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6. 燃ゆるとき THE EXCELLENT COMPANY (2005年日)<4.0>     
 [監督]細野辰興
  [出演]中井貴一、大塚寧々、長谷川初範、鹿賀丈史、津川雅彦、伊武雅刀、中村育二、サマンサ・ヒーリー
  [時間]114分
 [内容]築地の小さな食品会社としてスタートした“東輝水産”は、即席麺を主力商品としてマーケットを拡大し、大企業へ
    成長してアメリカへも進出するまでになった。しかしアメリカでの業績は安価なアジア企業に押されて低迷し、工場の再
    生が急務となっていた。その大役を任されたのは資材担当の川森潔。言葉の不安を抱えながらも単身渡米した川森は、
    旧態にしがみつく幹部や古株社員と対立しながらも、次々と対策を打ち出していく。次第に工場が軌道に乗り始めた矢
    先にアメリカならではの様々なトラブルが川森を襲う…。
  [寸評]経済小説の第一人者で好きな作家でもある高杉良のベストセラー『燃ゆるとき』と『ザ・エクセレント・カンパニー/新・
    燃ゆるとき』を細野辰興監督が映画化。実在の食品会社をモデルに、アメリカに進出した工場の再生を任された一人の
    企業戦士が会社と家族のために苦難を乗り越えていく姿を描いた作品。映画化の話を聞き、文庫を購入して、読んだ
    上で映画を観ようと思ったが、結局、読めないまま、鑑賞。現地人との軋轢、レイオフ、M&A、セクハラ、リスクヘッジ、ユ
    ニオン設立、日本に残した家族等、海外赴任したビジネスマンが遭遇するであろう問題が幾つか、取り上げられ、周囲の
    力を得て立ち向かっていく話で、非常に引き込まれる。自分と照らし合わせてみると、自分の”無力感”を感じてしまうの
    だが、赴任者の大変さが改めて感じ取れる。社長と米国責任者の深井が交わす「心はいつまでも”創業時のまま”でい
    よう」という言葉は印象的だ。ビジネスマンは一度は観ておいた方がよい作品かと思う。中井貴一の演技には説得力が
    ある。後日、原作の文庫をじっくり読んでみたい。

7.ポーラー・エクスプレス THE POLAR EXPRESS (2004年米) <3.5>     
 [監督]ロバート・ゼメキス
  [出演](声の出演)トム・ハンクス、ピーター・スコラーリ、ノーナ・ゲイ、エディ・ディーゼン
  [時間]100分
 [内容]クリスマスイブの夜。もうクリスマスなんて信じないと思いながらベッドに入った一人の少年。しかし、真夜中目前の
    11時55分、少年の耳に地鳴りのような轟音が響く。驚いた少年が窓辺から見たものは、降りしきる雪の中を白い煙を上
    げながら近づいてくる巨大な蒸気機関車だった。家の前で停まったその機関車に駆け寄っていく少年。車掌は少年に、
    北極点行きの急行“ポーラー・エクスプレス”である事を説明し、乗車するようにすすめる。目の前の出来事がまるで信じ
    られずに逡巡する少年だったが、機関車が動き出すと、ついに意を決して飛び乗るのだった…。
  [寸評]クリスマス本の定番として人気を集めるクリス・ヴァン・オールズバーグの名作絵本『急行「北極号」』を映画化したフ
    ァンタジー・アニメ。クリスマスの夜に北極点行きの謎の汽車に乗った少年が体験する不思議な出来事を幻想的に描い
    た作品。トム・ハンクスが何と一人で5役(ヒーロー・ボーイ/父親/車掌/ホーボー/サンタ)の声を担当している。2004年
    12月に私が「ハウルの動く城」を観ている間、妻子が本作品を観て満足していたので、ようやくレンタルDVDで拝見した。
    登場する少年少女に名前はなく、絵本の如く、話は展開される。クリスマス・シーズンに観ると非常にムードたっぷり、と
    いう感じで、ファンタジー要素が多く、映像も美しい。ジェットコースター的なシーンは印象的だ。本作品を実写で製作し
    ても良かったのではと思える。

