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51.エグザイル/絆 放・逐 (2006年香)<1.5> 
 [監督]ジョニー・トー
  [出演]アンソニー・ウォン、フランシス・ン、ニック・チョン、ラム・シュー、ロイ・チョー、ジョシー・ホー
  [時間]109分
 [内容]中国返還間近のマカオの乳飲み子を抱えた妻が夫の帰りを待つとある家。この家の主のウーは、かつて香港マフ
   ィアのボス、フェイの命を狙ったために逃亡の身となった。そんなウーの家に4人の男達が現れる。2人はフェイの命令で
   ウーを始末するために、そしてもう一方の2人はウーを守るために・・。そこへ、ついにウーが姿を現わし、ほどなく三すくみ
   の銃撃戦が始まるが…。
  [寸評]香港の鬼才ジョニー・トー監督が、返還目前のマカオを舞台に、それぞれの使命を帯びて対立する裏社会の男達が
   辿る予測不能の運命を往年のマカロニ・ウエスタンを彷彿させるカメラワークで綴った作品。ウェブ上では本作品は、かなり
   好評ゆえ、レンタルDVD(160円)で鑑賞した。ドンパチもので、最後の結末は何となく読め、途中の過程が自分に合うか合
   わないかどちらか極端になるであろう、とリスクを想定して観たが、悪い事に私にはまるで合わなかった。睡魔に襲われる
   わけでもないのに話は全く理解できないし、面白くも何ともない。ウーを含めた5人の過去の思い出・エピソードがフラッシュ
   バックで描かれるわけでなく、ドンパチも予測不可能な展開の仕方だ。最後の結末は読みどおりにしろ、本作品は何が言
   いたかったのだろう?正直言って観るだけ時間の無駄で、一緒に鑑賞してくれた妻に悪い事をした(妻は睡魔と格闘して
   いたが・・・)な。160円レンタルゆえ、やむなしとしよう。

52.私の中のあなた MY SISTER'S KEEPER (2009年米)<5.0> 
 [監督]ニック・カサヴェテス
  [出演]キャメロン・ディアス、アビゲイル・ブレスリン、ジェイソン・パトリック、ソフィア・ヴァジリーヴァ
  [時間]110分
 [内容]サラとブライアンのフィッツジェラルド夫妻は長男ジェシー、長女ケイトとの4人家族で幸せに暮らしていた。しかし、ケ
   イトが2歳の時、白血病に冒されている事が発覚する。そこで両親は未来ある娘の生命を救うため、遺伝子操作によってド
   ナーにぴったりの新たな子供を“創る”ことを決断する。こうして生まれてきた次女アナは、幼い頃からケイトの治療のため
   に何度も手術台に上がり、過酷な犠牲を払ってきた。ところがある日突然、11歳のアナは自ら弁護士を雇い、大好きな姉
   ケイトへの腎臓の提供を拒んで両親を訴えるという驚くべき行動に出る。ケイトを助ける事が人生の全てとなっていたサラ
   は、アナの思いがけない決断に激しく動揺し激怒する。そしてついに、愛し合う親子は、法廷の場で対決する事になってし
   まうのだが…。
  [寸評]ジョディ・ピコーの世界的ベストセラー小説『わたしのなかのあなた』をキャメロン・ディアス主演で映画化した家族ドラ
    マ。白血病の姉を救うドナーとなるべく遺伝子操作で生まれてきた少女が、ある決意を胸にもう姉のドナーにはならない
    と両親を訴えた事から崩壊の危機に直面した家族の各々の心の葛藤とその行方を切なくも優しい眼差しで描いた内容。
    同じタイミングで封切される「さまよう刃」とどちらを先に観るか迷ったが、本作品を選択し、妻と鑑賞。画面を直視してい
    るのが辛い事が多々ありながら、本当に登場人物各々が、情がこもっていて、心温まる最初から最後まで引き込まれ
    る本年屈指の傑作。ケイト役もアナ役も本当に上手い。いつもはイケイケドンドン調のキャメロン・ディアスが初の母親役
    を上手く熱演していて見直した。本作品の内容は会社の元上司で現在、NPOの「いのちのバトンタッチ」の活動を推進し
    ている鈴木さん一家の話ともダブリ、観ながら色々な事を考えさせられた。父親がケイトをデートに送り出すシーン(「大好
    きなパパ」と言われる)は共感できるし、ケイトと彼が「癌になったから出会えたんだ」というシーン、ケイトと母親の最後の
    会話は感涙モノだった。それにアナの訴訟の真実も仰天し、しみじみと感動させられる。ある面、観ているのが辛いが、
    家族愛をしっかりと描いていて温かい気持ちにさせてもくれるオススメ作品です。

