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46.ブレードランナー ファイナル・カット BLADE RUNNER: THE FINAL CUT (2007年米)<3.5> 
 [監督]リドリー・スコット
  [出演]ハリソン・フォード、ルドガー・ハウアー、ショーン・ヤング、エドワード・ジェームズ・オルモス、ダリル・ハンナ
  [時間]117分
 [内容]舞台は、超高層ビルが林立し、酸性雨が降り注ぐ2019年のロサンゼルス。宇宙で奴隷労働に従事していた数体の
   人型ロボット=レプリカントが、反乱を起こして地球へ密航してきた。彼らの捕獲を依頼された“ブレードランナー”デッカー
   ドは地球に潜入したレプリカント達を追うが……。
  [寸評]リアルでダークな終末観を提示した近未来像でカルト的な人気を博したリドリー・スコット監督によるSF映画の金字
   塔と称される「ブレードランナー」。これまでにもいくつかのバージョンが存在した同作だが、本作「ファイナル・カット」は、
   製作25周年となる2007年にリドリー・スコット監督が自ら新たに再編集したバージョン。1992年の『ディレクターズカット/
   最終版』を基本に、再編集やデジタル修正を行い、美しい映像でよみがえらせた。以前、レンタルビデオで鑑賞した事が
   あるが、ファイナル・カット版が特典付でDVDで発売されたので購入して(久しく眠っていたが)拝見。最初に製作されたの
   が1982年で作品の舞台を2019年に設定しているが、今から9年後を考えると、映画の世界には至らないだろうね。近未来
   感の描写の仕方には関心するが、特に前半は観る人によってはだるく感じるかもしれない。この作品は凄いアクションや
   スリリングな場面がある訳ではない。ただ最後のレプリカントのロイとの会話に重み・斬新さを感じさせてくれる。ロボットか
   ら生命の尊厳さを改めて認識させられるのだ。好みは分かれるのだろうが、よくよく味わって鑑賞すべき作品かと思う。
   
47.オカンの嫁入り (2010年日)<4.0> 
 [監督]呉美保
  [出演]宮崎あおい、大竹しのぶ、桐谷健太、絵沢萌子、林泰文、國村隼、友近、斎藤洋介
  [時間]110分
 [内容]父の顔を知らずに生まれた月子は、母の陽子と2人で支え合って生きてきた。そんなある日、酔っぱらって真夜中
   に若い金髪の男・研二を連れて陽子が帰宅した。なんと翌朝、月子に“この人と結婚します”と言い放つ。あまりの唐突な
   母の行動に月子の不満は爆発し、勢い余って家を飛び出してしまう。家族同然の付き合いをしている大家のサクや陽子
   の勤務先の上司・村上は、そんな月子をなだめようとするのだったが…。
  [寸評]監督は「酒井家のしあわせ」の呉美保で、原作は第3回日本ラブストーリー大賞でニフティ/ココログ賞を受賞した咲
   乃月音の同名小説。ひと回り以上も年の離れた男性と突然の結婚宣言した母と、そんな母に戸惑い反発してしまう娘が
   繰り広げる切なくも心温まる人間模様を綴った内容。公開されるまでノーマークでいたが、WEBの映画評等を目にして関
   心を持ち、有休の日に青春18切符の残りで宇治市(京都)に行こうと思っていたのを取りやめたので、本作品を鑑賞した。
   お互いに不器用な母と娘が各々ぎこちない動きをするので、前半はややいらいらする感じもするが、後半は思わぬ事実が
   発覚し、じわっと心にしみる展開になる。オジバカであるが、姪(幼稚園)が何となく宮崎あおいの雰囲気に似ているので
   姪の事も思いながら観ていた。何よりも娘を思い、母として頑張ってきた、しかし、亡くなった夫を思いながらも、一人の
   女性でもあった。娘にとっては母は母なのだ・・・そんな葛藤のしあいが共感でき、白むく姿で母が娘に語る言葉には感動
   させられる。娘に強く生きる事も説くのだ。全般的に淡々としながらも観終わって良かったと思える作品です。

