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11.未来を写した子どもたち BORN INTO BROTHELS: CALCUTTA'S RED LIGHT KIDS
(2004年米)<3.5>
[監督]ロス・カウフマン、ザナ・ブリスキ
[出演]インド・カルカッタの子供達
[時間]85分
[内容]インド・カルカッタの巨大な売春窟には売春婦だけでなく、そこで生まれた多くの子供達がいた。彼らは、売春婦で
ある母親の手伝いをし、女の子であれば一定の年齢に達すると自らも客を取らされるようになる。彼らのほとんどは一生
を、この売春窟の中だけで暮らし、未来に夢や希望を持つことを許されない過酷な運命にあった。ニューヨークで活動す
るフォトジャーナリスト、ザナ・ブリスキは、1998年からこの売春窟での取材を開始し、子どもたちの悲惨な現実を目の当
たりにする。そんな中、子どもたちがカメラに興味を持つことに注目した彼女は、彼らにインスタントカメラを買い与え、写
真教室を始める事を思いつく。カメラを手にした子どもたちは、表現することの喜びを知ると共に、中にはプロ顔負けの素
晴らしい才能を発揮してみせる子どもも現われる。こうして始まった彼女の活動は、やがて子どもたちに初めて未来へ
の生きる希望をもたらした。
[寸評]本作品は、インドの売春窟の子供達に、その過酷な境遇から抜け出すチャンスを与えようと奔走するザナ・ブリスキ
の姿を追った衝撃のドキュメンタリーで2004年度のアカデミー長編ドキュメンタリー賞受賞をはじめ数々の映画賞を受賞
している。近所のレンタル店でミニシアター系のドキュメンタリー作品のコーナーが設けられていて本作品に関心を持ち
100円レンタルDVDで鑑賞。インド・カルカッタの裏社会に身を置く子供達の様子を写し、少しでもそんな彼等を明るい未
来へ導こうとするザナ・ブリスキの奮闘、子供達との触れ合いが描かれていて、ザナ・ブリスキの真摯な姿勢には敬服
する。子供達は辛い境遇にありながら、それでも親もかばい、責任感を持っていて、そんなに暗くない。一生懸命生き抜
こうとしている。正統なドキュメンタリー調で描写が展開されるが、人間誰でも才能を持ち、努力して前に進んでいく権利
はあるのだとしみじみと感じさせてくれる。
12.しあわせの隠れ場所 THE BLIND SIDE (2009年米)<4.5>
[監督]ジョン・リー・ハンコック
[出演]サンドラ・ブロック、ティム・マッグロウ、クィントン・アーロン、リリー・コリンズ、ジェイ・ヘッド
[時間]128分
[内容]夫と娘、息子の4人で幸せに暮らす裕福な白人家庭の夫人リー・アンは、ある凍てつくような真冬の夜に、ひとり寂
しくTシャツと短パンで歩いている巨漢の黒人少年に目を止め、声をかける。そして、マイケルと名乗るその少年を放って
おけなくなり、ひとまず自宅へ彼を招き入れる事にした。マイケルは父親の顔も知らずに育ち、母親とは引き離され、住む
場所や学校も転々とする劣悪な境遇に置かれていた。そんな彼に、はじめは憐れみだけを感じていたリー・アンだが、マ
イケルの瞳の中に輝きを見つけた彼女は後見人になると決心し、自分の部屋と教育の場を与え、改めて家族の一員とし
てマイケルを迎え入れるのだった。またリー・アンはある時、大柄でありながら敏捷な肉体と仲間を危険から守る保護本
能に秀でた心を持つマイケルにアメリカン・フットボールの才能を見出す。こうしてアメフトに取り組むマイケルはたちまち
その能力を発揮し、一躍注目選手として成長していくのだが…。
[寸評]一度はホームレスになるなど過酷な少年時代を過ごしながらも、ある家族との出会いによって自らの才能を開花さ
せ、ドラフト1巡目指名でNFLデビューを飾ったマイケル・オアー選手の感動の実話をサンドラ・ブロック主演で映画化し
た作品。映画の内容は冒頭からリー・アンを始め、家族の皆がマイケルに温かく接する。普通であれば家族の誰かが反
