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46.宇宙(そら)へ。 ROCKET MEN (2009年英)<4.0>
[監督]リチャード・デイル
[出演]<ナレーション>マイケル・J・レイノルズ (日本語版)宮迫博之
[時間]98分
[内容]米ソの宇宙開発競争に伴い、1958年に設立されたNASA(アメリカ航空宇宙局)。マーキュリー計画からアポロ計画を
経てスペースシャトルへと繋がるその50年に及ぶ歴史を、宇宙飛行士たちの飽くなき挑戦に焦点を当て、NASAの秘蔵映
像で振り返るドキュメンタリー。
[寸評]『ディープ・ブルー』『アース』で壮大な自然をとらえた英国BBCが、NASAの50年の歴史を探るドキュメンタリー作品。
NASAに眠るオリジナル・ネガフィルムを史上初めてひも解き、息をのむほどの宇宙の美しさと共に、宇宙開発に伴う挫折や
苦難、そして成功をドラマチックに映し出している。公開日初日・2日目(8/21-22)は500円/人ゆえ、一姫が部活動等で多
忙でありながら、帯同してくれ、8/22(土)夜に妻子と劇場で鑑賞。その日の朝、1月に妻子と劇場で観た「ザ・ムーン」を
DVDで再見して本作品にのぞんだ。人類が宇宙へ・・・というと、どうしても「月」となり、「ザ・ムーン」と共通する所はある。
しかし、「ザ・ムーン」が宇宙飛行士のインタビュー・回想をベースに展開されるのに対し、本作品は宇宙への試みを段階的
に追っていき、悲しい犠牲を伴う失敗・挫折もしっかりと焦点を当てていて、その様が辛く痛々しくインパクトがある。それに
しても、あの時代に、よくあそこまで実行したものだ。その後の動きからしても、当事の関係者の熱意・意思の強さは凄く素
晴らしいといえる。月からみた青い地球の姿、地球の軌道を航行している時に捉えた大陸や海の姿は感動的。ドキュメンタ
リー映画は良いし、好きだね。BBC提供の次回作を期待している。
47.結婚しようよ (2007年日)<4.0>
[監督]佐々部清
[出演]三宅裕司、真野響子、藤澤恵麻、AYAKO、金井勇太、中ノ森BAND、岩城滉一、入江若葉、松方弘樹
[時間]120分
[内容]不動産会社に勤める平凡なサラリーマン、香取卓の家庭は、専業主婦の妻・幸子、大学4年生の長女・詩織、バンド
活動に夢中の次女・歌織の4人家族である。かつては吉田拓郎に憧れ、自分もフォーク歌手を目指した事もある卓だっ
たが、現在は家族のために人生を捧げていた。そんな卓のこだわりは、全員で夕飯の食卓を囲むという今どき珍しい家
族のルールだった。ところが、やがて、長女はそば打ち職人を目指す青年と恋仲になり、一方の次女もライブハウスでの
オーディションに合格、バンド活動が忙しくなり、今や自分が大切にしていた一家団欒が崩壊目前と焦りを募らせる卓だっ
たが…。
[寸評]吉田拓郎の名曲の数々をバックに、フォークソング全盛の70年代に青春を謳歌した団塊世代の父親と家族の物語を
綴るハートフル・ホームドラマ。100円レンタルDVDで観たが、何とも微笑ましく、時折ホロっとさせられる作品だった。この
作品で取り上げられている吉田拓郎は有名だが、私自身、彼の曲にふれていず、今回、こういう歌を歌うんだ、と知った。
子供達も成長し、自分達の世界を築いて独立(親離れ)していけば、いつまでも家族で一緒に食事という訳にはいかな
い。それを分かってはいながら、葛藤する卓の姿、優しく見守る妻、親の思いをしっかり理解している娘達の姿には共感
するし、卓を自分とも重ねながら観ていた。長女・詩織を演じた藤澤恵麻は、どこかで観たと思い、調べたら、「3年B組金
八先生」「GOEMON」に出ていた。娘を送り出す心境を想像するに、それだけで涙が出そう・・・。我が家は一姫が中学の
部活で早朝に出かけるが、何とか朝は皆一緒に食卓で朝食を共にしよう、というスタンスでいる。継続していきたいね。
(私としては子供が元気に周囲に迷惑をかける事なく、自活できる人間に育ってくれるのが何よりの願い・・・)
48.精神 (2008年日)<4.0>
[監督]想田和弘
[出演]山本医師他
[時間]135分
[内容]山本昌知医師が代表を務める外来の精神科診療所“こらーる岡山”にカメラを据え、様々な理由でそこにやって来る
患者達の悲喜こもごもの人間模様をありのままに、かつ真摯に見つめ、山本医師の地道な活動の様子を描く。
[寸評]“観察映画”と銘打ち、ナレーションや音楽を一切排して対象を描ききった「選挙」(未見だが)の想田和弘監督が、
観察映画第2弾として、“こころの病”を抱えた人々にカメラを向けたドキュメンタリー。今、会社でもどこでもメンタルヘル
スが叫ばれており、”こころのバランス”を崩すか否かは、誰にとっても他人事ではない。本作品には非常に関心を持
ち、愛知県では単館上映なので、大学時代のクラブの仲間との会合がある事を機に、その前に劇場(ミニシアター)に
