどね。ね、べちゃぽんてん♪