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21.名探偵コナン 漆黒の追跡者(チェイサー) (2009年日)<4.0> 
 [監督]山本泰一郎
  [出演]<声の出演>高山みなみ、山崎和佳奈、神谷明、DAIGO、茶風林、緒方賢二、山口勝平、掘之紀
  [時間]110分
 [内容]東京、神奈川、静岡、長野で6件の殺人事件が発生し、いずれの現場にも謎のマージャン牌が残されていた事か
    ら、事件は同一犯による連続殺人として、県警の枠を越えた捜査態勢が敷かれる事になった。そんな中、コナンは警
    察の捜査会議から出てきた男が、ジンのポルシェに乗り、走り去るところを目撃する。ジンこそ、高校生探偵・工藤新一
    を襲い、毒薬を飲ませた張本人だった。はたして、ジンのいる謎の黒ずくめの組織はこの事件にどう関わっているの
    か?更に、コナンの正体が新一だとジンに知られてしまえば、コナンばかりか仲間たちまでもが残らず抹殺されてしま
    う。コナンにとって、かつてない試練と危険が待ち受ける真実への戦いが始まった・・・。
  [寸評]人気TVアニメの劇場版第13弾。2005年から家族で鑑賞するのが定番になっており、今回も劇場公開初日の第1回
    上映を鑑賞。流石にほぼ満員で座席は最後列の隅であった(妻は後ろの人から座席を蹴られるの気にしなくてよいと喜
    んでいた・・・)。今回は私がかねてから待望していたコナン(工藤新一)の宿命の敵である黒ずくめの組織が絡んできて
    ここ近年ではかなりスリリングで楽しめる内容だと思う。一姫はTVシリーズを欠かさず観ており、黒ずくめの組織は時折
    TVシリーズには登場しているようで、私とは本作に対して、違う感じ方をしていた。コナンの正体を知っていながら、真相
    をボスに明かさないベルモットや今回暗躍する人の行動も不可解ではあるが、まだまだ黒ずくめの組織とは色々とあり、
    話は当面続く事を示唆した終わり方になっている。最後の東都タワーでの蘭の格闘シーン、コナンと黒ずくめの組織が
    操るヘリコプターとの戦いは見応えがあった。最後に連続殺人事件のトーンが落ち、中途半端な感じになった気もする
    が、やはりコナンの見せ場は新一と蘭がお互いの思いを秘めながら、懸命に戦い、危機を脱出する所でしょう。来年も
    劇場版第14弾が公開されるので楽しみにしている。
    
22.誰が電気自動車を殺したか? WHO KILLED THE ELECTRIC CAR? (2006年米)<3.5> 
 [監督]クリス・ベイン
  [出演]チェルシー・セクストン、トム・ハンクス(アーカイブ映像)、メル・ギブソン(アーカイブ映像)
  [時間]92分
 [内容]1996年、アメリカのカリフォルニア州では、電気自動車の導入を政策に盛り込んだ。しかしある時期を境に、電気自動
    車は町から姿を消した。その影には、何かの陰謀が隠されているのだろうか…。
  [寸評]地球に優しい電気自動車は燃料を海外からの輸入に頼らなくてもいい。そんな車の導入に乗り気だったカリフォルニ
    ア州に現在、電気自動車が走っていない理由を描いたドキュメンタリー。レンタル店で「自動車業界勤務者は必見!」と
    表示されていた事から本作品をDVDレンタルして鑑賞。私の情報感度が鈍い以外に何物でもないのだが、私はこの動き
    を知らなかった。非常に興味深い内容で「誰が容疑者か?」を色々な角度で追及・糾弾していく。現在、家電量販店で電
    気自動車を売りに出す事を語った本が並んだり、大前研一氏は「プリウス・インサイト等のHV車よりも電気自動車へ移
    行していくべきだ!」と論じている。自動車販売が厳しい状況になってきている状況ゆえ、今後、新たな道を切り開いてい
    かなければならないのだが、それが電気自動車になるのか否か?どう変わるにしても既存のビジネスに大きな波が寄せ
    る事には違いない。面白いというより勉強になり、考えさせられた作品だった。

