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31.ハゲタカ (2009年日)<4.0> 
 [監督]大友啓史
  [出演]大森南朋、玉山鉄二、栗山千明、高良健吾、遠藤憲一、松田龍平、柴田恭平、中尾彬
  [時間]134分
 [内容]徹底した合理主義で瀕死の日本企業を次々と買い叩き、“ハゲタカ”の異名をとった鷲津政彦も、今では絶望的な
    日本のマーケットに見切りをつけ、海外に生活の拠点を移していた。そんな鷲津のもとにある日、かつての盟友・芝野
    が訪ねてくる。彼が現在役員を務める日本の名門自動車メーカー“アカマ自動車”を、中国系巨大ファンドによる買収
    危機から救って欲しいと頼みに来たのだった。その買収の急先鋒となっているファンド、ブルー・ウォール・パートナー
    ズを率いるのは、残留日本人孤児三世である劉一華(リュウ・イーファ)。彼は、鷲津が勤務していた米ホライズン社の
    元同僚で、自らを“赤いハゲタカ”と名乗っている。こうして、巨額の資金を背景に圧倒してくる劉との因縁めいた買収戦
    争に挑む鷲津だが…。
  [寸評]買収ファンドを扱った元新聞記者の作家・真山仁の原作を基にNHKでドラマ化されたTVシリーズを銀幕へ昇華した
    社会派ドラマ。本作は日本の大手自動車メーカーをめぐって繰り広げられる企業買収の天才“ハゲタカ”と中国系巨大フ
    ァンドから送り込まれた“赤いハゲタカ”の壮絶な買収戦争の行く末を描いた内容。TVシリーズは観ていないが、予告編
    を何度も観て、現状の日本の経済状況を描写し、かつ自動車メーカーを買収するか否かという内容ゆえ、非常に関心が
    高く、公開日初日の朝一番で劇場で鑑賞。大森南朋は05年のTVドラマ「恋の時間」の谷本役、玉山鉄二は現在放映中
    の「天地人」の上杉景虎役の印象が強いが、2人を軸にして柴田恭平、栗山千明等が上手く絡んで皆が熱演しており、
    全般的に飽きずに楽しませてくれる。ファンド、企業買収、派遣社員問題が具体的に描写されるので、経済の良い勉強
    にもなると思う。個人的には鷲津と劉の資金の攻防よりも、古谷社長と芝野の“アカマ自動車”経営に対するやり取りの
    方が非常にインパクトがあった。劉は思わぬ結末を迎えるが、お金に執着して、這い上がるも、お金のために恨まれ、
    奪われる、という彼の人生の空しさ・・・。時間があればレンタルでNHKで放映されたTVシリーズを観てみようかな。
    (全6話ゆえ観れない事はない)

32.ターミネーター4 TERMINATOR SALVATION (2009年米)<4.0> 
 [監督]マックG
  [出演]クリスチャン・ベイル、サム・ワーシントン、アントン・イェルチン、ムーン・ブラッドグッド、ブライス・ダラス・ハワード
  [時間]114分
 [内容]時は2018年。スカイネットが引き起こした“審判の日”をかろうじて生き延びた人間達は抵抗軍を組織し、大人になっ
    たジョン・コナーもその一員としてスカイネット率いる機械軍との死闘に身を投じていた。そんなある日、ジョンはマーカ
    ス・ライトと名乗る謎の男と出会う。彼は過去の記憶をなくしており、脳と心臓以外全てを機械化されていた。それでも自
    分は人間だと主張するマーカスに対し、敵か味方か判断しかねるジョン。しかし、将来、彼の父となる少年カイル・リース
    に身の危険が差し迫っている事をマーカスから知らされ、ジョンはある決意を固めるのだが…。
  [寸評]シリーズの4作目にして初めて未来世界が舞台となる。人類滅亡を目論む機械軍(スカイネット)が引き起こした核戦
    争“審判の日”以後の荒廃した世界で、追いつめられたジョン・コナーを始めとする人類抵抗軍の存亡をかけた壮絶な戦
    いを描いた内容。本作から新3部作となる模様。ターミネーター3からは6年ぶり、第1作目が登場してから25年目に登場
    した本作で遂にターミネーターやカイルを送り込んできた未来の世界や抵抗軍を指揮するジョン・コナーの姿が描かれ
    る。根強い人気もあっての事だが、よくここまでたどり着けたものだ。過去の作品を意識した(ある意味、強引にでも関連
    付けしようとしているようにも取れるが)箇所が幾つか登場する(サラ・コナーのテープでのメッセージ、お決まりの台詞、
    シュワちゃんの映像、カイルの○等)ので、懐かしくニヤっとさせられた。それにしても、よくぞここまで描くわ、という感じ
    ですさまじい映像と音響で、ターミネーターもたくさん出てくる。過去3作はいずれも敵となるターミネーターは1基ゆえ、対
    象が絞れ、シンプルだったが、今回は敵まるけで焦点が絞りにくく、疲れを感じた。カイルとジョンの関係は、どうみても
    こんがらがるなあ・・・。ジョンは年下のカイルが父親であり、過去に送り込む事によって命を落とす事まで知っている。
    次作以降になるのだが、彼はどういう経緯でカイルを過去に送る決断をするのだろうか?つっこみ所は幾つかあるし、賛
    否両論もあるだろうが、4作目としてはマズマズだと思うので、本作を起点とした今後の展開に期待したい。
    