8.故郷の香り (2003年中) <3.0>     
 [監督]フォ・ジェンチイ
  [出演]グオ・シャオドン、リー・ジア、香川照之
  [時間]109分
 [内容]北京の役所に勤め、妻と生まれて間もない息子と暮らすジンハーはある日、高校時代の恩師が抱えたトラブルを
    解決するため、山あいの村に10年ぶりに帰郷した。目的を果たし、北京へ戻ろうとしたジンハーは、思いがけず初恋の
    女性、ヌアンと再会する。薄汚れて、見るからに生活に疲れている様子で、10年前とはまるで別人のようなヌアンの姿に
    動揺する・・・。彼女は幼なじみで聾唖のヤーバと結婚し、既に6歳になる娘もいた。ジンハーの心に昔の甘く切ない日々
    が甦る。翌日、ジンハーは予定を変更してヌアンの家を訪れるのだったが…。
  [寸評]美しい山間の村を舞台に、初恋の男女が10年ぶりに再会し、甦る思い出の日々と、切ない運命が招いた厳しい現実
    に心揺れるさまを情感豊かに綴った作品。監督は父から子への仕事の継承を上手く描いた「山の郵便配達」のフォ・ジェ
    ンチイ。第16回東京国際映画祭では東京グランプリと優秀男優賞(香川照之)を受賞している。この作品で印象的なの
    はヤーバを演じた香川照之だ。彼の演技はインパクトがあった。話の内容は、どこにでもよくありそうなパターンで、過去
    を懐かしみ、現実と照らし合わせてみると、どうしようもない(取り返しがつかない)のだが、後悔をして悶々とする・・とい
    うもの。「山の郵便配達」的なタッチで描かれているが、ジンハーにどうも共感できないんだなあ・・・。ヌアンの娘に「大
    きくなったら私の所に勉強しにおいで・・・」と、かつてヌアンに「迎えにいく・・・」と同じようなニュアンスで語りかけたが、
    どういう思いで語ったのだろうか?懺悔から口にした只の空手形?

9.こころの湯 洗澡  (1999年中) <3.5>     
 [監督]チャン・ヤン
  [出演]チャウ・シュイ、プー・ツンツン、ジャン・ウー
  [時間]92分
 [内容]北京の下町で銭湯「清水池」を営むリュウは知的障害のある次男、アミンと共にそれぞれにリラックスした時を過ごし
    てくれる客人達と触れ合いながら満足な日々を送っていた。そんなある日、ビジネスマンの長男、ターミンが突然帰郷す
    る。ターミンはアミンから届いた葉書から父が倒れたのではないかと心配して帰ってきたのだった。しかしそれは取り越し
    苦労で、元気な父の姿を見て安心したターミンは翌日、アミンを連れて帰りの航空券を買いに町中へ行く。ところが、ほ
    んの少し目を離した隙にアミンはどこかへ消えてしまった…。
  [寸評]1999年トロント国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞していて、NHKドラマ『大地の子』で日本人孤児の養父役に扮
    したズウ・シュイが主演。ズウ・シュイは余りに『大地の子』の印象が良くて、この人が出ているというだけで本作品に目
    を付けて(かなり前から目を付けながら鑑賞するのが今日になった)鑑賞。ズウ・シュイは、いてくれるだけで十分絵に
    なる存在で相変わらず良い味を出している。途中の展開は想定外だったが、実は長男ターミンと知的障害のあるアミン
    との兄弟の触れ合いを描いたものだ。2人共、上手く演じていると思う。話の内容は、ほのぼのと温かさを感じさせるも
    のだが、強いインパクトはない。ただ、本作品を観ていると、今は少なくなりつつある近所の人達が寄り合い触れ合いの
    場ともなる”下町の銭湯”(スーパー銭湯等は色々ある)の良さを感じさせられる。銭湯に行ってみたくなるね。

10.ドラえもん/のび太の恐竜2006  (2006年日) <3.5>     
 [監督]渡辺歩
  [出演]<声>水田わさび、大原めぐみ、かかずゆみ、木村昴、関智一、神木隆之介
  [時間]106分
 [内容]ある日、のび太は、恐竜の化石を自慢するスネ夫に対抗すべく、自分も恐竜の化石探しを開始する。すると、ひょん
    な事から恐竜の卵らしきものを発見するのだった。そして、その卵を孵化させてみると、なんとそれは白亜紀の日本海近
    海に棲息していたフタバスズキリュウだった。のび太はこの首長竜を“ピー助”と名付け、家族に内緒で大切に育て始め
    るのだったが…。
  [寸評]2005年4月、長年にわたりドラえもんの声を担当してきた大山のぶ代以下声優陣が総入れ替えとなった長寿番組「ド
    ラえもん」。本作はその新生「ドラえもん」としては初めてとなる長編劇場映画作品。旧シリーズの記念すべき劇場版第1
    作目の「のび太の恐竜」をリメイク。声優陣の年が年(私の両親より上の方もいる)だけにやむを得ないが、昨年4月に
    総入れ替えした時は寂しいものを感じたが、子供達は相変わらず、TV放送を見続けていて、次第に違和感がなくなった
    ようだ。毎年、この時期に公開された劇場映画作品も昨年はお休みだったが、旧作の「のび太の恐竜」を観ていない事も
    あり、いつものごとく一姫二太郎と鑑賞。話の内容はそれなりに楽しめるし、感動する要素もある。私も不思議と登場人
    物の声が気にならなくなってきた。本作品そのものをとやかく言う事はないが、今後、このシリーズは、今回のようにリメ
    イクを続けるのか、新作を生み出していくのか、どうなんだろう?子供達を始め、まだまだ根強い人気を持っているだけ
    に、期待は大きいのだろうが、どれだけネタを出せるものか?製作側は本当に大変だろうな・・・

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