53.さまよう刃 (2009年日)<4.0> 
 [監督]益子昌一
  [出演]寺尾聰、竹野内豊、伊東四朗、長谷川初範、岡田亮輔、黒田耕平、佐藤貴広、酒井美紀、山谷初男
  [時間]112分
 [内容]ある日、長峰重樹の中学生になる娘・絵摩が、未成年の少年グループに理不尽に凌辱された末、荒川の河川敷で
   無惨な死体となって発見される。妻を亡くし、娘の成長だけを楽しみに生きてきた長峰は絶望に打ちのめされてしまう。そ
   んな長峰のもとに、犯人が菅野と伴崎であるとの匿名の密告電話が入る。伴崎のアパートに向かった長峰は、そこで犯
   行の一部始終を収めたビデオテープを発見する。激しい怒りに駆られた長峰は、やがて帰宅した伴崎を刃物で刺殺して
   しまう。その後、長峰から伴崎殺害を自供する手紙を受け取った捜査本部の織部と真野は、手紙に綴られた少年法に対す
   る無力感に複雑な思いを抱きながらも、更なる凶行を食い止めるべく、長峰の行方を追うのだったが…。
  [寸評]東野圭吾の衝撃の問題作を寺尾聰主演で映画化したサスペンス・ドラマ。しばしば議論の的となる少年犯罪と少年
   法の是非を真正面から見据え、少年たちによって無惨に殺された愛娘の復讐に走る父親の苦悩と、それを追う2人の刑事
   の心の葛藤を描く。本作品は気が重くなるのは分かりきっていたが、怖いものみたさの心理と東野圭吾原作という事から
   鑑賞。私も可愛い愛娘(一姫)がいる。自分を長峰の立場(かつ同じ環境)に置き換えれば、あの行動は同調するし、話の
   結末も、あれで良かったのではないかと思える。宮部みゆき原作の「模倣犯」を彷彿させる恐ろしい無差別の残虐犯罪で
   背筋が凍る。少年たりとも残虐犯罪には強烈な制裁を加える仕組みを作り、幼少の時から、制裁の恐ろしさを刷り込みす
   る等、本当に何とかならないものか?まずは残虐犯罪を生み出さない平和な社会・家庭を・・・と思っても競争社会である
   以上、難しい所はあるか・・・。長峰が宿泊したペンションの父と娘が各々の思いからとった行動も分かるが、これまた父親
   の思いは賛同する。映画を観て小説を読もうかと思ったが、おそらく小説は色々な心情・残虐なシーンも詳細に描写して
   いて辛くなる事は必須ゆえ、やめておこう。娘を持つお父さんは観ておくとよい気がします。

54.ATOM ASTRO BOY (2009年香/米)<3.5> 
 [監督]デヴィッド・バワーズ
  [出演](声の出演)フレディ・ハイモア、ニコラス・ケイジ、ビル・ナイ <吹替版>上戸彩、役所広司、林原めぐみ
  [時間]95分
 [内容]ロボットが全ての世話をしてくれる空中都市メトロシティが舞台。ある日、科学省長官テンマ博士の息子トビーは、科
   学省の実験施設に潜り込み、実験中の事故に巻き込まれて命を落とす。悲しみに暮れるテンマ博士は、息子の姿と記憶
   を宿したロボットを製作するが、所詮はロボットで息子の代わりにはならないと実感したテンマ博士は、トビーを追い出して
   しまう。荒廃した地上に降りてきたトビーは、人間達と出会い、自ら“アトム”と名乗り、ロボットであることを隠して彼らと暮
   らし始める。そんな中、メトロシティのストーン大統領は、支持率回復を狙って地上との戦争を画策し、アトムに内蔵され
   た未来型エネルギー“ブルーコア”の兵器転用を目論み、アトムの捜索に乗り出すのだった。
  [寸評]尊敬する偉大なる漫画家:手塚治虫の代表作『鉄腕アトム』をイマジ・スタジオが映画化したフルCGアニメーション
    映画。子供の頃から馴染み深く、中学生の時にアニメがTV放映されていて毎週観ていた。そんなアトムがATOMとして
    外国にて製作され劇場公開されるので以前から注目していて、一姫のリクエストもあり、妻子と一緒に劇場で鑑賞。映像
    も綺麗で内容もマズマズ楽しめ、最後は安堵させるよう落ち着く展開である。外国人によって生み出された新たなアトム
    には”懐かしい”というよりは、複雑な気持ちも含んだ新鮮さを感じた。日本人によってリメイクしてほしかった気もするな。
    手塚治虫の作品は小説以上に素晴らしいものが多く、幾つかの作品がアニメ・実写化されている。いつか「アドルフに告
    ぐ」を何とか映画orTV連続ドラマ(実写でもアニメでも可)化してもらえないだろうか?

