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56.パリ・オペラ座のすべて LA DANSE, LE BALLET DE L'OPE'RA DE PARI (2009年仏)<4.0> 
 [監督]フレデリック・ワイズマン
  [出演]ニコラ・ル・リッシュ、マチュー・ガニョ、マリ=アニエス・ジロ、エミリー・コゼット
  [時間]160分
 [内容]世界最古のバレエ団、パリ・オペラ座の知られざる素顔に迫るドキュメンタリー。
  [寸評]パリ・オペラ座全面協力の下、84日間に及ぶ密着取材を通して、エトワールと呼ばれるトップ・ダンサー達の華麗な
   舞台や決して明かされる事のなかった創作の過程を臨場感いっぱいに映し出すと共に、華やかな舞台を支える多くの裏
   方スタッフ達の献身的な活動も追っていく長編ドキュメント。フランス映画ならではか?解説は無く、ひたすらに舞台裏を
   淡々と写し出した正にタイトル通りの内容。私は音楽もドキュメンタリーも好きゆえ、興味深く観れ、楽しませてもらった。踊
   りの練習だけでなく、衣装製作やメイク、建屋の内装と改修するスタッフの人達の動きを万篇無く追っている点がよい。
   映画同様、総合芸術として本当に多くの人達によって支えられている事が分かる。練習シーンが2〜3名で行うものが主に
   取り上げられていたが、大勢の練習シーン・ゲネプロ等も欲をいえば観たかったな。時折、映し出されたパリの光景が美し
   い。パリやウィーン等、ヨーロッパをいつか訪れたい思いはあるが、実現できるものか?

57.ヘアスプレー HAIRSPRAY (2007年米)<4.0> 
 [監督]アダム・シャンクマン
  [出演]ジョン・トラボルタ、ニッキー・ブロンスキー、ミシェル・ファイファー、クリストファー・ウォーケン
  [時間]116分
 [内容]1962年、米国メリーランド州ボルチモアが舞台。ダンスとオシャレに夢中な16歳の女子高生トレーシーは、ヘアスプ
   レー企業が手掛ける人気テレビ番組“コーニー・コリンズ・ショー”に出演し、憧れのリンクと踊る事を夢見ていた。そしてあ
   る日、彼女は母エドナの反対を押し切り、番組のオーディションに参加する。しかし、その太めな体型から、番組の中心メ
   ンバーであるアンバーと彼女の母で番組を仕切っているベルマに追い払われてしまう。ところが一転、番組ホストの目に留
   まり、レギュラー・メンバーに抜擢されたトレーシーは一躍注目の存在になる。しかし、そんな彼女の成功が面白くないベ
   ルマとアンバー母娘は様々なトラブルを仕掛け、ある時ついに大事件が発生する…。
  [寸評]1988年のジョン・ウォーターズ監督による同名作品を原作とするトニー賞受賞ブロードウェイ・ミュージカルを豪華キャ
   ストで映画化した痛快コメディ。あからさまな差別や偏見が存在した60年代のアメリカを舞台に、人気TV番組のダンサーを
   目指す天真爛漫な太めの女子高生とその周囲の賑やかな人間模様を描いた内容。久々にミュージカル映画へ出演した
   ジョン・トラヴォルタが驚異の特殊メイクで母親役に扮している事でも話題になった。私はゲイ系は受け付けられないため、
   観る前は違和感を感じていたが、観てみると母親のキャラが意外と微笑ましかった。最初から最後まで音楽もテンポも良く
   て昔ながらの勧善懲悪的な要素が織り込まれ、予想以上に楽しめた。太めで決して美形でない(失礼!)キャラが明るく
   前向きに生き、愛され、また他のキャラも、あらゆる差別や偏見に立ち向かっていき、勇気を与えてくれ、気持ちのよい作
   品である。

58.ゼロの焦点 (2009年日)<4.0> 
 [監督]犬童一心
  [出演]広末涼子、中谷美紀、木村多江、杉本哲太、野間口徹、市毛良枝、黒田福美、西島秀俊、鹿賀丈史
  [時間]131分
 [内容]妻・禎子と結婚式を挙げて7日後に新郎・憲一は、仕事の引き継ぎで以前の勤務地・金沢へと旅立った。ところが、
   憲一はそのまま帰ってこなかった。見合いのため、夫の過去を全く知らなかった禎子には、失踪の理由も皆目見当がつ
   かない。夫の行方を追って金沢へと向かった禎子は、そこで得意先会社の社長夫人・室田佐知子と受付嬢の田沼久子
   という2人の女と出会う。一方、時を同じくして憲一と関わりのある人物が被害者となる連続殺人事件が発生する・・・。
  [寸評]松本清張の傑作ミステリーを映画化した松本清張生誕100年記念作品。敗戦直後の混乱期を経て復興へと向かう
   昭和30年代初頭の日本を舞台に、結婚間もない夫の謎の失踪を発端として不可解な連続殺人事件に巻き込まれていく
   若妻が、やがて隠された衝撃の真実に直面していく様を描いた内容。広末涼子、中谷美紀、木村多江というアカデミー
   賞を得た女優の競演という事で話題になっているが、昔、原作を読んだ(かなり忘れていたが・・・)松本清張の代表作が
   映画化される事にかねてから注目していて、公開日初日に鑑賞。原作の内容がしっかりしているので、映画としても上
   手くまとめられていてミステリー作品としてマズマズ楽しめる。原作を読んでいなくても、途中で誰が犯人か分かるかも
   ね・・・。中谷、木村の2人は役柄を流石に上手く演じていたし、広末の時折見せる寂寥な表情は良かったが、語り(ナレー
   ション)には、どこか違和感を感じた。SL列車がスピードをあげて走ったり、キャラメル箱が風で家の中へ飛んでくるシー
   ンはわざとらしくCGで強調していたが、そこまでしなくてもいい気がしたな。引き続き、松本清張の原作を映画化してほし
   いな。ビートたけしがTVスペシャルドラマで主演した「点と線」をレンタルDVDで観たくなった。

