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6.それでもボクはやってない (2007年日) <4.5>     
 [監督]周防正行
  [出演]加瀬亮、瀬戸朝香、山本耕史、もたいまさこ、役所広司、田中哲司、尾美としのり、小日向文世
  [時間]143分
 [内容]フリーターで26歳の金子徹平は、会社の面接に向かうため、通勤ラッシュの電車に乗っていた。そして、乗換えの
    駅でホームに降り立った彼は女子中学生から痴漢行為を問いただされる。そのまま駅員によって駅事務所へ連れて
    行かれた徹平は、やがて警察へと引き渡される。警察署、そして検察庁での取り調べでも徹平は一貫して“何もやって
    いない”と訴え続けるが、そんな主張をまともに聞いてくれる者はいなかった。そして、徹平は具体的な証拠もないま
    ま、ついに起訴され、法廷で全面的に争うことになるのだが…。
  [寸評]周防監督の「シコふんじゃった。」「Shall We ダンス?」は私が観た日本映画の中で屈指の傑作と思っている。「ダン
    ス」以来、ずっと新作を待ちわびていた。11年ぶりに登場したのが本作品で前評判も良い事から、公開日を楽しみにし
    ていて、初日の22:50の上映を妻と一緒に鑑賞。身に覚えのない痴漢容疑で逮捕された青年が、その後1年にわたる裁
    判を経験する姿を通して、刑事裁判の実情を克明に描き出した内容。過去の作品と違って笑いがあるとか、感動要素
    がある訳ではない。裁判の実情、裁判の実施される舞台裏まで詳細に丁寧に描いたドミュメンタリータッチの作品とも
    いえる。最後の結末は私が予想していた通りだった・・・非常に厳しいね。幾多の世の矛盾を感じながら、金子青年の
    状況は、いつ誰に降りかかるかも分からない。非常に裁判について勉強になる作品で久々にオススメマークがつきま
    す。周防監督は相当取材・勉強をして本作品を制作しているので、彼の著作やDVDの特典映像等、後々拝見したいと
    思う。

7.クイール (2003年日) <3.5>     
 [監督]崔洋一
  [出演]小林薫、椎名桔平、香川照之、戸田恵子、寺島しのぶ、黒谷友香、名取裕子
  [時間]100分
 [内容]ある時、東京のある家庭でラブラドール・レトリーバーの子犬が5匹誕生した。その中で、鳥が羽根を広げたような
    ブチ模様がお腹にある1匹は“ジョナサン”と名付けられる。そして、子犬たちを父犬と同じ盲導犬にしたいという飼い
    主の希望によって、おっとりした性格が逆に盲導犬向きといわれるジョナサンが、ボランティアで子犬を育てるパピー
    ウォーカーに預けられた。ジョナサンはそこで、“鳥の羽根”という意味を持つ“クイール”という新しい名をもらって無
    邪気に楽しく暮らし、やがて訓練センターへ入っていく…。
  [寸評]崔洋一監督の作品は「月はどっちに出ている」「刑務所の中」「御法度」等、話題作となりながら、どうにも私には
    馴染めないものであった。原作は、実在したラブラドール・レトリーバーの盲導犬の生涯を綴ったベストセラー・ノンフィ
    クション『盲導犬クイールの一生』(読んでいないが・・・)で、一匹の盲導犬と様々な人々との触れ合いを温かくほのぼ
    のと描いた内容で、過去の監督作品の中では一番良かった。NHK衛星放送で放映されたものを録画し、妻子と一緒
    に鑑賞(妻子は犬が好きで、唯一私が犬が苦手)。本作品は盲導犬クイールの生涯をドキュメンタリー風に描かれて
    いるので、全員が興味深く観れた。全体的には淡々としているので、渡辺さんとの別れや、クイールの最期の場面等、
    泣かせる場はあるのだが、泣くまでには至らなかったな・・・

8.グエムル -漢江の怪物- THE HOST (2006年韓) <3.0>     
 [監督]ボン・ジュノ
  [出演]ソン・ガンホ、ビョン・ヒボン、バク・ヘイル、ベ・ドゥナ、コ・アソン
  [時間]120分
 [内容]ソウルの中心を東西に貫く大きな河、漢江(ハンガン)。その河川敷で売店を営むパク一家は、家長のヒボン、長男
    カンドゥ、次男ナミル、長女ナムジュ、そして彼らの愛情を一心に受けるカンドゥの娘ヒョンソの5人家族だ。ある日、いつ
    ものように人々が河川敷でくつろいでいると、突然、正体不明の巨大な生き物が出現、驚異的なスピードで動き回り、逃
    げまどう人々を次々と食い殺し始めた。店番をしていたカンドゥも中学生になる一人娘ヒョンソの手を握り逃げ出すが、
    混乱の中で手が離れ、ついにヒョンソは怪物に連れ去られてしまうのだった・・・
  [寸評]「殺人の追憶」のポン・ジュノ監督が手掛けた異色のモンスター・パニック巨編。韓国では興行記録を次々と塗り替
    える大ヒットとなり大きな話題を集め、ハリウッドでリメイクされる事になった作品。昨年「スーパーマン・リターンズ」と
    同時期に公開されていて、本作品の方を劇場で観ようと思ったが、”後味の悪い”という情報を聞き、ひいてしまった事
    がある。とはいえ話題性に弱い私は妻と新作レンタル(妻が店の特典で無料でレンタル)で拝見。話は至ってシンプル
    で「漢江の怪物」も何とも言いようのない独特なもの(韓国風といっていいのか)で、民衆を襲撃する様は、それなりに
    見応えがあり、妙な雰囲気を出している。しかし、ヒョンがあそこまで粘り抜いて、あのラストはないだろう!という噂通り
    の結末だった。完全にカンドゥ(父親)の弟・妹の方が、あっさりやられたかと思ったのだが・・・。そこが本作品の特性な
    のかもしれないが・・・・
    
