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11.歩いても 歩いても (2008年日)<3.5> 
 [監督]是枝裕和
  [出演]阿部寛、夏川結衣、YOU、高橋和也、田中祥平、加藤治子、寺島進、樹木希林、原田芳雄
  [時間]114分
 [内容]夏の終わりの季節。高台に建つ横山家は開業医だった恭平はすでに引退し、妻・とし子との2人暮らしである。ある
    日、久々に子供達が各々の家族を連れて帰郷した。その日は、15年前に亡くなった長男の命日・・・。次男の良多は、
    もともと父とそりが合わなかった上、子連れのゆかりと再婚して日が浅い事もあり、渋々の帰郷である。両親が未だに長
    男の死を受け止めきれずにいる事が、良多の心をますます重くする。いつも陽気でソツのない長女のちなみは、そんな
    家族の間を取り持ち、家の中に軽い空気を持ち込むが…。
  [寸評]長男の命日のために、老いた両親に家に久々に顔を揃えたある一家の一日をスケッチした家族ドラマ。昨年夏頃に
    愛知県で1or2館でしか上映されていなかったが、関心があった。08年のキネマ旬報の邦画部門で5位になった事もあり
    DVD新作レンタルで鑑賞。老いた両親のもとに娘家族と次男(子連れ再婚)家族が集まり、亡き長男を偲び、家族ならで
    はの会話、心の動きを繊細に描いた内容で淡々としていながら、会話の一字一句が心情を表しており、真剣に観ていな
    ければならない。各々の思いや本音が語られ、樹木希林や原田芳雄を始め、キャストの演技が上手い。良多は子連れ
    の女性と再婚し、かつ失業中という宙ぶらりん状態なので、彼の後々を懸念していたが、最後のシーンを観て安堵した。
    起伏のない淡々とした話だが、観終わってみるとそれなりに余韻が残った。

12.長い長い殺人 (2007年日)<3.5> 
 [監督]麻生学
  [出演]長塚京三、仲村トオル、谷原章介、平山あや、酒井美紀、窪塚俊介、伊藤裕子、西田尚美、石井正則
  [時間]135分
 [内容]東京郊外で暴走車によるひき逃げ事件が発生した。死亡した男性の妻・法子には愛人がおり、男性に3億円の保険
    金がかけられていた事から法子と愛人の塚原の2人に疑惑の目が向けられる。しかし、彼らには完璧なアリバイがあっ
    た・・・。
  [寸評]宮部みゆきの同名ベストセラーをWOWWOW“ドラマW”枠で映像化したミステリー・サスペンス。2007年11月4日に
    WOWWOWにて初放映後、2008年5月に劇場公開された。非常に興味があったのでレンタルDVDで妻と鑑賞した。連続保
    険金殺人事件を巡る謎を、関係者の“財布”が語り手となって突き詰めていく。「理由」同様、章立てで描かれているので
    メリハリがあるが、確かにタイトル通りの内容とうなづける。宮部みゆき作品は結構好きだが、今回の犯人は「模倣犯」の
    犯人と類似したタイプで背筋が凍る。可愛い子供を持つ親の身にしたら、たまったものじゃない・・・・。話には引き込まれ
    たが、何とも後味が悪かった。それにしても伊藤裕子は嫌な役が、西田尚美は哀れな役が定番な感じだね。本人達もい
    いキャラを演じたいだろうに・・・
   
13.チェンジリング CHANGELING (2008年米)<4.5> 
 [監督]クリント・イーストウッド
  [出演]アンジェリーナ・ジョリー、ジョン・マルコヴィッチ、ジェフリー・ドノヴァン、ジェイソン・バトラー・ハーナー
  [時間]142分
 [内容]1928年のロサンゼルス。シングルマザーのクリスティン・コリンズは、9歳の息子ウォルターを女手一つで育てる傍ら
    電話会社に勤め、せわしい日々を送っていた。そんな彼女はある日、休暇を返上してウォルターを一人家に残したまま
    出勤する羽目になる。やがて夕方、彼女が急いで帰宅すると、ウォルターは忽然と姿を消していた。警察に通報し、翌日
    から捜査が始まる一方、自らも懸命に息子の消息を探す・・・。しかし、有力な手掛かりが何一つ掴めず、非情で虚しい時
    間がただ過ぎていくばかりだった・・・。それから5ヶ月後、ウォルターがイリノイ州で見つかったという朗報が入る。そして、
    ロス市警の大仰な演出によって報道陣も集まる中、再会の喜びを噛みしめながら列車で帰ってくる我が子を駅に出迎え
    に行ったのだが、列車から降りてきたのは、ウォルターとは別人の全く見知らぬ少年だった…。
  [寸評]1920年代のロサンゼルスで実際に起きた事件をクリント・イーストウッド監督が映画化。5ヶ月の失踪の後、保護され
    て帰ってきた幼い息子が別人だった事から、本物の我が子を取り戻すため、捜査ミスを犯した警察の非道な圧力に屈す
    る事なく真実を追及していくシングルマザーの長きに渡る孤独な闘いを綴った内容。予告編を何度も観たし、ネットでの
    評価も高く、期待して妻と劇場で鑑賞した。この話は実話に基づく、という事だが、内容は冒頭から最後まで目が離せ
    ない。非常に強烈でインパクトがある。警察や市長、病院、何よりも犯人に対する憤りを感じ、後半にそれが少しは解消
    できるものの、最後迄すっきりはしない。鑑賞後は、何かモヤモヤした感じが残り、子を持つ親としては、やるせない心境
    になる。しかし、やりすぎか!(悲しいかな真実なのだろうが・・・)と思うほど、警察、病院等のえげつなさを描写し、それ
    らに対峙するクリスティン達の姿に引き込まれる屈指の傑作といえると思う。何故に本作品がアカデミー賞の作品賞に
    ノミネートされないか疑問に思う(過激だからかな?)。アンジェリーナ・ジョリーはこうした演技もするんだ!という名演で
    主演女優賞にノミネートされているけどね・・・。妻は(本作品を傑作と言う)私とは少し違う感じ方をしていた。妻と鑑賞
    後に交わす会話は楽しいものです。(最近、過激系をひくようになってきた・・・)