59.ベンジャミン・バトン 数奇な人生 THE CURIOUS CASE OF BENJAMIN BUTTON
     (2008年米) <4.0> 
 [監督]デヴィッド・フィンチャー
  [出演]ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ティルダ・スウィントン、ジェイソン・フレミング、イライアス・コティーズ
  [時間]167分
 [内容]1918年、ニューオーリンズ。ある一組のカップルの間に男の子が産まれたが、その赤ん坊は80歳の老人と見まがう
   ほどの奇異な容貌をしていた。ショックを受けた男は困り果てた末、赤ん坊を老人養護施設に置き去りにしてしまう。そし
   て、施設を営む黒人女性クイニーに拾われた赤ん坊はベンジャミンと名付けられ、献身的に育てられるのだった。成長
   するにつれ髪が増えて、皺が減り、車椅子から立って歩けるようになるなど、普通の人間とは逆に若返っていく。やがて、
   少年期を迎えた彼はある日、施設入居者の孫娘で6歳の少女デイジーと出会う。それは、これから様々な経験を積み壮
   大な人生を歩んでいくベンジャミンにとって、今後かけがえのない存在となる彼女との運命の出逢いだった…。
  [寸評]「セブン」「ファイト・クラブ」に続いて3度目のコンビを組んだデヴィッド・フィンチャー監督、ブラッド・ピット主演で贈る
   ヒューマン・ファンタジーの大作。小説家F・スコット・フィッツジェラルドが1920年代に著わした短編を基に、80歳の老体で
   生まれ、歳を取るごとに若返っていく男の波瀾に富むも儚い人生の旅路が、第一次大戦後から21世紀初頭に渡る激動の
   現代史を背景に、最新のCG技術を駆使した驚異の映像で描いた作品。2月に劇場公開され、アカデミー賞の作品賞でも
   ノミネートされ、注目していながら劇場公開時に鑑賞を据え置き、ようやくレンタルDVDで鑑賞(有休を取得し、午後に大人
   しく鑑賞)。非現実的ではあるが、その奇異な生涯の行方には見応えがあり、最後はおぼろげに想定はできながら167分
   という時間を苦にする事なく引き込まれていく。ケイト・ブランシェットは「バベル」「インディ・ジョーンズ」しかり、今回も上手
   い演技を見せてくれる。本作品を観て、人生とはちょっとしためぐり会い、僅かな時間差により運命が変わり、日々の出来
   事が奇跡や驚異の連続なのかもしれない・・と感じた。

60.2012 2012 (2009年米)<3.5> 
 [監督]ローランド・エメリッヒ
  [出演]ジョン・キューザック、キウェテル・イジョフォー、アマンダ・ビート、オリヴァー・ブラット、タンディ・ニュートン
  [時間]158分
 [内容]ロサンゼルスでリムジン運転手をしている売れない作家ジャクソンは、別れた妻ケイトのもとに暮らす子供達と久々
   に再会し、イエローストーン公園までキャンプにやって来た。彼はそこで怪しげな男チャーリーから奇妙な話を聞かされ
   る。それは“地球の滅亡”が目前に迫っており、その事実を隠している各国政府が密かに巨大船を製造し、ごく一部の金
   持ちだけを乗せ脱出しようとしている、という俄には信じられない内容だった。しかし、その後ロサンゼルスをかつてない巨
   大地震が襲い、チャーリーの話が嘘ではないと悟る。そして、大津波や大噴火など、あらゆる天変地異が世界中で発生し
   次々と地球を呑み込んでいく。そんな中、ジャクソンはケイトと子供達を守るため、巨大船がある場所を目指して必死の
   サバイバルを繰り広げるのだが…。
  [寸評]「デイ・アフター・トゥモロー」のローランド・エメリッヒ監督が放つパニック・サスペンス巨編。2012年12月21日に地球
   滅亡が訪れるというマヤ文明の暦にヒントを得た終末説を基に、世界中で怒濤のごとく発生した未曾有の天変地異に人類
   が為す術なく襲われていく様子をスペクタクル映像で描いた作品。選ばれた人類だけ「ノアの方舟」に乗せて生き延びよう
   という松本零士原作の「1000年女王」を思わせる地球が危機を迎える時の脱出劇だが、ストーリーは至ってシンプルとい
   うか薄い。ひたすら災害が起こり、父親が元妻や子を助けながら復権していく、というよくあるパターンで物足りなさを感じ
   た。ただし、それを補うべく、これでもかこれでもか、という驚異の圧巻映像を長時間に渡り、見せてくれる。車が断裂した
   地層の中に落ちていく様など非常に細部に渡り、描かれているのには感心する。CGとは分かっていながら、痛々しく、襲
   いかかれるような体感が味わえる。そういう面ではDVDよりは劇場で鑑賞するのが良いのでしょう。

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