9.フライトプラン FLIGHT PLAN (2005年米)<3.5>     
 [監督]ロベルト・シュベンケ
  [出演]ジョディ・フォスター、ピーター・サースガード、ショーン・ビーン、マーリーン・ローストン
  [時間]98分
 [内容]愛する夫を突然の事故で亡くし、深い悲しみに暮れる航空機設計士のカイルは、夫の遺体を引き取り、6歳の娘ジュ
   リアと共に最新型のジャンボジェット機で帰国の途上にあった。ところが、飛行中の機内でジュリアが忽然と姿を消してし
   まう。しかし乗客はおろか乗務員の誰一人としてジュリアを見た者はいなかった。さらには搭乗記録すらも存在しなかった
   事が判明する。それでも必死にジュリアの行方を捜すカイルに対し、乗務員がFAXで送られてきた情報を伝える。それに
   よると、ジュリアは夫と一緒に亡くなっていたのだった。すべては精神的ショックが原因の妄想だったのか? 
  [寸評]本作品はジョディ・フォスターが主演である事と予告編が非常に面白そうな雰囲気であった事から関心があったが、
   色々な噂もあり、劇場で観るのを見送った。妻がレンタルしてきて、先に観た母親が「マズマズ」と言ったから、妻と疲れ
   はてた金曜の夜に鑑賞(98分という事もあり・・)。前半は非常に緊迫感があって面白い。そこまでは予告編の通りだ。と
   てつもない展開を想定したくなるところだが、後半はオヤオヤという結末になる。結果的には悪い事ではないのだが、搭乗
   員、乗客は皆何なの?という感じだな・・・。妻が話していたが、結局、誰もが、他人には関心がない事を風刺している
   のか?ジョディ・フォスターの演技が際立つため、何か独り奮闘している、という感じだった。機長役のショーン・ビーンも
   良い雰囲気を出していた。(後半は疲れから眠気とも格闘していたな・・・)

10.犬神家の一族 (1976年日)<4.0>     
 [監督]市川崑
  [出演]石坂浩二、高峰三枝子、三条美紀、草苗光子、あおい輝彦、三国連太郎、島田陽子、坂口良子、大滝秀治
  [時間]146分
 [内容]旧家の名士、犬神佐兵衛の遺言状が公開されるが、莫大な遺産の相続者は佐兵衛の恩師の孫娘である野々宮珠
   世と結婚した者と記されていた。佐兵衛の孫にあたる3人の男は各々珠世を我が物にしようと企むのだが、やがてそれは
   連続殺人事件へ発展していく…。
  [寸評]昨年12月に30年振りのリメイク版(監督と主演が同じ)が公開され、旧作も観ていないので非常に関心があった。し
   かし、ネットで検索していると、どうも新作の評判がよろしくなく、旧作の価値の方が高い模様で、旧作を観る事にした。
   タイミングよく旧作がBS放送で放映されたので、録画して妻と拝見したところ、期待通り、引き込まれ、楽しませてもらえ
   た。実は、テーマ音楽は中学生の頃、ラジオで放送されたものを録音してよく聞いていたので、ようやく作品を堪能した事
   になる。小〜中学生の頃に観ていたら、覆面男や覆面を外した顔や惨殺シーンは強烈に印象に残り、本作品は”怖い”と
   いう印象が根付いていただろう。現在の技術だと、もっとリアルなんだろうが・・・。犯人は単純にAかBかと思ったが、さす
   がにそうではなかったね(AかBでは余りに単純か・・・)。坂口良子が非常に可愛らしく、島田陽子も本作品を礎に上昇し
   ていく(後には大波乱となるのだが・・・)、草苗光子、小沢栄太郎等も若く30年前の作品なんだよねえ。映画やTVで何作
   か金田一耕助シリーズが製作されてきているが、よくよく考えると、実は初めて観た事になる。気持ちに余裕があったら、
   新作がレンタルになったら観てみようか。
   
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