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36.築地魚河岸三代目 (2008年日)<4.0> 
 [監督]松原信吾
  [出演]大沢たかお、田中麗奈、伊原剛志、森口瑤子、柄本明、伊東四朗、大杉漣、佐野史郎、森下愛子
  [時間]116分
 [内容]都内の総合商社に勤める赤木旬太郎は、これまでは順風満帆に会社生活を送ってきて、装飾デザイナーの恋人・明
    日香と将来結婚したいと考えていた。そんな彼は、ある未明、明日香が築地市場へ向かう姿を目撃する。何と彼女は、
    仲卸の名店“魚辰”の二代目店主・徳三郎の一人娘だったのだ。そして旬太郎は、体調不良で入院する父の代わりに切
    り盛りする明日香をサポートしたい一心から、自ら手伝う事にした。しかし、この業界ではど素人の上、何も役に立てずに
    打ちのめされるが、同時に人情味溢れる世界に清々しさを覚えるのだった。一方、社内ではリストラの陣頭指揮を任され
    るものの、淡々と会社の意思に従う働き方に疑問を感じ始める。やがて旬太郎は一大決心して、会社を辞め、退院した
    徳三郎に魚辰で働く事を願い出る…。
  [寸評]小学館のビッグコミックにて連載されている人気コミック(未読ですが・・)を実写化した人間ドラマ。予告編に、私も妻
    も、やたら引付けられた事から、有休の日に一緒に鑑賞。本作品は「男はつらいよ」「釣りバカ日誌」に続く人情ドラマと
    して期待された作品で、公開前からシリーズ化する事を宣言している。旬太郎のような純粋で一直線なタイプの人間は
    私的には非常に好きである。余りに一直線すぎる所があるが、情が厚いので決して憎めない。築地の人達に当初は疎
    まれながらも、一生懸命ひたむきに努力する姿勢は見習わなければならない。本作品の一番胸を打たれた所は、明日
    香と英二の秘密を打ち明ける会話のシーンで、これを観るだけで本作品の価値はある。徳三郎と正治郎のやり取り等、
    微笑ましい人間味あふれる場面が多く、何かホッとさせられる。まだまだ始まったばかりで、今後、どういう展開をしてい
    くのか楽しみである。私はどうも人情物が好きである・・・。

37.マリと子犬の物語 (2007年日)<4.5> 
 [監督]猪股隆一
  [出演]船越栄一郎、松本明子、広田亮平、佐々木麻緒、高嶋政伸、小野武彦、宇津井健
  [時間]124分
 [内容]新潟県山古志村に暮らす石川家は、村役場に勤める優一と息子の亮太、娘の彩、祖父の優造の4人家族である。
    母親を早くに亡くした亮太と彩は、ある日、ダンボールに捨てられた子犬を見つけ、同じ母のいない境遇を不憫に感じて
    連れて帰る。そして、祖父を味方につけて、犬嫌いの父を説得し、ついに飼う事になる。こうして子犬は石川家の家族と
    なり、”マリ”と名付けられて大切に育てられる。1年を経過した2004年、成長したマリは3匹の子犬を産んだ。しかし、そ
    んな喜びも束の間、彼らの村をマグニチュード6.8の大地震が襲う…。
  [寸評]“新潟県中越地震”で大きな被害に見舞われた山古志村で、失意の被災者を勇気づけた奇跡の実話を映画化した
    作品。地震の被害で全村避難となり、愛犬マリと3匹の子犬を村に残さざるを得なかった飼い主の家族の苦悩と、エサも
    ない中、我が子を懸命に守り抜く母犬マリの奮闘を描いた内容。中越地震があった日は、たまたま家族で大阪を訪れて
    いてTV中継を見ながら、何ともいえない気分になったのを覚えている。レンタルDVDで妻子と一緒に鑑賞したが、大地震
    の光景を、非常に恐ろしく描写していて、地震に敏感な一姫は鑑賞を一時避難したほどだ。今年も中国・四川、東北と
    大地震が発生し、本当に気持ちを引き締めて備えを図らねばならないと思う。(本当に遭遇したくないけど・・・)本作品の
    内容・展開は何となく想像通りだったが、家族間の絆、犬との絆、犬の親子の絆を、正当に描写(うん、それはそうだ!と
    いう感じ)していて、胸を打たれる。私も優一さん同様、犬が苦手で、子供達が犬を飼いたい、という要望をかわしてい
    る。犬が苦手な私でも、本作品のマリ達には感動し、応援したくなる。大地震による非常に辛い厳しい中での、心温まる
    エピソードで観て良かった作品です。

38.告発のとき IN THE VALLEY OF ELAH (2007年米)<3.5> 
 [監督]ポール・ハギス
  [出演]トミー・リー・ジョーンズ、シャーリーズ・セロン、スーザン・サランドン、ジョナサン・タッカー
  [時間]121分
 [内容]2004年11月1日、元軍警察のハンク・ディアフィールドのもとに、軍に所属する息子のマイクが行方不明だとの連絡
    が入る。軍人一家に生まれ、イラク戦争から帰還したばかりのマイクに限って無断離隊などあり得ないと確信するのだ
    が、不安に駆られた彼は、息子の行方を捜すため、基地のあるフォート・ラッドへ向かう。同じ隊の仲間に話を聞いても
    事情はさっぱり分からず、念のため地元警察にも相談してはみたものの、まともに取り上げてはもらえず途方に暮れる。
    そんな中、女性刑事エミリー・サンダースの協力を得て捜索を続けるが、その矢先、マイクの焼死体が発見されたとの
    報せが届く。悲しみを乗り越え、真相究明のためエミリーと共に事件の捜査に乗り出すが…。
  [寸評]「クラッシュ」のポール・ハギス監督が、イラク戦争から帰還した一人の兵士を巡る衝撃の実話を映画化したミステリ
    ー・ドラマで、帰還後、間もなく無断離隊したと連絡を受けた父親が、息子の汚名を拭うべく行方を捜す中で次第に浮か
    び上がる過酷な真実を描き出す。本作品は実話に基づくもので、米国の軍隊、警察の実状(女性刑事に対するセクハラ
    もあり)を描写しているが、果たしてどこまでが真実なのかは疑問符だ。全般的に渋くて良い内容だとは思うが、ハンク
    が真実を追求していく過程がやや中だるみの感じがして、何となくもどかしくて時間が長く感じた。シャーリーズ・セロン
    の女刑事役は適役だったが、スーザン・サランドンの使い方が中途半端で、もう少し、夫婦間・母子間の感情・絆を浮き
    彫りにして見せてくれるとよかったと思う。

