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33.折り梅 (2001年日) <4.5>        
 [監督]松井久子
  [出演]原田美枝子、吉行和子、トミーズ雅、加藤登紀子、乾貴美子、田野あさ美、三宅零治
  [時間]111分
 [内容]愛知県豊明市に住む菅井巴はサラリーマンの夫・裕三と中学生の娘と小学生の息子と4人暮らしで、パートに出る
   主婦。高浜市に一人暮らししている裕三の母・政子を引き取る事にした。しかし、同居して3ケ月後に政子が変調をきたし
   始める。毎朝、シーツを破りとって雑巾を縫って、巴に渡したり、突然、巴を罵倒したりする。病院で診察を受けた結果、
   「アルツハイマー型痴呆症」と診断された。パートを続けたい巴はヘルパーを雇うも上手くいかず、理解のない夫との関係
   も険悪になっていく。一方、政子も言い知れぬ恐怖とやり場のない苛立ちが募っていく・・・
  [寸評]豊明市の主婦の小菅もと子が痴呆症になった姑との関係を綴った手記『忘れても、しあわせ』を松井久子監督が映
   画化。ロケも豊明・犬山・高浜で行われており、「ここかあ!」と分かる場所もあったし、ビックリしたのは家の近くの国道
   や義妹の勤務先が出てきた事。痴呆症になった姑と嫁との関係を中心に描いたファミリー・ドラマで非常に良い作品だっ
   た。吉行和子は私には「金八先生」初期シリーズの温かい先輩先生(かつ金八先生の下宿先の娘)という印象が強く、
   「もう、こんな痴呆症の役を演じるのか!」と妙な気分ではあるが、彼女の演技は特筆・絶賛モノだ。原田美枝子も素晴ら
   しい。この二人が軸に話が進むので、特に夫役のトミーズ雅の演技は妙に軽い感じがして浮いたような感がする。
   私と妻の双方の両親、そして私達自身だって、痴呆症にならないなんて保証はない。その時は立ち向かっていかなけれ
   ばならない。では、どうやって・・という関心から本作品を観たのだ。我が家は両親と同居をしている事もあり、どうしても
   姑(政子)と嫁(巴)の姿を、妻と母の姿に置き換えてしまい、そんな時、自分はどう対応するんだ?なんて思案しながら
   深刻に感じ入って観てしまった。愛知県では名古屋のシルバー劇場のみの上映で観客層は、これから介護されそうな
   50代〜の夫婦・主婦が圧倒的に多かった。あちこちでススリ泣く声が聞こえた。この人達は近い将来に不安を覚えている
   のだろうか?生意気な言い方かもしれないが、この作品はもっと多くの劇場で公開して、私達のような所帯を持って、親を
   面倒みていかなければならなくなる世代が中心に真剣に観て思案すべきでないだろうか。

34.LIES/嘘 LIES (1999年韓) <1.5>        
 [監督]チャン・ソヌ
  [出演]キム・テヨン、イ・サンヨン、チョン・ヘジン、ハン・クァンテク
  [時間]108分
 [内容]一組の男女の倒錯した愛の姿を描いて韓国のみならず世界各国で賛否の渦を巻き起こした問題作。(内容は
   書くのが恥ずかしい−韓国の発禁小説を映画化したもの−)
  [寸評]近隣にレンタル店がオープンし、オープニング記念で1円/本で借りられる期間があった。「TSUTAYAシネマハンド
   ブック」の「レディが好むお洒落なムービ−」のコーナーに本作品が取り上げられていた事から興味本位もあり、1円で借
   りて(極々普通の作品と一緒に置いてある)拝見。感想は「う〜ん・・・」としか言いようがないのと、私には、その手の関
   心もないから、主役の男女の気持ちも分からない。只、男女が頻繁に「愛している」と口走るが、本当かなあ?何を持って
   あんなに簡単に口走れるのかなあ?作品のタイトルの「嘘」というのは、最後に意味が分かる。見る前から期待はしてい
   なかったけど、ある面ではビックリするところもある。まあ、1円の支払いだから良しとしよう。

