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6.ゴールデンスランバー (2009年日)<3.5> 
 [監督]中村義洋
  [出演]堺雅人、竹内結子、吉岡秀隆、劇団ひとり、柄本明、ベンガル、大森南朋、伊東四朗、香川照之
  [時間]139分
 [内容]青柳雅春は仙台に暮らすごく平凡な30歳の独身男性。金田首相が凱旋パレードを行うその日、大学時代の同級生・
    森田に呼び出された彼は、“お前、オズワルドにされるぞ。とにかく逃げろ”と謎の警告を受ける。その直後、背後のパレ
    ード会場で爆発音がしたかと思うと、なぜか2人の前に警官が現われ、躊躇なく拳銃を向けられ、かつ森田が乗った車も
    爆破する。訳もわからぬまま反射的に逃げ出した青柳は、やがて自分が身に覚えのない証拠によって首相暗殺の犯人
    に周到に仕立てられていく事を大量のマスコミ報道で知る。青柳の元恋人で大学時代のサークル仲間でもある樋口晴
    子は、事件の報道に驚き、かつての仲間たちに連絡を取ろうとするのだが…。
  [寸評]2008年の“本屋大賞”や“山本周五郎賞”を受賞するなど各方面から絶賛された伊坂幸太郎の傑作ミステリーを映
    画化。仙台を舞台にして、ある日突然、見えない巨大な力によって首相暗殺の濡れ衣を着せられて追いつめられてい
    く一人の男が、かつての仲間達を始め、彼の無実を信じる人々の支えだけを頼りに、懸命の逃亡を繰り広げる姿を描
    いた内容。予告編を何度も観て、ミステリアスな雰囲気があるので強い関心を持って鑑賞。(同時期に封切される注目
    作品の「おとうと」「ラブリーボーン」より、まず本作品を観たかった)冒頭から、訳分からない内に事件に巻き込まれ、ひ
    たすら逃げまくる展開になる。一体どんな事が待ちうけ、どういうオチになるか、ワクワクしながら観られ、最後まで楽し
    めるのは確かだが、あの結末は評価が分かれるのではないかな?原作がどう描かれているか分からないし、原作通
    りと言われたら、それまでだが、巨大な何かを暴いてほしかったし、どうも私的にはスッキリしなかったな・・・青柳の両
    親や学生時代の仲間達が彼の事を心底理解し、支えているからよいのだけどね・・・。竹内結子の学生時代のショート
    カットは可愛らしかったし、堺雅人はノリにノっている。香川照之の演技も貫禄があり、迫真で上手い。
    