48.悪人 (2010年日)<4.5> 
 [監督]李相日
  [出演]妻夫木聡、深津絵里、岡田将生、満島ひかり、井川比佐志、宮崎美子、樹木希林、柄本明
  [時間]139分
 [内容]清水祐一は長崎のさびれた漁村に生まれ、自分勝手な母に代わり、引き取られた祖父母に育てられた。現在は、
   土木作業員として働き、年老いた祖父母を面倒見るだけの孤独な日々を送っていた。そんなある日、出会い系サイトで知
   り合った福岡の保険外交員・石橋佳乃を殺害してしまった。ところが、捜査線上に浮上してきたのは福岡の裕福なイケメ
   ン大学生の増尾圭吾だった。苦悩と恐怖を押し隠し、いつもと変わらぬ生活を送る祐一のもとに、一通のメールが届く。そ
   れは、かつて出会い系サイトを通じてメールのやり取りをした事のある佐賀の女性・馬込光代からのものだった。紳士服
   量販店に勤め、アパートで妹と2人暮らしの彼女もまた、孤独に押しつぶされそうな毎日を送っていた。そして、話し相手を
   求めて祐一に久々のメールを送った。やがて、2人は初めて直接会う事に…。
  [寸評]芥川賞作家・吉田修一の同名ベストセラーを「フラガール」の李相日監督が映画化したヒューマン・ミステリー・ドラ
   マ。長崎の漁村で孤独な人生を送り、ふとした事から殺人者となってしまった不器用な青年と、そんな男と孤独の中で
   出会い、許されぬ愛に溺れた女が繰り広げる出口のない逃避行の顛末を、事件によって運命を狂わされた被害者、加害
   者の各々を取り巻く人々の人間模様とともに綴った内容。原作を2年前に読み、とても良くできた作品で、もの哀しい内容
   であったので期待と不安を持って妻と鑑賞したが、さすがは「フラガール」の李相日監督。上手くまとめられていた。深津
   絵里が「第34回モントリオール世界映画祭」で最優秀女優賞を獲得して話題になったが、彼女の演技も秀逸である。特に
   目で感情を上手く表しているのが良い。樹木希林や柄本明も非常に好演しているし、妻夫木聡も今までと全く異なる役柄
   を真摯に取り組んでいた。事件を冒した加害者が悪人とされるが、本作品では色々な悪人が描かれ、一体誰が本当の
   悪人なのかを問いかける。柄本明演じた石橋佳乃の父親の行動も娘を純粋に想えばこその行動だが、彼女の行動の真
   実を知っていたらどうなるのか?彼女を育てた自分こそが・・なのだろうか?という堂々めぐりになる気がする。もの哀し
   い内容だが、ある面、現代の世相をも反映した秀逸の作品かと思う。石橋佳乃の父親の語る「その人の喜ぶ姿等を想像
   するだけで楽しい気持ちになれる、そんな大切な人がいますか?」には私は即答で「はい」と答えられる。感謝して生きて
   いかないとね・・・

49.グラン・ブルー−完全版− LE GRAND BLEU: VERSION LONGUE (1988年仏・伊)<3.0> 
 [監督]リュック・ベンソン
  [出演]ロザンナ・アークエット、ジャン=マルク・バール、ジャン・レノ、ボール・シェナー、グリフィン・ダン
  [時間]169分
 [内容]ジャックとエンゾは、ギリシャの島で幼なじみとして育つ。やがて2人は成長し、コート・ダジュールで20年ぶりに再会
   した際、エンゾはイタリアのシチリアで開催されるフリーダイビング大会に参加するようジャックに伝える。同じ頃、アンデ
   スで偶然ジャックと出会ったジョアンナも、出張を口実にしてニューヨークからシチリアにやって来る。
  [寸評]「TAXI」「トランスポーター」「96時間」等のヒット作を手掛けたリュック・ベッソン監督の原点ともいえる、スキューバ
   の道具を用いずに海に潜るフリーダイビングにすべてを賭けた2人の幼なじみの友情と、彼らと運命的な出会いを果たす
   女性の絆を綴った作品。ムービープラスで放映されたので録画して鑑賞したが、海の映像は劇場の大画面で観れば、
   もっと美しくて受けるインパクトもTV画面とでは異なるかもしれない。しかしながら、私はどうしてもジャックの生き様に
   共感する事ができない。おしかけるジョアンナにも好感は持てないが、「愛している」と言い、妊娠させながら、更に海に
   潜ってイルカとたわむれる・・・夢を追い求め続ける大人になりきれない幼児性を持ち続ける男性のドラマなのだ。最後
   に「愛する娘に捧げる・・・」と表示されたので、彼はどういう対応をしたのだろうか?本作品の名前はよく耳にしていたの
   で期待して観たが、ストーリー展開は決して悪くはないものの、何か納得できない内容だった。

50.おっぱいバレー (2008年日)<3.5> 
 [監督]羽住英一郎
  [出演]綾瀬はるか、青木崇高、仲村トオル、石田卓也、木村遼希、光石研、田口浩正、市毛良枝
  [時間]102分
 [内容]1979年の北九州が舞台。中学校の新任国語教師・美香子は、男子バレー部の顧問を任されるが、そこに待ってい
   たのは、バレーボールすらまともに触ったことのないやる気ゼロのダメ部員達だった。彼らのやる気を引き出し、廃部寸
   前のバレー部を何とか立て直そうとする美香子だったが、ひょんな事から“試合に勝ったら、おっぱいを見せる”という、
   とんでもない約束をさせられるハメになる。おっぱいを見せるなんて絶対無理と思いながらも、別人のようにやる気を見せ
   始めた彼らと、美香子は日々の練習を通じて次第に信頼関係を築いていく。そんな矢先、“おっぱいの約束”が学校で大
   きな問題となってしまう・・・。
  [寸評]実話を基にした水野宗徳の同名青春小説を綾瀬はるか主演で映画化した作品。70年代後半の中学校を舞台に、
   新任女性教師の成長と彼女のおっぱい見たさに見違えるように練習に励む弱小男子バレー部員達の奮闘をさわやか
   に綴った内容。綾瀬はるかは好感が持てる女優でタイトルは妙だが本作品は公開時から関心があった。近所のレンタル
   店で準新作が100円だったのでDVDをレンタルして鑑賞。これまでぐうたらなバレー部員達が動機は不純であれ、はり
   きって努力する様は良いものだ。人は強制されてがんばるのでなく、自らをふるい立たせる目標を持って邁進する事が
   大切だという事が伝わる。綾瀬はるかの美香子役はハマリ役だと思う。約束事が広まってしまったため、憂き目にあう
   のが気の毒だが、生徒と一緒に汗をかく先生はよいね。1979年は私が中学1年生で本作品の時代と重なり、懐かしさも
   感じた。斬新な展開がある訳ではないし、美香子の事を考えると気の毒な感がしたが、楽しめる内容だった。
   
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