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16.世界最速のインディアン THE WORLD'S FASTEST INDIAN (2005年ニュージーランド・米) <4.5>
[監督]ロジャー・ドナルドソン
[出演]アンソニー・ポプキンス、クリス・ローフォード、アーロン・マーフィ、クリス・ワイリアムズ、ダイアン・ラッド
[時間]127分
[内容]ニュージーランド南端の町インバカーギルで、小さな家に独りで暮らしている初老の男バート・マンローは、40年以上
も前のバイク“1920年型インディアン・スカウト”を自ら改造し、ひたすら速く走る事に人生を捧げてきた。そんな彼の夢は
ライダーの聖地、アメリカのボンヌヴィル塩平原(ソルトフラッツ)で世界記録に挑戦する事だ。いよいよ肉体的な衰えを痛
感し、もはや挑戦を先延ばしにはできないと悟り、周囲の人々の協力もあってどうにか渡航費を捻出すると、貨物船にコ
ックとして乗り込み、海路アメリカを目指すのだったが…。
[寸評]63歳にしてニュージーランドから遠路アメリカへ渡り、世界最速記録を打ち立てた伝説のライダー、バート・マンロー
の感動の実話を映画化した作品。一生を懸けて夢を追い続けた型破りな主人公の人生を、レース会場を目指す遥かな
道程の中で出会う様々な人々との暖かな触れ合いを中心に微笑ましく描いた内容。本作品では「私はバートだ」と自己
紹介して握手する場面が何度も出てくる正にロード・ムービーだ。バートの人柄か、行く先でピンチになっても、温かい人
達に恵まれ、支えられて乗り切っていく。そんなに善人ばかりと出会うか?と思うが、まあ良しとしよう。バートを演じるア
ンソニー・ポプキンスはレクター・ハンニバル役の印象が強すぎて、また、いつ噛みつくのではないか?と疑念を持って観
ていたが、本当に好々爺という感じだった。最後の走行シーンは緊迫感があり、手に汗を握って応援した。夢を追い求
め、地道に歩く様は美しい。映画評も好評だったので関心を持ち、レンタルDVDで鑑賞したが、何とも微笑ましく楽しい
作品だった。
17.UDON (2006年日) <3.5>
[監督]本多克行
[出演]ユースケ・サンタマリア、小西真奈美、トータス松本、鈴木京香、片桐仁、小日向文世、木場勝己
[時間]134分
[内容]讃岐うどんの本場、香川県でうどん職人の息子として生まれた松井香助は、ビッグになる(世界中を笑わす芸人にな
る!)と言って家を飛び出し、ニューヨークへと渡った。しかし、夢半ばで挫折し、借金を背負って帰郷する・・・。そして、
親友の紹介で地元のタウン誌で働き始めたが、そこで彼は、編集部員の宮川恭子と2人でうどんをテーマにしたコラムを
開始すると、これが大反響を呼び、ついには日本中を巻き込む一大うどんブームへと発展していくのだが…。
[寸評]「踊る大捜査線」シリーズの亀山千広プロデューサーと本広克行監督が、“讃岐うどん”をめぐって繰り広げられる様
々な人生模様を描いた作品で、予告編をよく目にしていたので興味もあり、TV放送されたので、すかさず録画して妻と
鑑賞。フジテレビ系の作品であるため、小倉・笠井・佐々木・中野アナがニュース・インタビューのシーンで登場し、愛嬌
がある。話はマズマズ面白いし、実際にうどんを食べてみたい気になるし、香助の父親の仕事への思い等、見習わなけ
ればならない点があると思ったが、夢の中でのアニメ・CGシーン等、おふざけで意味がない所が数ヶ所あった。香助の
最後の行動は何か不可解で良く分からなかった。父の言葉を基に踏み切ったのかもしれないが、私は素直に父に語っ
た事を貫いてはしかったけど・・・。TV放送を録画して気軽に楽しめる作品ではあります。G.Wに上映される本作品の
本多監督、柴咲コウ主演の「少林少女」が実は密かに楽しみにしているが、出来はいかに??
18.息子 (1991年日) <4.0>
[監督]山田洋次
[出演]三國連太郎、永瀬正敏、和久井映見、田中隆三、原田美枝子、浅田美代子、佐藤B作、田中邦衛
[時間]121分
[内容]東京でフリーアルバイターとして生活している哲夫は、母の一周忌に岩手の田舎に帰るが、フラフラした生活に不満
を持つ父・昭男とはギクシャクしたままだった。東京へ戻った哲夫は、下町の鉄工場で働き始める。そこで取引先の倉
庫で働く征子と出会う。やがて、哲夫は征子が聾唖であること知るのだが…。
[寸評]椎名誠の『倉庫作業員』を基に、田舎に住む父親と都会でフリーアルバイターを続ける息子との葛藤を描いたドラマ。
山田洋次監督の作品は「学校」シリーズを始め、今年は「母べえ」「武士の一分」というようによく観ている。その中で以
前から気になっていながら未見だった本作品をレンタルDVD(今回は100円)で妻と鑑賞。妻に先立たれた年老いた父親
の今後を懸念して都会でまっとうに所帯を持って生活している長男・忠司と職を転々としている次男・哲夫を対比させ、取
り巻く人々を絡め、父との関係・思いを描いた、しみじみと身にしみる話である。登場人物が豪華キャストで皆が好演し
ている。最近、あまり見ない和久井映見も当事は引く手あまただったのだろうな。哲夫と征子が親しくなった過程が省
かれていたので(時間上、やむを得ないのか?)、そこを観てみたかったな。親は子が可愛いもので、何とか自立して
迷惑をかけずに生きていってくれるのが何より。昭男がタイプの異なる忠司、哲夫に寄せる眼差しは何かよく分かるし、
微笑ましい。我が家の「息子」は将来、どのように成長していくのかな?