対したり、マイケルに邪険に接しがちなのに、絵に描いたように温かくて、S.Jやコリンズの接し方を見ていると微笑まし
い。余りに平和なテンポで進むが、後半に若干の波乱がある程度で、ハッピー・ストーリーを貫いている。エンド・ロール
に実際に受け入れた家族とマイケルの写真が幾つか写されるので本当に実話で、これだけの対応をしてあげる家庭に
尊敬するし、世の中捨てたものでないと思わせる。マイケルは幸運だったが、その反面、悲惨な生活を送り続ける黒人
達もいる。米国社会の表と裏も描写した感動作でアカデミーの作品賞、主演女優賞(サンドラ・ブロック)がノミネートされ
ている。まだ今後ノミネートされている作品が上映されるので他作品を観るのも楽しみだが、どうなるかな?この作品が
愛知県では2館でしか上映されないのは寂しい・・・
13.ハート・ロッカー THE HURT LOCKER (2008年米)<3.5>
[監督]キャスリン・ビグロー
[出演]ジェレミー・レナー、アンソニー・マッキー、ブライアン・ジェラティ、レイフ・ファインズ、ガイ・ピアース
[時間]131分
[内容]2004年夏、イラクのバグダッド郊外。アメリカ陸軍ブラボー中隊の爆発物処理班では、任務中に殉職者が出たた
め、ジェームズ二等軍曹を新リーダーとして迎え入れる事になる。こうして、サンボーン軍曹とエルドリッジ技術兵を補佐
役とした爆弾処理チームは、任務明けまで常に死の危険が孕む38日間を共にしていく。しかし、任務が開始されると、ジ
ェームズは遠隔ロボットを活用するなど慎重を期して取るべき作業順序や指示を全て無視し、自ら爆弾に近づいて淡々
と解除作業を完遂させる。任務の度に、一般市民かテロリストかも分からない見物人に囲まれた現場で張り詰めた緊張
感とも格闘しているサンボーンとエルドリッジには、一層の戸惑いと混乱が生じる。そして互いに衝突も生まれるものの、
ストレスを発散するように酒を酌み交わし、謎めいたジェームズの一面も垣間見る事で、3人は理解を深め結束していく。
しかしながら、やがて、任務のさなか度重なる悲劇を目の当たりにした事から、ある時ジェームズは冷静さを欠いた感情
的な行動に走り、3人の結束を揺るがす事態を招いてしまう・・・
[寸評]テロの脅威が続く混沌のイラク・バグダッドを舞台に、爆発処理チームのリーダーとして新たに赴任した破天荒な主
人公ら3人の兵士が尋常ならざるプレッシャーに晒されながら爆弾解除に取り組む様子を、徹底したリアリズムで生々し
くスリリングに捉えた作品。アカデミー賞の最優秀作品賞を「アバター」と一騎打ちの様相なので、授賞式の前日に本作
品を鑑賞した。(結果、本作品が最優秀作品賞となった)今までにない描き方でドキュメンタリータッチな感じである。メン
バー間で葛藤しあうものの、熱く濃い人間ドラマではない。爆弾が様々な仕掛けられ方をし、それに立ち向かっていく様
をひたすら描き、グロテクスな場面も多々でてくるので、本作品は好き嫌いが分かれるのではないか?現に私の横に
座っていた老夫婦はグロテスクさに耐え切れなかったのか、途中で離席して戻ってこなかった。こんな過酷で辛い現実
があるのだ、という事を認識できるだけでも有益といえると思う。オーソドックスに「アバター」かと思ったけど、内容の重
い本作品が最優秀作品賞でした。キャスリン・ビグローは最優秀監督賞も受賞。彼女の監督した「ハートブルー」を一
度レンタルDVDで鑑賞してみようかな。(ハリソン・フォード主演の潜水艦の「K19」を試写会で鑑賞したが、キャスリン・
ビグロー監督作品であった・・・)
14.シャーロック・ホームズ SHERLOCK HOLMES (2009年米)<3.5>
[監督]ガイ・リッチー
[出演]ロバート・ダウニー・Jr.、ジュード・ロウ、レイチェル・マクアダムス、マーク・ストロング、ケリー・ライリー
[時間]129分
[内容]19世紀末のロンドンが舞台。若い女性が次々と不気味な儀式を思わせる手口で殺される連続殺人事件が発生し
た。ロンドン警視庁も捜査に手こずる中、名探偵シャーロック・ホームズがこの難事件解決に立ち上がる。はたして、持
