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41.ダーウィンの悪夢 DARWIN'S NIGHTMARE (2004年豪・仏・ベルギー)<4.0>
[監督]フーベルト・ザウパー
[時間]112分
[内容]アフリカのビクトリア湖は多様な生物が生息していた事からかつては“ダーウィンの箱庭”と呼ばれていた巨大湖
だ。そんなビクトリア湖に、今から半世紀ほど前、外部から肉食の巨大魚“ナイルパーチ”が放たれた。ナイルパーチは
在来の魚を次々と駆逐し、爆発的に増殖し湖の生態系を破壊していく。しかし、その淡泊な白身は食用としてEUや日
本で好まれ、湖畔の町にはナイルパーチを加工・輸出する一大産業が誕生する。しかしそこでは、資本主義の論理が
あまりにもむき出しのまま人々に襲いかかる─。
[寸評]グローバル経済に取り込まれたアフリカの一地域で引き起こされた悪夢のような現実をセンセーショナルに描き出
した衝撃のドキュメンタリー。この作品をフーベルト・ザウパー監督(同世代)は4年の歳月をかけて完成させた。愛知
県で単館でしか上映されていなかったため、関心がありながら、観に行けなかったので、ドキュメンタリー作品が好きな
事からDVDを購入して鑑賞。ナイルパーチが放たれた事により、生態系や湖を取り巻く人々(工場経営者、輸送機のパ
イロット、彼らに群がる売春婦、廃棄される魚のアラを常食する地元民等)、他国とのやり取り迄、変わっていく様は凄
まじい。様々な階層にスポットをあててインタビューしているので、生々しいし、正視しがたい映像もある。もう少し、分
かりやすく丁寧にまとめてくれると良いと思ったが、DVD特典の監督のインタビューによると、観客に考えさせるよう提
起している、との事。本作品の2時間は膨大な撮影・インタビューからすると微々たる時間のようだ。一つの事象が人々
の運命を変えていくのは、この世の常か・・・
42.時をかける少女 (2006年日)<2.5>
[監督]細田守
[出演]<声の出演>仲里依紗、石田卓也、板倉光隆、原沙知絵、谷村美月、関戸優希
[時間]100分
[内容]明るく元気な高校2年生の紺野真琴は、優等生の功介とちょっと不良な千昭と3人でいつも一緒につるんで野球ば
かりして楽しい毎日を送っていた。そんなある日の放課後、真琴は理科室で、突然現れた人影に驚いて転倒してしま
う。その後、修復士をしている叔母・芳山和子のもとへ自転車で向かった真琴は、ブレーキの故障で踏切事故に遭っ
てしまう。死んだと思った瞬間、真琴はその数秒手前で意識を取り戻す。その話を和子にすると、和子は意味ありげ
に、それは“タイムリープ”といって年頃の女の子にはよくある事だと、不可解な説明をするのだった。最初は半信半疑
な真琴だったが、いつしか使い方を覚えて些細な問題でも簡単にタイムリープで解決してしまい、調子に乗ってしま
うのだが・・・。
[寸評]これまでに何度も映像化されてきた筒井康隆原作の作品を初めてアニメ映画化。あるきっかけで、過去に遡って
やり直せる“タイムリープ”という能力を身につけたヒロインの淡い恋の行方と心の成長を綴った内容。私が高校生の時
に原田知世主演の「時をかける少女」を劇場へ観に行った(薬師丸ひろ子主演の「探偵物語」と二本立て)が、本作品
がTV放送される事を知り、何か懐かしさを感じ、録画して妻子と鑑賞。2006年日本アカデミー賞でアニメーション作品
賞を獲得していて、ネットでの評価も結構高い事、冒頭の番組の紹介で、原田知世が演じた”芳山和子が主人公の叔
母役で登場する”と聞いて期待して鑑賞。しかし、話がダルイ訳ではないが、インパクトがなく、タイムリーブが多すぎ
て何が何だか分からなくなる薄味の作品だった。紺野真琴の心情は高校生ならではの揺れ動きがあるのは分かるけ
ど、話が陳腐だなあ。芳山和子も余りパッとしなかったのも残念。もともと高校生の時に観た1983年の作品も正直面白
い内容ではなかったので仕方ないか・・・
43.シッコ SICKO (2007年米)<4.5>
[監督]マイケル・ムーア
[出演]マイケル・ムーア他
[時間]123分
[内容]米国は先進国の中では唯一、公的な国民健康保険制度を持たない国である。国民の健康保険は全て民間の保
険会社に委ねられている。そのため、高い保険料等が障壁となって、実に約4,700万人もの国民が無保険の状態に
あるという。しかしムーア監督は、営利を追求する民間企業が運営する現在の健康保険の矛盾は、高い保険料を払っ
て加入している大多数のアメリカ国民にこそ深刻な影響を与えていると主張する。
[寸評]「ボウリング・フォー・コロンバイン」「華氏911」のマイケル・ムーア監督が、米国の医療保険問題に鋭いメスを入れ
る社会派ドキュメンタリーの最新作。本作は米国の医療制度が抱える問題点を、他の諸外国との比較や、医療の現場
