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9.LOVE SONG (2001年日) <1.5>          
 [監督]佐藤信介
  [出演]伊藤英明、仲間由起恵、一條俊、原沙知恵、津田寛治
  [時間]100分
 [内容]1985年の北海道。尾崎豊の「十七歳の地図」というアルバムをきっかけに知り合った高校一年生の彰子とレコード
   店の店員・松岡。好きなレコードだけを集めた店を開く事が夢だと語る松岡に彰子は、ほのかな憧れを感じる。しかし、間
   もなく松岡はレコード店をやめて、夢の実現のために、東京に引っ越してしまう。2年後、松岡が仲間と店を開いている、
   という情報を得た彰子は友人・哲也と東京に向かう。店を探し当てたが、既に潰れてしまっていた・・・
  [寸評]尾崎豊の「OH MY LITTLE GIRL」「FORGET-ME-NOT」がテーマ曲。内容的にも尾崎豊をモチーフにしたものかと
   思いきや、彼のアルバムを通じて知り合ったという程度で意外に関与していなかった。インパクト・内容的にも、ぼやけた
   イマフタツ・ミッツという感じ。舞台は1985年と1987年だが、松岡のような感じの人は現在、結構多いのだろう。現状の世
   相を、ある意味では写し出しているのかもしれない。彼のセリフで印象深いのは「夢で食っていくか。それは甘いか・・」。
   その言葉をしっかりと実践しているイチロー等は本当に凄い。この作品では尾崎豊の曲は先の2曲しか使われなくて、他
   の幾つかの曲が使われていた。内容が陳腐なだけに、どうせなら尾崎豊の曲を全編に渡って使えば良かったのに・・・。

10.息子の部屋 LA STANZA DEL FIGILO (2001年伊) <3.5>          
 [監督]ナンニ・モレッティ
  [出演]ナンニ・モレッティ、ラウラ・モランテ、ジャスミン・トリンカ、ジュゼッペ・サンフェリーチェ
  [時間]99分
 [内容]精神科医のジョバンニは妻パオラ、高校生の娘イレーネ、息子アンドレアと平和に暮らしていた。ジョバンニは最
   近、アンドレアの様子が何か変だ?と感じ始めていた。そんなある日曜日にジョバンニはアンドレアとジョギングの約束
   をしていたが、急に患者から連絡が入り、往診に出てしまう。しかし、アンドレアは友人達と海へダイビングに行くが事故
   で溺死してしまう。家族は驚き、悲しみに暮れる。ジョバンニは自責の念にかられ、仕事も集中できなくなっていく・・・
  [寸評]2001年カンヌ映画祭でパルムドール(最優秀作品)賞を受賞した作品。涙溢れる感動の物語かと構えて臨んだ
   が、静かに優しく、しんみりと胸を打たせる内容であった。愛する家族の一員が一人でも欠けたら、絶望し、自責の念で
   悩みまくるだろう。私は登場人物に感情移入する事に非常に抵抗し、何か心の中で格闘していた。息子には実はガール
   フレンドがいて、息子の死を知った彼女が訪ねて来て、家族と一緒にドライブする事から、家族は微かな立ち直りの兆し
   を感じる・・・そんなラストの海岸の景色・家族の姿がしんみりと心に焼きついた。ガールフレンドはボーイフレンドと一緒に
   ヒッチハイクのついでに訪ねて来たのだが、欧州(+米国)の風習なのだろうか。日本映画だったら、必ず一人で現れる
   んだろうが・・・。この作品は人間ドラマとして秀作とは思うが、愛する家族を持つ私には辛い作品でもあった。

11.地獄の黙示録-特別完全版- APOClYPSE NOW REDUX (2001年米) <5.0>          
 [監督]フランシス・フォード・コッポラ
  [出演]マーロン・ブランド、ロバート・デュバル、マーティン・シーン、デニス・ホッパー、ハリソン・フォード
  [時間]203分
 [内容]ベトナム戦争の真っ只中のサイゴンで、アメリカ陸軍情報部のウィラード大尉に密命が下される。数々の輝かしい
   キャリアを投げうって特殊任務に就いたカーツ大佐が戦線を離脱し、カンボジアに自らの王国を築いてカリスマ的な存
   在になっていた。アメリカ軍はカーツを危険人物とみなしており、ウィラードへの密命とは「カーツを暗殺する事」である。
   ウィラードは4人の若い部下と共に哨戒艇に乗り込み、川をさかのぼっていく。道中、極限状態にさらされた彼らは幾つ
   かの異常な世界を体験する・・・
  [寸評]1979年に公開された作品にコッポラ監督自ら編集を手がけ、53分の映像が追加された「特別完全版」。私はオリ
   ジナル版を観ていないので、どこが追加されたのかは分からない。この作品は戦争に身を投じた人間が陥る狂気・混沌
   を全編に渡って描き出す衝撃的な内容で、劇場で「鑑賞した」というより、「体感させられた」感じだ。20歳の時に本作品
   と同じベトナム戦争が舞台の「プラトーン」を観て、かなりの衝撃を受けたが、ひたすら狂気・混沌を全面に押し出す本作
   品の方がインパクトは強い感じがする。もし20歳の時にオリジナル版を観ていたら、どのように感じていただろうか?
   カーツ(あのハンニバル博士以上だ!)やキルゴア、プレイメイト達も昔だったら、「ただの狂人・変な奴」としか思わなか
   ったろうが、年取った分、ああなるのも分かるような気がする。本作品は「面白い」というには語弊があるが、一度は味わ
   うべき傑作でしょう。ただし、劇場で観るにしろDVD/VHSで観るにしろ、物を食べながら観るのは、やめた方が良いで
   すよ。当面、私の頭の中にはワーグナーの音楽が鳴り響き、あの「牛のシーン(やめてほしかった)」がこびりつくのでし
   ょう。※黙示録・・・隠された心理の開示であり、聖書に書かれた世界の終末と新生の思考。

12.メトロポリス (2001年日) <3.0>          
 [監督]りんたろう
  [出演](声)井元由香、小林桂、冨田耕生、石田太郎
  [時間]107分
 [内容]人類とロボットが共存する巨大未来都市・メトロポリス。その繁栄は高度に発達した科学文明を享受する地上都市
   と、取り残された貧困にあえぐ地下都市から成り立っていた。そのメトロポリスに探偵;伴俊作と甥のケンイチが訪れる。
   彼らは臓器密売と違法な人体実験で国際手配されているロートン博士を探し出す、という密名を受けていた・・・
  [寸評]原作は手塚治虫。久々に手塚作品のアニメーションを拝見した。馴染みの手塚キャラクターが登場し、アニメー
   ションの高等技術を存分に駆使した美しい映像を見せてくれる。「過度の機械文明への警鐘」「ロボットは感情を持てな
   いのか」というメッセージを発しているのだろうが、物語事体の中味は、今一つ釈然としない箇所もあり、色々なエピソー
   ドを詰め込んで各々が薄いため、焦点が不明確になった感じがする。手塚治虫の漫画は非常に好きで幾つか読んだ
   が、「メトロポリス」は未だ読んでいない。またの機会に読んでみよう。