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93.マイノリティ・リポート MINORITY REPORT  (2002年米) <4.0>        
 [監督]スティーブン・スピルバーグ
  [出演]トム・クルーズ、コリン・ファレル、サマンサ・モートン、マックス・フォン・シドー
  [時間]145分
 [内容]西暦2054年のワシントンDCが舞台。政府は凶悪犯罪を防ぐ策として、6年前より“プリコグ”と呼ばれる3人の
   予知能力者によって未来に起こる犯罪を事前に察知し、事件が実際に起きる前に犯人となる人物を捕まえてしまうと
   いう奇抜なシステムを採用していた。ジョン・アンダートンは犯罪予防局のチーフとして活躍していた。彼は6年前に
   息子を奪われるという悲愴な事があったから犯罪防止に懸命になっていた。しかし、ある日、ジョンは自分が36時間
   以内に見ず知らずの他人を殺害すると予知されたことを知る。一転して以前の部下達から追われる立場になった
   ジョンは、自らの容疑を晴らそうと奔走するのだが・・・
  [寸評]「ブレードランナー」「トータル・リコール 」の原作者フィリップ・K・ディックの短編小説をスピルバーグ監督の手に
   よって映画化された作品。彼らしい近未来の世界が描かれており、その世界観を観るだけでも結構価値はあると思う。
   前半は、お決まりの追っかけられまくる展開だが、後半になると緊張感が漂うサスペンス風となる。何だかんだ(スピル
   バーグ作品は毎度ながら)引き込まれてしまい画面に釘付けとなってしまうので145分もあっという間だ。途中で罠に落
   としいれようとする犯人が誰か分かってしまうが、どうしてジョンはあの人の事を知ったのか?ジョンの息子を結局誰が
   どうしたのか等々イマヒトツ釈然としなかったな。(そんな事は別に気にせずも満足はさせてくれたから良いが・・・)
   本作品の音楽はジョン・ウィリアムズが担当しているが、随所にクラシック音楽を使っているのはハマっていて良かった
   ぞ。トム・クルーズも良い味を出せたと思う。

94.エトワール TOUT PRES DES ETOILES (2000年仏) <3.5>        
 [監督]ニルス・ダヴェルニエ
  [出演]マニュエル・ルグリ、ニコラ・ル・リッシュ、オーレル・デュポン、ローラン・イレール
  [時間]100分
 [内容]300年以上の歴史を誇るパリ・オペラ座。そのバレエ団は、“星”を意味するエトワールと称される最高位のダンサ
    ーを頂点にし、プルミエ・ダンスール、スジェ、コリフェ、カドリーユと続く厳格な階級社会だ。最初はカドリーユから始ま
    り、ステップアップしていかねばならない。そんな残酷な生存競争に勝ち残るために、日々超人的な努力が要求される
    ダンサー達の様々な視点でのドラマを綴ったドキュメンタリー。
  [寸評]先日、TVで「劇団四季の舞台裏」というドキュメンタリーを見て厳しく過酷な競争の世界を感じさせられたが、本作
    品もダンサー側の視点に立つ形で、彼等の人生観、結婚や出産への思い等を様々な視点で描かれており、華やかな
    舞台の裏側の厳しい現実を存分に認識させられる。最近、「NHKスペシャル」「WBSサテライト」「ガイヤの夜明け」等で
    ビジネスに取り組む”プロ”のドキュメンタリーをよく見るのだが、本当に自分の姿が恥ずかしくなる。映画のDVDの特典
    映像にはメイキングがよく収録されているが、それには製作スタッフの苦闘の姿が描かれており、本編より面白く感動
    する事が多い。本作品のように”作品自体がドキュメンタリーな内容の物”も今後の鑑賞アイテムに極力取り入れてい
    こうと思う。

95.サイダーハウス・ルール THE CYDER HOUSE RULES (1999年米) <3.5>        
 [監督]ラッセ・ハルストルム
  [出演]トビー・マグワイヤ、シャーリーズ・セロン、マイケル・ケイン、デルロイ・リンドー
  [時間]131分
 [内容]田舎町の孤児院で産婦人科医の院長ラーチに育てられたホーマーは分娩と堕胎の仕事を手伝っていた。当時、
    堕胎は違法であったので、ホーマーは「女性を結局は救う事になる」と主張して堕胎を執行するラーチに反発を感じて
    いた。ある日、堕胎手術にやってきたキャンディと彼女の恋人に刺激され、ホーマーは孤児院を出る事を決意する。
    そしてキャンディの恋人の実家のリンゴ園で働く事になった・・・    
  [寸評]望まれなくして生を受けた孤児達、生まれる事すら望まれずに堕胎されてしまう僅かな生命・・・冒頭から重苦し
    いテーマが提示される。ホーマーの「生きている事自体が嬉しい」という言葉が印象的だ。ラーチ院長の様々な行為は
    法・規則に対しては罪なのだが、全て”愛情ありきの行為”で何とも言い難い。外の世界に出たホーマーは、そこでまた
    とんでもない罪に遭遇する。それこそ、とてつもない罪であり、彼はラーチ院長の心情を汲み取れる事になる。そんな
    ホーマーもある面で罪な行為をするのだが・・・ ともかく本作品は”罪”について描かれた内容だ。ソフトなタッチで淡々
    とはしているが心温まる人間ドラマである。主演のトビー・マグワイヤは本作品の方が「スパイダーマン」より古いのだ
    が、「彼は実はスパイダーマン!」的な見方をしてしまうね。確かに独特な雰囲気はあるな。