19.ノーカントリー NO COUNTRY FOR OLD MEN (2007年米) <3.5>
[監督]ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
[出演]トミー・リー・ジョーンズ、ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブローリン、ウディ・ハレルソン、ケリー・マクドナルド
[時間]122分
[内容]ベトナム帰還兵であるモスは、人里離れたテキサスの荒野でハンティング中に、銃撃戦が行われたと思しき麻薬取
引現場に出くわした複数の死体が横たわる現場の近くで、200万ドルの大金を発見した彼は、危険と知りつつ持ち帰っ
てしまう。その後、魔が差したのか不用意な行動を取ってしまったばかりに、冷血非情な殺人者シガーに追われる身と
なってしまう。モスは、愛する若い妻カーラ・ジーンを守るため、死力を尽くしてシガーの追跡を躱していく。一方、事件
の捜査に乗り出した老保安官エド・トム・ベルだったが、行く先々で新たな死体を見るハメになり苦悩と悲嘆を深めてい
く…。
[寸評]コーマック・マッカーシーの戦慄の犯罪小説『血と暴力の国』を「ファーゴ」のコーエン兄弟が映画化した衝撃のバイ
オレンス・ドラマ。80年代のメキシコ国境沿いのテキサスを舞台に、麻薬取引がらみの大金を持ち逃げしたばかりに、理
不尽なまでに容赦のない宿命を背負わされてしまう男の運命を描いた内容。アカデミー賞で作品賞を始め、4部門でオ
スカーを獲得した事から、怖そうな雰囲気でありながら、劇場で鑑賞。最優秀助演男優賞を受賞したハビエル・バルデ
ムが演じるシガー(怪演していてインパクト大)が、いきなり冒頭から残虐なシーンを見せてくれ、最近、日本でも起きて
いる無差別殺人が恐ろしいまでに繰り広げられる。何故にあのような行動をあそこまで取るのか?と思ってしまうなあ。
しかし、後半の展開は不可解だし、保安官(トミー・リー・ジョーンズ演)の関わりも中途半端だった。緊迫感があり、確か
に見応えもあるが、最優秀作品賞を獲得する程のものかなあ・・・というのが私の正直な感想。異常な人格をうんでしま
う、世の中の救いようのない構造を風刺しているのだろうか。
20.うた魂(たま)♪ (2008年日) <4.0>
[監督]田中誠
[出演]夏帆、ゴリ、石黒英雄、徳永えり、亜希子、岩田さゆり、ともさかりえ、薬師丸ひろ子
[時間]120分
[内容]北海道のとある町の七浜高校合唱部のソプラノパートリーダー、荻野かすみは、自己中心的で自意識過剰である。
自分の歌声とルックスに自信満々の彼女は、イケメン生徒会長から写真のモデルを頼まれるが、意気揚々と歌ってい
る瞬間の顔を“産卵中のシャケみたいだ”と評され、あえなく自信を喪失して退部を決意する。ラストステージのつもりで
参加した夏祭りの合唱祭でも、ただ一人下を向いていた。そんな時、番長の権藤洋が率いる湯の川学院高校のヤンキ
ー合唱団の魂のこもった熱い歌声を聞き、心を動かされ、権藤からも、情熱のなさを指摘・激励され、かすみは、忘れか
けていた歌への情熱を取り戻していく。
[寸評]自意識過剰なヒロインが、挫折を経験して“合唱”の真の魅力に目覚め、態度・姿勢を是正していく姿をユーモラスに
爽快に描いた作品で、一姫と一緒に劇場で公開初日に鑑賞。冒頭のかすみの振る舞いは”何だこれは?”と拍子抜け
だったが、徐々に引き込まれ、最後はしっかり余韻にひたれる展開になっている。今年はこれで「歓喜の歌」に続き、合
唱を取り上げた作品は2作目。どうしても贔屓目で観てしまうが、七浜高校、湯の川学院高校の部員達のふるまい・心情
もよく分かるし、ヒロインが歌う事の楽しさに気付いていく様は親しみを感じる。実は本作品の最大の聴きどころは薬師丸
ひろ子が唄う「OH MY LITTLE GIRL」である。私にとって高校〜大学時代にヒロインであった彼女の歌唱力(よくレコード
も買った)は顕在であった。「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」「フラガール」系の作品を踏襲し、二番煎じな
どと言われがちだが、この作品はこれで良いのではないか。
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