で実際に起きている治療を巡る信じがたい悲惨な事例の数々、更に監督が得意のアポなし突撃レポートを通して白日
の下にさらし、歪んだ構造を描いている。従来に比べ、マイケル・ムーア監督のアクの強さ(毒々しさ)を感じないが、
相変わらずのノリで、ズバリと米国の保険制度の問題の核心をついている。いや〜本当に怖いね。企業・医療のあり
方は何なのだろうか?何でもかんでも利益至上主義かね。情勢からして仕方がないのだが、成果主義に移行してい
るが、成果を追求したあげく、米国医療保険の実態になってしまうのは悩ましい。英国やフランスが対比として描かれ
たが、フランスは、あそこまで住みやすい国なのかな。どこか悪い面もあるような気がするのだが・・・。日本も患者の
自己負担割合が引き上げられた事もあるし、本作品で描かれている様は明日の日本の姿かもしれない。興味深く観れ
る反面、怖さを感じる作品でした。皆様にも是非観てほしいと思います。
44.HERO (2007年日)<3.0>
[監督]鈴木雅之
[出演]木村拓哉、松たか子、大塚寧々、阿部寛、児玉清、松本幸四郎、森田一義、中井貴一、香川照之、綾瀬はるか
[時間]130分
[内容]東京地検・城西支部に戻ってきた久利生公平はある日、容疑者が既にその犯行を認めている傷害致死事件を
任される。しかし、初公判で一転、被告は犯行を全面否認し、無罪を主張するという事態になった。しかも、この件を
担当する被告側の代理人は、刑事事件無罪獲得数日本一の弁護士・蒲生一臣だった。また、この事件の背後には
久利生と過去に因縁のある大物代議士・花岡練三郎の存在があり、事件の判決が政界の贈収賄事件に深く関わっ
てくるという。そして証拠集めに奔走した結果、事件の鍵が韓国にあることを突き止めた久利生は、事務官の雨宮舞子
と共に韓国・釜山へ向かう…。
[寸評]木村拓哉が型破りな検事に扮し、高視聴率を記録した大ヒットTVドラマ(観ていず、知らなかったが・・)の劇場版。
レギュラー・キャスト(馴染みの俳優が多く豪華)に加え、松本幸四郎、森田一義、イ・ビョンホンなど豪華俳優が花を
添える話題作。年初に木村拓哉出演のTVドラマ「華麗なる一族」を観ていた事と話題性に弱い事もあり、本作品に注
目し、有休を取得して妻と鑑賞。しかし、その前日に腹痛になり、医者で薬をもらって回復を図ったが、今度は頭が重く
半ば強行的に劇場で鑑賞。体調不十分な中で鑑賞したところ、案の定、頭は重いわ、眠くなるわという状態だった。
そのため、時折、台詞・話がつながらない箇所があった(後で妻に確認)。話の大筋はとらえられたが、期待ほどでは
なかったというのが率直な感想。キャストが豪華で馴染みがあるので、観ている分には悪くないが、話の内容が陳腐
な感じがするし、久利生検事が「優秀だ!」と言われるのが良く分からない(失礼)・・・。場面場面が中途半端な形で
切られるのも気になる。体調不十分の事を差し引いても、余りインパクトのない作品ではないかな。
45.北極のナヌー ARCTIC TALE (2007年米)<4.0>
[監督]アダム・ラヴェッチ、サラ・ロバートソン
[出演](日本語版ナレーション)稲垣吾郎
[時間]84分
[内容]“ナヌー”と名付けられた白くまの子供とセイウチの子供“シーラ”を主人公に、温暖化による環境変化でさらに困
難さを増す北極の過酷な自然の中で懸命に生き抜いていく動物達の生き様を描いたドキュメンタリー。
[寸評]アダム・ラヴェッチとサラ・ロバートソンのコンビが北極で10年以上にわたって撮影した驚異の映像素材を中心に、
温暖化が深刻さを増す北極の自然環境と、そこに生きる動物たちの生態をドラマ仕立てのナレーションと編集で分かり
やすく再構成して描いたネイチャー・ドキュメンタリー。最近、深刻さを増している地球温暖化を絡めて、北極の危機を
リアルに描写されている。子供達にも白くまの生き様だけでなく、北極・生態系の危機を分かってほしく、妻子と一緒に
劇場で鑑賞。白くまだけでなく、我が家で2年前に「二見シーパラダイス」を訪れた時に直に触れたセイウチが登場した
ので、なじみやすかった。セイウチの大群を見ると、何とも言い難い雰囲気があるね。”おなら”には苦笑いだった。
あの極寒の北極では、極寒ならではの生態系があり、それが崩れ去りつつある。あの氷の薄さや、セイウチが氷での
居場所を巡って、せめぎあいを行っている姿は印象的だ。一姫二太郎も各々感じ取る所はあったようだ。すっかり、自
然・生物ドキュメンタリーにはまっている。今後も観続けたい。本作品のDVD発売の際には、多くの未公開映像・メイキ
ング映像が特典に入っている事を期待したい。厳しい環境で永年に渡って撮影したスタッフには本当に敬服する。
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