35.友へ チング CHINGU (2001年韓) <3.5>        
 [監督]クァク・キョンテク
  [出演]ユ・オソン、チャン・ドンゴン、ソ・テファ、チョン・ウンテク、キム・ボギョン
  [時間]118分
 [内容]1976年の釜山。仲良く遊ぶ4人の小学生。ヤクザの息子ジュンソクは口下手だが喧嘩が強く友達思いで仲間の信
   望も厚い。葬儀屋の息子ドンスも喧嘩っぱやい。そして優等生のサンテクとお調子者のジュンホ。4人は幼なじみの親友
   であった。中学は皆各々別のところに進むが、高校で再び顔を合わせる。しかし、4人で一緒にいても昔のようにはしっく
   りいかなかった。そんな時、ある事件を契機にジュンソクとドンスが退学処分になってしまう・・・
  [寸評]様々な要因があり、嬉しい事に妻と二人で久々に劇場で鑑賞(レイトショー)。”チング”とは漢字で「新旧」と書いて
   「長く親しい友」という意味だ。クァク・キョンテク監督は1966年生まれで私と全く同じ年で、物語の4人も私より1歳上の設
   定である。日本と韓国と国こそ違うが、同世代が製作し、4人も同じ時代を生きているし、私も過去に釜山も訪れた事もあ
   るので、何か親近感を感じさせてくれる作品だ。「友情」に主眼を置いた人間ドラマ。ジュンソクとドンスがヤクザの道を
   歩むので「R‐15指定」になる程、血生臭い場面もある。ジュンソクが指示をしたか否かの真実は明確にされないのが、欲
   求不満であるが、否である事を信じたいねえ。良い作品とは思うが、4人の中で、お調子者のジュンホの存在が宙に浮い
   ており、彼をしっかり描けば物語の厚みを増しただろうに残念な気もした。ジュンホが同世代の俳優;高嶋政伸とソックリ
   で笑ってしまったのだが・・・。韓国の映画は人間ドラマを結構上手く作ると思う。日本映画も負けていられないぞ!

36.あの頃ペニー・レインと ALMOST FAMOUS (2000年米) <4.0>        
 [監督]キャメロン・クロウ
  [出演]ビリー・クラダップ、フランシス・マクドーマンド、ケイト・ハドソン、パトリック・フュジット
  [時間]123分
 [内容]厳格な母親に育てられたウィリアムは15歳。家を出た姉の影響でロックを聴き始めるようになった彼はロックの世界
   に没頭していた。ある日、尊敬するロック・ライターのレスター・バンクスに評論の原稿を送り、その文才にレスターは目を
   つけ、ウイリアムにライターとしての仕事を与え、心得等のアドバイスをおくる。やがて、ウイリアムは自称「ロック・バンド・
   エイド(支える存在)」という魅力的な女性;ペニー・レインと出会う・・・
  [寸評]「ザ・エージェント」のキャメロン・クロウ監督が自らの若き日々の姿を投影した作品。私はロックの世界は無縁なの
   で、ロックに関心が強いと作品に対する思い入れは変わってくるのかもしれない。そうは言っても見終わった後に心地良
   い気分にさせてくれる優しい感じの作品である。派手な起伏はなく、淡々とはしているが、15歳の時代を回顧していて良
   い話だ。私の15歳の時とは比較にならないような体験をしていて羨ましい。ペニー・レインはロック・バンド・エイドといいな
   がら、グルーピーと実際は何ら変わらない。彼女のような女性は米国のみならず日本にでも多くいた(る)のでしょう。
   15歳の時に身近に、そんな女性がいたら,憧憬していたのかなあ?この作品で好きな場面はウイリアムとロック・メンバ
   ーが搭乗していた小型飛行機が気流にのまれて危機になった時に、皆各自がドサクサにまぎれて本音を言いまくるとこ
   ろ。私の親しい仲間でも、知らざれる一面・内に秘めた本音があるのだろうな・・・