23.グラン・トリノ GRAN TORINO (2008年米)<4.5> 
 [監督]クリント・イーストウッド
  [出演]クリント・イーストウッド、ビー・ヴァン、アーニー・ハー、クリストファー・カーリー、コリー・ハードリクト
  [時間]117分
 [内容]長年一筋で勤め上げたフォードの工場を引退し、妻にも先立たれた孤独な老人ウォルト・コワルスキーは自宅を常に
    綺麗に手入れしながら、M-1ライフルと72年製フォード車グラン・トリノを心の友に静かで退屈な余生を送っていた。しかし
    彼の暮らす住宅街に、もはや昔馴染みは一人もおらず、朝鮮戦争帰還兵であるコワルスキーが嫌ってやまないアジア人
    を始め、移民の外国人ばかりが我が物顔でねり歩く光景に苦虫をかみつぶす毎日だった。そんなある日、彼が大切にす
    る庭で、隣に住むモン族の気弱な少年タオが不良少年グループに絡まれていた。彼らを追い払おうとライフルを手にした
    コワルスキーだったが、結果的にタオを助ける事になった。タオの母親と姉がこれに感謝し、以来何かとお節介を焼き始
    める。最初は迷惑がるものの、次第に父親のいないタオのことを気に掛けるようになるコワルスキーだったが…。
  [寸評]巨匠クリント・イーストウッド監督が、「ミリオンダラー・ベイビー」以来となる監督と主演を兼ねた作品で、自身で世の
    中に怒れるガンコ老人を演じた感動の人間ドラマ。急速に様変わりしていく世間を嘆き、孤独に生きる人種差別主義者の
    偏屈な老人が、ひょんな事から隣人のアジア系移民家族と思いがけず交流を深めていく様を綴った内容。本当に素晴ら
    しい作品だった。物悲しいのだが、コワルスキーの選択した行動には納得させられる。残り少ない生命と分かり、最後の
    最後に善行をして、生きる意味・自身の存在価値を立派に示した。示した対象が家族でないところが、黒澤明監督作品
    の「生きる」とどことなくダブルのだが・・。妻を「最高の女性」と人に語ったり、ユーモアや正義感がある彼が、自ら懺悔し
    ているように、何故あれだけ息子・孫達と溝を生じさせてしまったのだろうか?息子が妻や子供達に父親を悪く言う姿も
    醜いし、あれではますます妻や子供達も尊敬しなくなってしまう。この作品は生命・家族・正義・懺悔・信念等、様々なテ
    ーマを存分に織り込んだ重厚な優れものである。それにしてもスーをひどい目に遭わせる奴等は本当に許せない。
    宮部みゆき作品にもあったが、ああした無差別攻撃は断じて世の中からなくなってほしい。一人一人の生命は尊い・・・。
    クリント・イーストウッドには本当に敬服する。現在、一番優れた作品を提供できる人ではないか?今年の鑑賞作品の中
    でも本作品と「チェンジリング」は卓越している。

