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89.ジョンQ−最後の決断−JOHN Q  (2002年米) <5.0>        
 [監督]ニック・カサヴェテス
  [出演]デンゼル・ワシントン、ロバート・デュヴァル、ジェームズ・ウッズ、アン・ヘッシュ、エディ・グリフィン
  [時間]116分
 [内容]ジョンは、不況のあおりで半日勤務となりながらも妻デニスと9歳の息子マイクと幸せに暮らしていた。しかし、
    ある日、マイクが少年野球の試合中に倒れ、病院に担ぎ込まれる。診断の結果、心臓病を患っていて、生き延びる
    方法は心臓移植しかないと判明する。移植手術を行うと25万ドルという莫大なお金が必要となる。その前に前金7.5
    万ドルを払って移植者名簿に載せる必要がある。 しかし、ジョンの保険は、リストラの影響で会社側で変更されてお
    り高額な移植手術には適用されなくなっていた。ジョンは家財道具を売るなど金策に走ったが、病院から無情な退院
    勧告が出される。我慢の限界に達したジョンは拳銃を持って救急病棟を占拠。医師や患者を人質に、マイクを移植者
    名簿に載せるよう要求する・・・
  [寸評]米国社会の医療・保険制度の問題点を指摘した社会派かつ家族愛のドラマ。非常に良い作品だ。途中で涙がこ
    ぼれ落ちそうになったが、周りも同様にススリ泣いていた。邦題の”最後の決断”は何を意味するのか?と思って観て
    いたら、そこが一番の要だった。参りました。やはり手段はともかくとして”お父さんは、そうでなくては!”と思わせら
    れる。保険制度の問題のみならず世の中の歪み、父から子への思い、妻の夫や子への思い等々どの場面・どのセリ
    フもズシリと心に染みてくる(色々な事に煩悩しても家族の健康・愛情に勝るものはないと思うから・・・)。人質と仲良
    くなったり、見物の大衆がジョンを支持したり、今までにない話のパターンではあったが、ジョンの妻や親友、そして
    人質までが最後迄ジョンを味方する事が嬉しかったな。一般的に保険を契約する際、安易に契約して、ブ厚い約款を
    渡されても読まずに、後で泡を食う、という事が多いと言われている。本当に色々な面で理論武装→リスク管理してお
    く必要性を強く感じた。冒頭の事故のシーンはあれは誰?何を意味する?と思っていたが最後の重要なシーンにつな
    がるのであった(ネタバレ)。この作品は絶対オススメですよ。色々な事を考えさせられます。

90.チョコレート MONSTER'S BALL  (2001年米) <4.0>        
 [監督]マーク・フォースター
  [出演]ビリー・ボブ・ソーントン、ハル・ベリー、ピーター・ボイル、ヒース・レッジャー
  [時間]116分
 [内容]米国南部ジョージア州の刑務所で看守として働くハンクは父親バックから人種偏見を受け継いでいた。ハンクに
    は同じ看守として働く心優しい息子ソニーがいたが、ソニーは看守の仕事の適性に悩んでいた。黒人の死刑囚マスグ
    ローヴの刑執行の直前に取り乱してしまったソニーは、ハンスに叱責され、翌日にハンスとバックの目の前でピストル
    自殺してしまう。一方、マスグローヴの妻レテイシアは息子のタイレルを事故で失ってしまう。事故の直後に偶然出会
    ったハンクとレテイシアは共に息子を亡くした悲しみを抱えつつ人種を越えて愛し合うようになるが・・・
  [寸評]ハル・ベリーがアカデミーの主演女優賞を獲得した話題作だが、愛知県での上映館数が少なくレンタルになって
    から見ようと思っていたところ、馴染みの劇場で突如公開される事になり鑑賞。ハル・ベリーが捨て身(R‐18指定)
    かつ味のある演技を見せてくれ、ハンス役のビリー・ボブも非常に好演だった。話は全体的にシリアスで重い感じだ。
    ハンスなんて最初は人種差別発言はするし、息子には罵倒するばかりで”何て野郎だ!”と思っていたが、息子の自
    殺以降、レテイシアとの出会いもあり、人間的な温かさが出てくる。何か非常に大事な物を失ってから遅いぞ!という
    感じもするが、真剣にムカツクのがバックだ。あれこそ極悪野郎だ!ハンスに見捨てられる形で施設に送られるのだ
    が・・・年を取っていても人間がなっていない、という典型だ。本作品の一番の要は最後のレテイシアの何ともいえな
    い表情でしょう!私はまた波乱でも起こるのかと思ったら、あのまま終わってしまった。お互い重い十字架を背負い、
    それを分かった上での今後の歩み・・・。何とも切ないんだけど、しんみりと感動させてくれました。
    ※原題の「Monster's Ball」はセリフに出てくる。邦題の「チョコレート」は登場人物の好物と黒人の肌の色を掛けて
     付けられたようだ。鑑賞すると、この邦題には納得がいく。
    