7.インビクタス/負けざる者たち INVICTUS (2009年米)<4.0> 
 [監督]クリント・イーストウッド
  [出演]モーガン・フリーマン、マッド・デイモン、トニー・キゴロギ、バトリック・モフォケン、マット・スターン
  [時間]134分
 [内容]1990年、アパルトヘイトに反対し27年間も投獄されていたネルソン・マンデラがついに釈放される。そして1994年、初
    めて全国民が参加した総選挙が実施され、ネルソン・マンデラは南アフリカ初の黒人大統領に就任する。しかし、アパル
    トヘイトの撤廃後も、白人と黒人の人種対立と経済格差は依然として解消されず、国家は未だ分断状態にあった。マン
    デラ大統領にとって国民の統合こそが悲願であり、自ら寛容の精神で範を示し、国民に和解と融和を呼びかける。そし
    て、翌1995年に南アフリカで初開催されるラグビーW杯を国民融和の絶好のチャンスと捉える。彼は、長らく国際試合か
    ら閉め出され弱小化していた代表チームのキャプテン、フランソワを官邸に招き、国を一つにまとめるためにW杯での優
    勝が欠かせないと訴えかける。戸惑いつつも、大統領の不屈の信念に心打たれたフランソワは、やがて誰もが不可能と
    考えた「優勝」を目指してチームを引っ張っていくのだが…。
  [寸評]巨匠クリント・イーストウッド監督が、アパルトヘイト(人種隔離政策)後の南アフリカで開催されたラグビーワールドカ
    ップを巡る実話を映画化したヒューマン・ドラマ。現在、一番素晴らしい映画を撮るといっても過言でないクリント・イースト
    ウッド監督とモーガン・フリーマンが組む、という事でかねてから注目して待ち望んでいた作品。妻と午後から劇場に行っ
    たが、行く車中で妻が非常に眠そうで、私は昨日よく眠れて快調だったので上映前に妻と私の席の間に、目覚ましアメ
    を置いて妻が眠らないよう配慮した。油断をしたのか平日の仕事の疲れが急に出たのか、睡魔が襲ってきて、妻に起こ
    される始末(寝息をたてていたようだ・・・)。途中から持ち直して話は何とか掌握したが、細かい所まで頭が回らなかっ
    た。アパルトヘイト撤廃後も人種間対立が残る中、国民が一つにまとまる大きな転機となった自国開催のラグビーW杯
    での奇跡の初優勝までの道のりを、ネルソン・マンデラ大統領と代表チーム・キャプテンを務めたフランソワ・ピナール選
    手との間に芽生える絆を軸に描いた内容で、指導者として「強い信念」「リーダーシップ」「寛容な心」がいかに重要かを
    感じさせてくれた。妻が言うには各人物をアップした撮影して心情を上手く見せていたとの事・・・・不覚な事にそこまで感
    じ取れず、DVD(BD)が出たら、じっくり再見してみようと思う。今回の評価は不完全燃焼のもので良い状態で観ていれ
    ば、もっと高いのかも・・・

8.おとうと (2009年日)<4.5> 
 [監督]山田洋次
  [出演]吉永小百合、蒼井優、笑福亭鶴瓶、加瀬亮、小林稔持、笹野歴史、小日向文世、石田ゆり子、加藤治子
  [時間]126分
 [内容]東京で薬局を営む高野吟子は、夫を早くに亡くし、女手ひとつで一人娘の小春を育ててきた。その小春もエリート医
    師との結婚が決まり、喜びもひとしおだった。ところが、式の当日、音信不通だった吟子の弟、鉄郎が突然羽織袴姿で
    現われた。酒癖が悪く、たびたび問題を起こして家族の鼻つまみ者だったので披露宴の参列をためらったものの、吟子
    は参列させた。周囲の心配をよそに、またしても酒をあおって大暴れ、大事な披露宴を台無しにしてしまう。誰もが激怒
    する中、それでも鉄郎をかばってしまう吟子だったが…。
  [寸評]名匠・山田洋次監督の10年ぶりの現代劇となる家族の絆の物語。しっかり者の姉と問題ばかりを起こしてきた愚か
    な弟が繰り広げる再会と別れを描いた内容。私は「男はつらいよ」は観ていないが山田洋次監督の「学校」シリーズが
    非常に好きで、今回の作品も良いキャストが揃っているし、内容にも興味があり鑑賞した。昨日、「インビクタス/負けざ
    る者たち」と同じ時間帯での鑑賞ゆえ、過ちを繰り返さないよう、しっかりとガムを噛んで鑑賞にのぞんだ。さすがにキャ
    ストが皆、人情味ある演技をして、その中でも鶴瓶の好演が際立つ。人間の本当の幸福とは何か?を様々な面から
    描写し、考えさせてくれる。どれだけ諍いを起こそうが、心配せずにはいられない姉の弟への眼差し、姉と弟の間の情
    感には感銘させられる。身寄りがなく行き場のない老人達を世話して看取る民間ホスピタルの人達の姿勢も感動的で
    世の中捨てたものじゃない、と思える。山田監督らしい、本当に良い作品だった。観客層は年配の方が大半だった。