24.めがね (2007年日)<3.5> 
 [監督]荻上直子
  [出演]小林聡美、市川実日子、加瀬亮、光石研、もたいまさこ、薬師丸ひろ子、橘ユキコ、中武吉
  [時間]106分
 [内容]春まだ浅い南の小さな海辺の町。空港に一機のプロペラ機が着陸した。小さなバッグを手にタラップを降りてきためが
    ねの女性は、迎えの人に深々と一礼する。同じ飛行機から降りてきたもう一人の女性のタエコは、大きなトランクを引きず
    りながら、地図を片手に不安げに向かった先は小さな宿、ハマダである。出迎えたのは宿の主人、ユージと犬のコージ
    だ。翌朝、寝ていたタエコは、足元にたたずむ常連客サクラの唐突な朝の挨拶に度肝を抜かれる。その後も、不思議な体
    操や奇妙な人達の言動にペースを狂わされてばかりのタエコは、ついにたまりかねて宿を替えることにするのだが…。
  [寸評]「かもめ食堂」の荻上直子監督が再び小林聡美を主演に迎え、のどかな海辺の町を舞台に描くスローライフ・ムービ
    ー。都会から何かを求めて南の海辺の小さな宿にやって来た一人の女性が、揃いも揃って風変わりな周囲の人々に戸
    惑いながらも、少しずつ彼らののんびりしたペースに馴染んでいく様子を、淡々とユーモラスに綴った内容。「かもめ食堂」
    を以前観た事から本作品はずっと気にかけていたので、レンタルDVDで鑑賞。綺麗な海に囲まれた島を舞台にして、登
    場人物の台詞も少ないのだが、映像を観ているだけで、ほのぼのとのんびりした気分にさせられる。登場人物の過去や
    正体は特に明かされず、謎だらけなのだが、「まあ、そんな固い事を言わず、のんびりしようよ!」というノリの内容だ。1ヶ
    月ぐらい、あのような場所でゆっくりするのも良いかもしれない。日々会社でせわしい思いをしている中で、清涼感を感じさ
    せてくれる作品。但し、内容は最初から最後迄淡々としているので、好みは分かれるかも・・・。荻上監督の前作の「かも
    め食堂」の方がメリハリはあったかもしれない。
  
25.スラムドッグ$ミリオネア SLUMDOG MILLIONAIRE (2008年英・米)<5.0> 
 [監督]ダニー・ボイル
  [出演]デヴ・バテル、マドゥル・ミッタル、フリーダ・ビント、アニル・カブール、イルファン・カーン
  [時間]120分
 [内容]インドの国民的人気番組“クイズ$ミリオネア”。この日、ムンバイ出身の青年ジャマールが、次々と難問をクリアし、
    ついに未だかつて誰も辿り着けなかった残り1問の所までやって来た。ところが、1日目の収録が終わり、スタジオを後に
    しようとしたジャマールは、イカサマの容疑で警察に逮捕されてしまう。スラム育ちの孤児でまともな教育を受けたことも
    ないジャマールがクイズを勝ち抜けるわけがないと決めつけ、警察は執拗な尋問と拷問を繰り返す。ジャマールは自らの
    無実を証明するため、これまでに出された問題の答えは、すべてストリートで生きながら学んだと、その過酷な過去を語
    り始めるのだったが…。
  [寸評]日本では”みのもんた”が取り仕切るお馴染みのクイズ番組で、史上最高額まであと1問と迫ったスラム育ちの青年
    が語る過酷にして波瀾万丈の生い立ちが、多彩な要素を巧みに織り込みつつスリリングに描かれてゆく内容。世界中
    で数々の映画賞を獲得し、今年のアカデミー賞で作品賞を含む最多8部門を受賞する快挙を成し遂げた。アカデミーの
    最優秀作品を鑑賞する前は非常に期待するものの、期待に反するケースもある。今回も若干の不安を持って望んだ
    が、数多くの受賞をしている事に便乗する訳ではないが、本作品は本当に面白く素晴らしかった。久々に素直な気持ち
    で「5.0」ポイントをつけられる。スラムでの厳しい生活、兄との確執・(生き延びるがゆえの)生き様の違い、ラティカへの
    想いを上手く絡めて、回想から現実につなげていく見せ方は感心させられる。私は悪い癖だが、面白い作品でも時折経
    過時間が気になり、腕時計を見てしまうのだが、本作品は時計を見る事なく作品に釘付けにさせられた。辛辣な体験が
    人を強くもするし、道を誤る事にもなる。その中で純粋な思いを貫く様は尊く美しい。本作品はその辺を至ってシンプル
    に描けていると思う。あくまで好みは分かれると思うが、私にとっては傑作でした。本作品はインドが舞台という事で独特
    に踊りのシーンは見られるかと思ったら、本編にはなかったものの、しっかりエンドロールで見せてくれました。

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