91.イナフ ENOUGH  (2002年米) <3.5>        
 [監督]マイケル・アプテッド
  [出演]ジェニファー・ロペス、ビリー・キャンベル、ジュリエット・ルイス、テッサ・アレン
  [時間]115分
 [内容]ウェイトレスのスリムは自らを賭けの対象にした失礼な男から守ってくれたミッチという親切な男に出会い、結婚
    する。ミッチは建設会社を経営しており、スリムは裕福で幸福な生活を送る。やがて娘グレイシーが生まれ、順風な
    生活が続いたのだが、グレイシーが5歳になった頃、ミッチは突然変貌する。ミッチの浮気を咎めたスリムに対し暴力
    をふるい力で押さえつける。実はミッチは支配欲の塊の人間だった。恐怖に怯えるスリムはグレイシーを連れて家を
    飛び出すが、ミッチはあらゆる手段で彼女の行く手を阻むのだった…。
  [寸評]試写会の応募はインターネットより葉書の方が断然当選する率が高い。愛知県勤労会館での試写会に当選し
    拝見。今何かと私生活の話題が多いジェニファー・ロペスが主演、監督が「007/ワールド・イズ・ノット・イナフ」のマイケル・
    アプテッドで最近問題になっているDV(ドメスティック・バイオレンス)をテーマに取り上げた作品。ジェニファー・ロペ
    スの七変化(監督が007を撮っている事もあるのか、あげくの果てにボンド・ガールに豹変してしまう)や逃走の繰り返
    しというアクション・サスペンス風のテンポには楽しめる。スリムは何故5年もミッチの支配欲に気付かなかったか?
    (他人の家を買い占めたケースもあるのに・・・)あんなに短期間で強者になれるのか?と色々粗はあるが、夫婦の
    絆・DVについて奥深く問題提起している感じはする。暴力は一瞬に信頼関係が崩壊するだろうし、女性は忍従するか
    警察へ逃げ込み訴える等(訴えると父親を犯罪者にしてしまうというジレンマ)の対抗手段を取るかしかない。スリム
    はたまたま金を支援してくれるスポンサーがいたが、金も信頼できる人物もいないと袋小路になる、という実態も感じ
    取れる。最後のオチはある面、爽快でもあるし後味の悪い感じもするが、皆さんはどう感じるでしょうか。私は「ホワッ
    ト・ライズ・ビニース」を思い出してしまった。(03年1月25日より公開)

92.シッピング・ニュース THE SIPPING NEWS  (2001年米) <3.0>        
 [監督]ラッセ・ハルストレム
  [出演]ケビン・スペイシー、ジュリアン・ムーア、ジュディ・デンチ、ケイト・ブランシェット、スコット・グレン
  [時間]111分
 [内容]新聞社に勤めるクオイルは、父親の厳しい教育が災いし自分の殻に閉じこもる孤独な男となってしまった。そん
    な彼は、妖艶な女性ペタルと出会い初めての幸せを味わう。結婚もし、女の子も生まれるが、ペタルは娘をほったら
    かし、若い男と遊んでばかりのアバズレ女だった。ある日、ペタルは娘を連れ去り、男と共に家を出ていってしまう。
    そんな時、クオイルへ叔母と名乗るアグニスが訪ねて来る。しばらくしてクオイルへ警察より連絡が届く。ペタルの交
    通事故死(娘は無事)と、彼女が娘をヤミ組織ヘ養子として売り飛ばそうとしていた事実だった。失意のクオイルは人
    生をやり直すため、アグニスに導かれて娘を連れ、父の故郷というニューファンドランド島へと向かうのだったが…。
  [寸評]「ショコラ」「サイダーハウス・ルール」でアカデミー賞にノミネートされたラッセ・ハルストレム監督の最新作。原作
    はピューリッツアー賞と全米図書館賞を受賞したE.アニー・ブルーの同名小説で出演陣も豪華俳優揃い。完全にア
    カデミー賞を狙いにいった作品だ。しかし、ノミネートすらならなかった通り、悪くはないが内容全体が重苦しく暗いた
    め、イマヒトツ感銘するまではいかなかったのが正直な感想。誰しも心に隠された闇の部分を背負って生きているの
    かもしれない。そうした事をリセット(?)して再生いていく登場人物達の姿を描いているが、どうも主演のケビン・スペ
    イシーが素朴で善良な人間を演じる事に違和感を感じてしまう。彼には「セブン」「アメリカン・ビューティ」のようなヒト
    クセもフタクセもある人物像の印象が強いからなあ。ペタルに簡単に手玉に取られる様は彼らしい感じはするのだが。
    女性は外見やセクシー度だけでなく、内面をしっかり見極めないと、勢いだけでくっつくととんでもない!という良い
    教訓は示されている。何よりペタル役のケイト・ブランシェットは強烈だった。