9.マンデラの名もなき看守 GOODBYE BAFANA (2007年米)<3.5> 
 [監督]ビレ・アウグスト
  [出演]ジェセフ・ファインズ、デニス・ヘイスバート、ダイアン・クルーガー、パトリック・リスター
  [時間]117分
 [内容]1968年、アパルトヘイト政策下の南アフリカ共和国。黒人差別を当然のように受け入れていた白人男性のジェーム
    ズ・グレゴリーは、反政府運動の首謀者、ネルソン・マンデラの看守に抜擢される。マンデラと故郷が近く彼らの言葉で
    あるコーサ語がわかるグレゴリーには、秘密の会話や手紙の内容をチェックすることが求められた。しかし、マンデラに
    長く接していく中でグレゴリーのマンデラに対する見方は変わり始め、次第に彼の気高い思想に傾倒していくが…。
  [寸評]悪名高いアパルトヘイトが行われていた時代の南アフリカを舞台に、後に南ア初の黒人大統領となるネルソン・マ
    ンデラが27年にわたる獄中生活で出会った白人看守との実話を描いた社会派ドラマ。先週、不完全燃焼の鑑賞をして
    しまった「インビクタス」の前章(マンデラ大統領の獄中時代)を描いた本作品に目を付け、レンタルDVDで妻と鑑賞した。
    全般的に大きな起伏はなく話が進むが、アパルトヘイトのむごさ、武力闘争の両者の考え方、マンデラの人柄、グレゴ
    ニーと家族の関係・葛藤がじわじわと感じ取れる。やはり人間は誰しもが尊重されなければならない。グレゴニーの妻も
    最初は「出世、出生」と口走っていて嫌だなと思ったが、後半は夫の心の支え役をしっかりと行い、マンデラの温かさを
    感じ取ったり、良い面が出てきてよかった。本作品は「インビクタス」と併せて観ておくとよいと思う。

10.交渉人 THE MOVIE タイムリミット 高度10,000mの頭脳戦 (2010年米)<3.5> 
 [監督]松田秀知
  [出演]米倉涼子、陣内孝則、筧利夫、高橋克実、反町隆史、林遣都、津川雅彦、柳葉敏郎、橋爪功
  [時間]123分
 [内容]ある日、現金輸送車から2億6000万円が強奪される事件が発生し、犯人グループはショッピングモールに人質をと
    って立て籠もる。警視庁捜査一課特殊捜査班(通称SIT)の宇佐木玲子が交渉に乗り出すが、なぜか通話は一方的に
    打ち切られてしまう。ほどなくモールで爆発が起こり、人質がパニックになる中、混乱に乗じて犯人の一人、中川伸也も
    逃走してしまう。しかし、主犯と思われる男・御堂啓一郎と手つかずの現金はそのまま残されていた。そんな不可解な事
    件から数週間後、北海道へ私用で行くため、羽田空港にやってきた宇佐木は、人質の一人だった青年・木元祐介に気
    づく。彼の行動に不審を抱いた宇佐木は、咄嗟に彼が乗る北九州行スカイバード201便に潜り込むのだったが…。
  [寸評]米倉涼子主演のTVドラマの劇場版。咄嗟の機転でハイジャック機に乗り込んだ敏腕交渉人・宇佐木玲子が、乗客
    乗員を合わせた159人の命を守るため、高度1万メートルの上空で決死の戦いを繰り広げる様を、サスペンスとアクショ
    ンを織り交ぜて描いた内容。米倉涼子は好感度高い女優であり、TVドラマは観ていなかったものの、彼女見たさと内容
    も興味があり、劇場で鑑賞した。(木曜日午後有休で観たが観客は3名のみだった・・・)TVドラマはどうか分からないが
    本作品では交渉人としての駆け引きの様はごく僅かであったのが残念。女性版「ダイ・ハード」「エアフォースワン」とい
    ったノリでアクション色が強く、それなりに楽しませてくれ、真犯人のオチの付け方もよいと思うが、着陸に向けた対応は
    漫画的で過去の幾つかの映画の踏襲で今一つ共感できなかった。ハイジャックに走った若者、教祖、黒幕は現代の世
    相をある面、反映しているとも思う。突っ込み所は先に書いたようにあるが、TVドラマを観ていなくても、すんなり入り込
    み、(米倉ファンには)マズマズ楽しめる作品かと思う。

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