33.ロード・オブ・ウォー LORD OF WAR (2005年米)<4.0> 
 [監督]アンドリュー・ニコル
  [出演]ニコラス・ケイジ、イーサン・ホーク、ブリジッド・モイナハン、ジャレッド・レトー、イアン・ホルム
  [時間]122分
 [内容]ソビエト連邦崩壊前のウクライナに生まれ、少年時代に家族と共に米国に渡ったユーリー・オルロフは、やがてニュー
   ヨークにレストランを開いた両親を手伝い、そこで働くユーリーはある時、ギャング同士の銃撃戦を目撃する。この時、彼は
   食事を提供するレストランと同じように、今の世の中では、武器を必要としている人に武器を提供する仕事が求められてい
   ると気づき、弟のヴィタリーと2人で武器売買の事業を始める。危険と隣り合わせの裏社会で天性の才覚を発揮し、世界有
   数の武器商人へと成長していく・・・。しかし、そんな彼にインターポールのバレンタイン刑事が迫ってゆく…。
  [寸評]史上最強の“武器商人”と呼ばれた1人の男の実像をシニカルなタッチで描いたアクション・エンタテインメントで監督
   は「ガタカ」のアンドリュー・ニコル。「ガタカ」に出演していたイーサン・ホークも刑事役として登場する。職場のN君が本作
   品を推奨してくれたので、昨年夏にBOOK-OFFで中古のDVDを購入し、ようやく鑑賞。以前、「トラフィック」という麻薬密売
   を取り扱った作品があったが、今回は銃・武器の密売を取り扱った内容で斬新な切り口だったし、戦車が何台もずらりと並
   ぶ場面は非常にインパクトがあった。(特典映像の監督のインタビューによると、実際に撮影用に借りたのだが、色々と難
   しい事があった模様)ニコラス・ケイズ演じるユーリーが自らの事を語りながら展開していき、裏取引に生きる姿を描いてい
   るが、一人称的な色合いが強すぎ、もう少し強弱があると良かった感じがする。最終的に武器ビジネスをやめない夫を見
   切って、妻子が離れていくが、もともと結婚した際、夫の職業が何かを気にしないものなのだろうか?何はともあれN君によ
   うやく本作品を観た事を語れる・・・