39.クライマーズ・ハイ (2008年日)<3.5> 
 [監督]原田真人、堺雅人、尾野真千子、高嶋政宏、山ア努、遠藤憲一、田口トモロヲ、西田尚美、小澤征悦
  [出演]堤真一、
  [時間]145分
 [内容]1985年8月12日。群馬、北関東新聞の記者・悠木和雅は、一匹狼として行動する遊軍記者である。社内の登山サー
    クル“登ろう会”の仲間で販売局所属の親友・安西と共に、翌日谷川岳の衝立岩登頂に挑もうと準備を進めていた。そ
    の最中、乗員乗客524人を乗せた羽田発大阪行きの日航機123便が”群馬と長野の県境に墜落した模様”との一報が
    入る。こうして悠木達は、前代未聞の大事故をめぐる熾烈な報道合戦に身を投じていくのだった。さらに悠木は全権デ
    スクを命じられ、社内外での駆け引きや軋轢に苦しみながらも使命を全うしようと奔走し続ける。だがそんな中、独り、
    谷川岳へ向かったと思われた安西がクモ膜下出血で倒れたとの報せを受ける…。
  [寸評]当時、地元紙記者として御巣鷹山日航機墜落事故を取材した作家・横山秀夫が、自らの体験を基に“世界最大の航
    空機事故”を最前線で扱う事になった地方新聞社が異常な昂奮状態に置かれ、社内外で壮絶な軋轢と葛藤を繰り広げ
    ていく狂騒の一週間を極限の臨場感で描き出した小説を映画化した作品。以前、山ア豊子原作の「沈まぬ太陽」を読ん
    で日航機墜落事故の凄惨さに衝撃を受けた。この原作本も関心を持ち、1年以上前に購入したものの、寝かせていたが
    映画公開される前には読破しようと駆け込みで手に取り、読了した。最初は取っ付きにくかったが、後半にいくにつれテ
    ンションが上がっていき、ラストの記事掲載の件は胸を打たれたので、映画ではどのように描かれるか興味があった。
    良い原作程、それを超える映画は余りない傾向の中、不安も抱きながら、「告発のとき」に引き続き、梯子で本作品を
    鑑賞。145分を時間を苦にする事なく、それなりに引き込まされて鑑賞できるのは確かだ。原作を読了した直後だから、
    あの記事の掲載の件が無かった事、悠木の妻と娘が出て来ない事、燐太郎と悠木の現在の登山のシーンは、2人と淳
    の関わりが描写されていないので宙に浮いている事、ニュージーランドのシーンは、まるで意味をなさない事が非常に
    不満に思う。限られた時間枠の中で描くのは難しい所はあるが・・・・悠木を始め、血気盛んな人が多く、新聞社の中は
    ああいう雰囲気なのかな?上下関係なく、罵倒しまくる光景が、すさまじく、ある意味で人間味や迫力を感じるが、あれ
    で禍根なくいくのかな?という感じもした。(最近は、概ね、血気盛んな事が咎められるような風潮があるだけに・・・)
    ネットで見ると佐藤浩市が悠木を演じたNHKドラマは好評だが、どういう描写をしたのか興味がある。また時間があれば
    レンタルDVDで観てみよう・・・

40.酒井家のしあわせ (2006年日)<3.0> 
 [監督]森田直幸、ユースケ・サンタマリア、友近、鍋本凪々美、谷村美月、栗原卓也、濱田マリ、笑福亭仁鶴?
  [出演]呉美保
  [時間]102分
 [内容]酒井家は一見ごく普通の家族だが、母・照美と父・正和は再婚で、中2の息子・次雄は照美と前夫の連れ子で、一
    方、下の娘・光は照美と正和の間にできた子供で、次雄とは父親違いの兄妹というちょっと複雑な家庭だった。そんな
    ある日、照美とケンカした正和が突然、好きな男が出来たという衝撃の告白をして家を出て行ってしまう…。
  [寸評]本作が長編デビューとなる呉美保監督が、2005年のサンダンス・NHK国際映像作家賞日本部門を受賞した自ら
    の脚本を映画化したホーム・コメディ。近所のレンタル店で旧作100円の日に何気に目に留まり、DVDレンタルして鑑賞
    した。冒頭から割と淡々とした感じで進み、途中から各登場人物が思っている事をなかなか素直に吐き出さず、もどか
    しくてしょうがない事が多いが、観終わると、それなりに各々の温かさが伝わり、後味はマズマスという感じだ。ユース
    ケ・サンタマリアは色々な役柄を演じるものだ。正和の思いも分かるが、やはり家族皆でバックアップしあえる形がよ
    いと思う。最後は悲しい方向性の中でも、そこでのもがき、温かい所を見せているのは救いだ。

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