55.沈まぬ太陽 (2009年日)<4.0> 
 [監督]若松節朗
  [出演]渡辺謙、三浦友和、松雪泰子、鈴木京香、石坂浩二、香川照之、木村多江、大杉漣、西村雅彦、加藤剛
  [時間]202分
 [内容]国民航空の労働組合委員長を務める恩地元は職場環境の改善を会社側へ訴え、首相搭乗のフライトの日にストを
    決行する事を示唆して改善を勝ち取る。しかし、やがて、彼は海外赴任を命じられ、パキスタンやイラン、ケニアなど、まと
    もな路線就航もない任地を転々とさせられるという、あからさまな懲罰的人事だった。だが、恩地は自らの信念を曲げる
    事なく、長きに渡る海外勤務を全うしていく。一方、同じく組合員として共に闘った恩地の同期、行天四郎はその後、本
    社での重要なポストと引き換えに会社側へ寝返り、エリートコースを歩みながら恩地と対立していく事になる。こうして
    10年の後、孤独と焦燥感に苛まれた海外勤務から、ようやく本社へ復帰を果たした恩地だが、会社側に苦境を強いられ
    ている組合の同志達と同じく、不遇の日々を過ごす事になる。そんな中、航空史上最大のジャンボ機墜落事故が起こ
    る。恩地は遺族係に就き、未曾有の悲劇の数々に遭遇する。その後、国民航空の建て直しを図るべく政府の要請で就
    任した国見新会長から会長室勤務に抜擢された恩地の前には、更なる苦難の道のりが続くのだが…。
  [寸評]『白い巨塔』『華麗なる一族』等の数々の名作を生み出した人気作家・山崎豊子が綿密な取材の基に書き上げた渾
    身のベストセラー巨編を壮大なスケールで映画化した社会派人間ドラマ。原作を6年前に読み、強烈なインパクトを受け、
    特に3巻の御巣鷹山編は涙なしには読めない傑作で、これを映像化するのは難しいだろうし、半年の連続ドラマぐらいに
    しないと描ききれないと思っていた。映画化の話を聞いた時に、2時間強の短時間では描ききれないので、原作を無げに
    するような事はしないでほしい!と感じたが、上映時間が休憩付の3時間22分という事で俄然観る気になった。今、JAL
    の再建策が話題になっている時に正に図ったかのような公開で職場でも本作品の関心は高い。有休を取得し、妻と通常
    は空いているシネコンに行ったが、年輩の方を主に観客がやたら多くてびっくりした。原作の詳細を忘れている事もある
    が、全編に触れられていて思ったより上手くまとめられていたと思う。原作を直近に読んだ方には物足りなさを感じるかも
    しれないが初めて映画で観る人には入り込みやすいのではなかろうか。(3時間22分は長いとは思わなかったが、後
    半、少しお尻が痛くなった・・・)渡辺謙は世界的にも評価されている俳優だが、今回の作品を観て、適役だったし本当に
    上手いと思った。息子と2人で食堂で話をするシーンは何故かジーンときたなあ。本作品は、これでもかという程の豪華
    俳優が出演している。人間の尊厳とは何か? 貫く信念は何か? 守るべきものは何か? を問いかけ、考えさせる優れた作
    品である。欲をいえばもっと長時間、詳細を描いた映像を観たいと思った。でも、よくぞこんな大作を映画化して見せて
    くれたと思う。

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