34.レスラー THE WRESTLER (2008年米)<4.0> 
 [監督]ダーレン・アノロフスキー
  [出演]ミッキー・ローク、マリサ・トメイ、エヴァン・レイチェル・ウッド、マーク・マーゴリス、トッド・バリー
  [時間]109分
 [内容]ランディ・ロビンソンは80年代に大活躍したプロレスラーだが、そんな栄光も今は昔の話。それでも彼は老体に鞭打ち
   ながら小さな地方興行に出場して細々と現役を続ける不器用な男だ。一度リングを降りれば、トレーラーハウスに一人で
   住み、スーパーマーケットのアルバイトで細々と食いつなぐ孤独な日々を送っている。そんなある日、長年のステロイド常
   用がたたり、心臓発作で倒れ、ついに引退を余儀なくされる。プロレスなしの人生など思い描けない彼は、馴染みのスト
   リッパーに、その戸惑いと不安を打ち明け、長らく疎遠となっていた娘とも連絡を取り、修復を図ろうとするのだが…。
  [寸評]ミッキー・ロークが、かつて栄光のスポットライトを浴びた人気プロレスラーの孤独な後半生を、自らの波瀾万丈の俳
   優人生と重ね合わせて哀愁いっぱいに熱演した人間ドラマ。この種のドラマには関心を持つが、大概、上映される劇場は
   限られる。上映劇場へ折りたたみ自転車で15Kmの道のりを約1時間5分かけて走り、公開初日朝一番で鑑賞してきた。
   (最近、映画館への往復は自転車が多い)プロレスがゆえ、傷口、血のシーンが多い事、ストリッパーとのロマンスがある
   ので、その手の描写があるので、家族で観るには辛いかな。プロレスが好きで好きで、それ以外には考えれず、不器用極
   まりない生き方しかできないランディには哀愁を感じ、自業自得の面はあるにせよ、何とかハッピーになってよ!という一
   念で注視していた。ストリッパーのキャシディ(彼女が実に上手い演技!)とのロマンスも成就できるチャンスを捨て、修復
   しかけた娘には約束を反故にした事から強烈な絶縁宣言をされ、最後のあの終わり方になる・・・あれは自らの命を断絶す
   る風にも見えるが、どちらにしても彼の生き様は”リングが全て”という事だね。なかなか凝った終わり方だと思う。しかし、
   娘からの絶縁宣言・・・あのシーンは無くても良いのでは・・・・。本作品はロッキーとは違うから仕方ないか・・・。

35.ぐるりのこと。 (2008年日)<3.5> 
 [監督]橋口亮輔
  [出演]木村多江、リリー・フランキー、倍賞美津子、寺島進、安藤玉恵、八嶋智人、寺田農、柄本明、田辺誠一
  [時間]140分
 [内容]1993年、小さな出版社に勤める几帳面な性格の妻・翔子と根は優しいけど優柔不断で生活力に乏しい夫・カナオの
   2人は初めての子供の誕生を控え、それなりに幸せな日々を送っていた。日本画家を目指しながら靴修理屋でバイトをし
   ていたカナオは、先輩から法廷画家の仕事をもらう。戸惑いながらも少しずつ仕事を覚えていくカナオだが、そんなある日、
   生まれたばかりの子供が亡くなるという悲劇が2人を襲う。悲しみのあまり、翔子は次第にうつになっていく。そんな翔子を
   カナオは静かに見守る。一方で彼は法廷画家として、連続幼女誘拐殺人事件や地下鉄毒ガス事件といった様々な大事件
   の裏側を目の当たりにしていくのだが…。
  [寸評]一組の夫婦を主人公に、生まれたばかりの子供の死という悲劇を乗り越え再生していくまでの10年の軌跡を綴るド
    ラマ。2003年秋〜半年TV放映された「白い巨塔」で患者役で印象深い演技を見せた木村多江が、本作品の熱演が認め
    られ、日本アカデミー賞で最優秀主演女優賞を受賞した。2008年キネマ旬報ベスト10でも「おくりびと」に続く2位に評価
    された作品ゆえ、関心があり、レンタルDVDで妻と鑑賞した。生活力も弱く、どことなくだらしない夫と、妙に形式や決まり
    にこだわる妻の夫婦が、妻が子供の死を起因に”うつ”になる試練に対応し、ゆっくりと手を取り合って細々と生きていく
    様は、淡々とした描かれ方ながら、微笑ましい。木村多江の演技は迫力があり、リリー・フランキーの何ともいえないマイ
    ペース風の演技も良かったといえる。最初から分かっているが、激しい展開があるドキドキ感があるとか楽しいという作品
    では決してない。夫婦は助け合って細々と生きていくのが良し!と伝えてくれる。最後の寝そべって手をつなぐシーンは
    印象的だった。カナオの傍聴する裁判には世間をにぎわした90年代の有名な事件を幾つか取り上げているが、単純に
    2人の試練を乗り越える時代背景を風刺したかったのだろうか?

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