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29.北京的西瓜 (1989年日) <3.5>        
 [監督]大林宣彦
  [出演]ベンガル、もたいまさこ、柄本明、峰岸徹、林泰文、天宮良
  [時間]135分
 [内容]1987年。千葉県船橋市の郊外にある小さな八百屋「八百春」に中国人留学生が野菜を買いに来る。店主の春三
   に留学生は「僕達は1ケ月を8万円で過ごさねばならない。日本の野菜は高いな・・・」と嘆く。そんな事から春三は、中
   国人留学生達の世話をやたら焼くようになる。仕事をも犠牲にし、息子の自転車や妻のネックレスを黙ってあげたり、
   身元保証人を引き受けたり・・・。家族も八百屋の経営も省みない春三に妻子は不満を募らせていくのだが・・・
  [寸評]実話に基づいた内容のようで、本作品の撮影中に天安門事件が起きて、中国での撮影が出来なかった。深い意
   味で途中の37秒、空白のシーンがある。大林監督らしいテンポで人の良い八百屋の夫婦と中国人留学生達との心温ま
   る交流を描いた作品。春三は限りなく人が良く、無鉄砲に中国人のために尽くし、家族や周囲からも顰蹙を買う。それで
   も最後は非常に報われてしまう、という幾分作りすぎな感もするが、私は結構、こういう人がいる事は喜ばしい事かと思
   う。「人間、誠意を尽くして行動すれば国境を越えても、人の心にしっかり残る」というメッセージを発しているのでしょう。
   私は1989年3月(天安門事件の3ケ月前)に中国を放浪してきたため、中国には妙な感慨を感じるが、実際、中国人は
   本作品の感じなのかな(ある面、図々しい。義を重んじる)。旅の道中で色々な人に遭遇したからなあ・・・
   ※話の中で父と子が取っ組み合いの喧嘩をする場面があり(店の経営を省みず、母に負担をかける父に息子が激怒)、
   それを観た二太郎が「喧嘩はよくないよねえ。お父さん!」と私に語った。「そうだね。二太郎。いかんよな」と答えたもの
   の、何年か後に、この可愛い二太郎とも取っ組み合う事もあるのかな?

30.ビューティフル・マインド A BEAUTIFUL MIND (2001年米) <4.0>        
 [監督]ロン・ハワード
  [出演]ラッセル・クロウ、ジェニファー・コネリー、エド・ハリス、ポール・ベタニー
  [時間]136分
 [内容]1947年9月、プリンストン大学院の数学科に入学を果たしたジョン・ナッシュは「この世を支配する独創的な真理
   を見出す」という思いを秘め、授業にも出ず、本も読まず(誤った説を吸収する事になり、時間の無駄という考え)、周
   囲から変人扱いされながら一人研究に没頭する。斬新な理論をあみ出したナッシュは、教授に認められ、MITのウィー
   ラー研究所にも採用され、愛する女性アリシアと結婚する。彼は結婚前から、米ソ冷戦下の中で、ソ連のある情報を
   得るために、「暗号解読」という極秘任務を担っていたのだが・・・
  [寸評]2001年アカデミー賞で最優秀作品・監督・助演女優・脚色の4部門を受賞した作品。いかにもアカデミーが好む
   人間の内面や葛藤を描き出したドラマだ。天才数学者が精神分裂病に悩まされながらも、温かい妻の支えもあり、ノ
   ーベル賞を受賞するまでの姿を描く。天才がゆえの悩み、精神分裂病との戦いと克服、献身的な妻の姿が見所でしょ
   う。ラッセル・クロウの今回の狂人を演じる姿は「グラディエーター」「インサイダー」より、インパクトがあった。但し、
   それ以上に、(すっかり忘れかけていた)ジェニファー・コネリーが非常に良い味を出していたと思う。普通だったら逃げ
   出してしまいたいような環境の中でも、しっかりと夫に献身する姿は美しいね。雄叫びのシーンが強烈だったなあ。
   最後にノーベル賞を受賞するのだが、「その功績が、どのように生み出されたのか」「激しかった幻覚症状をどのように
   抑制できるようになったか」、その過程を、もう少し描いてくれてもよかったような気がする。

31.柳と風 WILLOW AND WIND (1999年イ・日) <3.0>        
 [監督]モハマット・アリ=タレビ
  [出演]ハディ・アリプール、アミール・ジャファンダ、マジッド・アリプール
  [時間]85分
 [内容]イラン北部の村。クイチャキ少年は学校の窓を割ってしまったため、2週間ずっと授業を受けさせてもらえず、廊
   下で立たされ続けている。学校側は弁償してガラスを張り替えるまで、授業を受けさせないし、本日中に張り替えない
   なら学校に来なくてよい、と主張。クイチャキの父親は休みなく働いているが、ガラス代を工面できず、学校側にもかけ
   あってくれない。途方にくれるクイチャキだったが、何とか友人の父親にお金を借りてガラスを購入するが、その帰り道
   に台風と遭遇。果たして無事に学校にたどりつけるのか・・・
  [寸評]冒頭からクイチャキがガラス屋に行くまでの過程は淡々としているが、ガラスを担いで、台風の中を学校に向かっ
   ていく場面からは非常に緊迫感がある。何でこんな時に台風が来るんだよ、誰か助けてやれよ、何でもかんでも、この
   子に責任負わせたらいかんよ、とイライラしまくる。最後の最後まで少年が可哀相で、せめてハッピーエンドにしてほし
   かったのだが・・・。イランの風情なのか、その村の風情なのか分からないが、ガラスぐらい学校ですぐに張り替えて弁償
   させれば良いのに。授業を受けさせない、というのは義務教育ではないのかな?周囲の大人たちの冷淡さが際立って
   いて厳しい環境の中で生きていかねければならないクイチャキを憐れんでしまうばかりだった。

32.捜索者 THE SEACHERS (1956年米) <4.0>        
 [監督]ジョン・フォード
  [出演]ジョン・ウェイン、ジェフリー・ハンター、ヴェラ・マイルズ、ナタリー・ウッド
  [時間]119分
 [内容]南北戦争の3年後、イーサンは放浪の末に、兄の家に戻ってくる。久しぶりの再会を喜ぶのも束の間で、イーサン
   の留守中に兄一家はコマンチ一族に惨殺されてしまい、末娘のデビーだけは殺されずに連れ去られる。イーサンはイン
   ディアンの混血の青年マーチンと共にコマンチの捜索の旅に出る。何年もの間、捜索し、ようやくデビーを発見するが・・
  [寸評]スピルバーグ監督も絶賛していた通り、なかなか良く出来た西部劇だ。美しい映像と決して飽きさせない話の展
   開。イーサンを演じるジョン・ウェインが非常にしぶい。孤独な放浪者ぶりが十分出されていて、兄嫁と過去に何か訳あ
   りだった雰囲気を感じさせてくれたり、デビーに銃を向けたり、言葉に出さなくても目・表情だけで訴えてくる。捜索に同
   行したマーチンもなかなかの個性派で良かった。昨年観た「シャンハイ・ヌーン」でインディアン妻をめとらずを得ない場
   面があったが、この映画からのパクリ(参考?)だな。デビーは「ウエストサイド物語」のマリアだった・・・