14.タイガーランド TIGERLAND (2000年米)<4.0> 
 [監督]ジョエル・シューマカー
  [出演]コリン・ファレル、マシュー・デイヴィス、クリフトン・コリンズ・Jr.、トーマス・グイリー、シェー・ウィガム
  [時間]101分
 [内容]1971年、ルイジアナ州ポーク基地。ベトナム戦争が長引き泥沼化していく中、新兵たちはここで訓練を積み、最後に
    “タイガーランド”と呼ばれる地で、一週間におよぶ実戦さながらの訓練を経て戦地であるベトナムへと送られる。そんな
    中、 ここに上官に向かって反戦を公然と口にする新兵ボズがいた。彼は軍規の抜け道を利用して苦しんでいる仲間達を
    除隊へと導いたりもしていた。しかし、一方でボズ自身の兵隊としての能力は一流だった。やがてボズは新小隊長に任
    命されるが、隊員の一人のウィルソンはそんなボズの考え方に反感を抱いていた…。
  [寸評]本作品は、「ロッキー・ザ・ファイナル」のDVDキャンペーンでGETしたもので、ようやく鑑賞した。ベトナム戦争出兵を
    目前に、反戦を力強く意思表示し人間性を失わなかった一人の青年と彼に影響を受ける若者達の心の機微をリアルに
    描いた人間ドラマである。何も戦場で戦うシーンを描くだけが戦争映画ではない。本作品の視点はなかなか新鮮だった。
    戦場に赴く前の訓練場において、精神的におかしくなる者、複雑な家庭事情から戦場に乗り込むものの、厳しい現実に
    立ちすくむ者、主役のボズをとことん憎む者等、当然おこりうるであろう兵士達の心理状況(葛藤・軋轢)を的確に生々しく
    描いている。なかなか優れた戦争映画だと思う。戦争は何も良い事はもたらさない。主役のボズが、反戦を訴えるシンボ
    ルで、訓練場でドライでありながらも、ハートを持って人と接しており(憎まれもするが)、好感持てるキャラであった。

15.ジェネラル・ルージュの凱旋 (2009年日)<4.0> 
 [監督]中村義洋
  [出演]竹内結子、阿部寛、堺雅人、羽田美智子、山本太郎、貫地谷しほり、尾美としのり、平泉成、國村隼
  [時間]123分
 [内容]東城大学付属病院の不定愁訴外来医師・田口は、院内の諸問題を扱う倫理委員会の委員長に任命されてしまった。
    そんな彼女のもとに一通の告発文書が届く。その内容は、“救命救急の速水晃一センター長は医療メーカーと癒着し
    ており、花房看護師長は共犯だ”という衝撃的なものだった。速水は“ジェネラル・ルージュ”の異名を持ち、優秀だが
    冷徹で非情な性格から悪い噂が絶えない・・・。しばらくして、告発された医療メーカーの支店長が院内で自殺する事件
    が起こる。田口は院長から院内を探る密命を受ける。更に骨折で運び込まれてきた厚生労働省のキレモノ役人・白鳥
    と再会し、彼にも同じ告発文書が届いていた事を知る。こうして2人は再びコンビを組み、この一件を独自に調査する事
    になった…。
  [寸評]現役医師の作家・海堂尊によるベストセラー小説を基に、窓際女性医師・田口とキレモノ役人・白鳥の活躍を描い
    た「チーム・バチスタの栄光」の続編。原作シリーズ第3作目を映画化した作品。”「チーム・バチスタの栄光」の小説は
    面白いけど、映画はイマヒトツ”という職場の人の意見もあり、興味はありながら昨年の劇場公開時は見送り、すかさず
    続編が登場してもノーマークでいた。元々子供達の「ドラえもん」の新作の鑑賞に付き合おうと思っていたが、同じ時間
    帯で観れそうな作品を探したところ、丁度いいタイミングなのが本作品で妻と鑑賞し、子供達とは鑑賞後に待ち合わせす
    る事にした。あまり強い期待をせずに観たが、冒頭はやや緩い感じがしたものの、どんどん引き込まれ、最後まで楽し
    ませてもらった。思わぬ儲けもの!という感じだ。速水役の堺雅人は「篤姫」「クライマーズ・ハイ」等で最近、注目をあ
    びている、との事だが、私の所属部署の入社1年目のH君に似ている!H君ではないか!と思って観ていた。いつもは
    善人役を演じる某氏が悪玉だった、というのは変な感じだったな・・・。病院の経営の厳しさ、救急医療の過酷さ、院内で
    の人間関係等、生々しく描かれているし、救急医療時の患者の優先付け等、色々と勉強にもなった。総じて良い作品で
    「チーム・バチスタの栄光」もレンタルDVDで観てみよう・・・(先日、TV放送された時に母も「イマイチ」とは言っていたが)

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