ち前の超人的な観察力や記憶力、推理力でたちまち犯人の居所を突き止めるのだった。しかし、その犯人である邪悪
な黒魔術を操るブラックウッド卿は、巨大な闇の力とのつながりをほのめかし、すぐ復活すると言い残して処刑される。
やがて、ブラックウッドが本当に甦ったとの報せが入る。そしてブラックウッドは、ある秘密組織の頂点に立ち、全世界
を支配するという野望の実現へ暴走し始める。ホームズはその邪悪な陰謀を食い止めるべく、相棒ジョン・ワトソンと
の名コンビぶりを発揮しながら、ブラックウッドを追跡するのだが…。
[寸評]世界一有名な私立探偵シャーロック・ホームズの活躍を、天才的な観察眼と推理力は武器に、相棒のジョン・ワト
ソンと共に、殺人鬼の画策する巨大な陰謀の阻止へ挑む様を描いた作品。小学校6年生の時に「シャーロック・ホーム
ズ」「怪盗ルパン」「明智小五郎」等の推理小説(子供向けに書かれたもの)を読んだので、”ホームズ!”と言うだけで
反応して鑑賞したくなってしまう。そんな訳で一姫二太郎が「ドラえもん のび太の人魚大海戦」を観る時間帯と本作品
(吹替版)の時間帯が合致したので妻と鑑賞した。今回のホームズは武闘派でジェームズ・ボンドみたいに素手等で
激しく格闘する場面があるし、ブラック・ユーモアをかましたり、何でもあり、というノリである。あのシーンは何だったの
か?と思うと、しばらくしてフラッシュバックして解説・謎解きする形をとっている。少しでも眠気が生じ、場面を見逃すと
???となるが、最後にはこういう事か!と分かるようにはなっている。ただアイリーンについてはよく分からないキャラ
だったな・・・。この作品はシリーズ化されるのか?最後は続編がある事を示唆していた感じがする。期待していたより
馴染み辛かったのが正直なところかな・・・
15.サマーウォーズ (2009年日)<3.0>
[監督]細田守
[出演]<声の出演>神木隆之介、桜庭ななみ、谷村美月、斎藤歩、横川貴大、信澤三恵子、富司純子
[時間]114分
[内容]仮想都市OZ(オズ)が人々の日常生活に深く浸透している近未来。小磯健二は天才的な数学の能力を持ちなが
らも内気で人付き合いが苦手な高校2年生である。彼は憧れの先輩、夏希から夏休みのアルバイトを頼まれ、彼女の
田舎である長野県の上田市を訪れる。そこに待っていたのは、夏希の親戚家族“陣内(じんのうち)家”の個性溢れる面
々だ。この日は、夏希の曾祖母で一族を束ねる肝っ玉おばあちゃん、栄の90歳の誕生日を祝うため、準備を皆で行って
いた。その席で健二は夏希のフィアンセのフリをする、というバイトの中身を知る事になる。そんな大役に困惑し振り回さ
れる傍ら、その夜、健二は謎の数字が書かれたケータイ・メールを受信する。理系魂を刺激され、その解読に夢中にな
る健二だったが…。
[寸評]気弱な理系少年の思いも寄らぬひと夏の大冒険を描くSF青春アドベンチャー。ひょんなことから片田舎の大家族と
夏休みを過ごすハメになった17歳の少年が、仮想空間に端を発した世界崩壊の危機に立ち向かう姿を家族の絆を軸に
アクション満載で描いた内容。今年の第33回日本アカデミー賞の最優秀アニメーション作品賞を獲得した事から関心を
持ち、レンタルDVDで鑑賞。春休みの妻子との旅行の時、宿舎で一姫二太郎と鑑賞(その間、妻は「新参者」を読書)し
始めたが途中で眠くなり、翌日、帰宅後、残りを鑑賞。(妻も別途鑑賞)一姫は本作品を旅行中に観れた事を非常に喜
んでいて、彼女によれば「現代風の作品」との事だ。仮想空間、ネットの世界での戦いと大家族の絆を描いていて、そ
れなりに飽きずに観られるが、細田監督の前作の「時をかける少女」同様、イマヒトツ馴染み辛かったのが正直な印象。
それは絵か雰囲気に起因するのか?一姫からしたら私は現代風から取り残されているかな?肝っ玉おばあちゃんが
健二の人間性を見て正統に評価する点は良かった。
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