行って鑑賞してきた。本当に最後にタイトル・スタッフが表示されるまでは、何の字幕もナレーションもなく、ひたすら、医
師や患者との対話、患者へのインタビュー等がモザイクなしに赤裸々に描写される。何かこちらも辛くなるような気持ち
になったり、感動させる言葉を聞けたり、引き込まれてしまい、上映時間程、長さを感じなかった。こうした作品を撮った
事に賛否色々あると思うが、一般にタブー視されがちな精神病についての偏見や壁を取り払いつつ、観る者に色々と考
えさせる貴重な作品であると思う。「健常者」という定義は、どこまでを言うのだろう・・・。ある患者が語るように、多くの人
に支えられていて生きている事に感謝しなければならない、人は常に懊悩しているものだ、という事を改めて強く認識さ
せられた。
49.サブウェイ123 激突 THE TAKING OF PELHAM 1 2 3 (2009年米)<3.5>
[監督]トニー・スコット
[出演]デンゼル・ワシントン、ジョン・トラボルタ、ジョン・タートゥーロ、ルイス・ガスマン、ジェームズ・ガンドルフィーニ
[時間]105分
[内容]米ニューヨーク、午後2時。地下鉄運行指令室で勤務中のガーバーは、緊急停車したペラム駅1時23分発の列車へ
応答を促したが、その列車は、19名が乗車した1両目だけを切り離して停車している状態だった。すると、無線で応答して
きたライダーと名乗る男から、“この1時間で市長に身代金1000万ドルを用意させ、期限に遅れた場合は1分ごとに人質を
1人ずつ殺していく”との要求を告げられる。さらに、ライダーは交渉相手に何故かガーバーを指名してきた。ところが、警
察が指令室にやって来ると、ガーバーはある理由で退席させられてしまう。しかし、ガーバーが席を離れたことを知ったラ
イダーは激怒して運転士を射殺し、ガーバーを強制的に交渉役へ戻させる。こうしてガーバーは警察のサポートのもとで
粘り強く交渉を続けながら人質解放と事件解決への糸口を探っていくのだが…。
[寸評]デンゼル・ワシントンとジョン・トラヴォルタの豪華2大スターを主演に迎えたクライム・サスペンス。ジョン・ゴーディの
ベストセラー小説を原作に、1974年に映画化された「サブウェイ・パニック」のリメイク版。ニューヨークの地下鉄をハイジ
ャックした凶悪犯と、その交渉相手に指名された地下鉄職員との息詰まる駆け引きの行方を緊迫感あふれる形で見せて
くれ、まずまず楽しませてくれる。ジョン・トラヴォルタの悪役も流石に様になっていて上手い。この作品はデンゼル・ワシン
トンとジョン・トラヴォルタの2人の駆け引き、演技の上手さをみせる事に終始した感じだ。デンゼル演じるガーバーは賄賂
受領の告白をしたが、2人の過去の生き様の経緯をもう少し深堀りしてくれると話の内容も厚みを増したのでは?事件に巻
き込まれた青年が恋人とパソコンの画面で交信中だったので、車内の様子を彼女からTV局に送信し、皆の目に触れるよ
うにしたシーンは時世を写しているのかな。ガーナ―と奥さんとの電話のやり取り(牛乳パックの購入)は、アクション満載
の中で人間味ある微笑ましいシーンだった。
50.プール (2009年日)<3.5>
[監督]大森美香
[出演]小林聡美、加瀬亮、伽奈、もたいまさこ、シッティチャイ・コンビラ
[時間]96分
[内容]大学卒業を目前に控えた女子大生さよは、一人でタイのチェンマイ国際空港に降り立った。目的は、4年前に自分と
祖母を残して家を出た母・京子に会う事にある。そんな彼女を母の仕事を手伝う青年・市尾が空港で出迎える、。母が働く
小さなプールのあるゲストハウスには、オーナーの菊子のほか、ビーという名のタイ人少年も暮らしていた。久々に再会し
た母は彼らの中に混じってとても楽しげだった。母へのわだかまりを胸にはるばるやって来たさよは、その姿を素直に受入
れられず早々に部屋に閉じこもってしまうのだったが…。
[寸評]映画化を前提に書き下ろした漫画家・桜沢エリカの原作を基にしたドラマ。ちょっとワケありな男女がのんびりと暮らす
タイ・チェンマイのゲストハウスを舞台に、母に会うため日本からやって来た女子大生がそこで過ごす6日間の物語を、母と
娘の確執と和解を軸に描写した作品。小林聡美、加瀬亮、もたいまさこが揃えば「かもめ食堂」「めがね」の系等で淡々とし
たテンポのホノボノとした内容が想定され、劇場で鑑賞。「かもめ食堂」「めがね」の監督と異なるも、予想通り、同じような
テンションだった。自由気ままに生きる母親に対し、複雑な思いを抱きながらも、タイで6日間、過ごす内に、どことなくわだ
かまりが氷解していく。後半で母娘でじっくり話すシーンがなかなか良かった。登場人物の各々が、何故、現在の生活に
至ったのか、ほとんど触れていなく、それはそれでよいのだが、彼等のような生活を1ヶ月ぐらいであれば、送ってみたい気
もするな。
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