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1.ALWAYS 三丁目の夕日 (2005年日)<4.5>     
 [監督]山崎貴
  [出演]吉岡秀隆、堤真一、薬師丸ひろ子、小雪、堀北真希、三浦友和、もたいまさこ、須賀健太
  [時間]133分
 [内容]昭和33年、東京下町の夕日町三丁目が舞台。ある日、鈴木則文が営む自動車修理工場・鈴木オートに、集団就
    職で上京した六子がやってくる。しかし、思い描いていたイメージとのギャップに、少しがっかりした様子だ。その鈴木
    オートの向かいにある駄菓子屋の店主で、しがない小説家の茶川竜之介。彼はひょんな事から、一杯飲み屋のおか
    みのヒロミのもとに連れてこられた身寄りのない少年・淳之介の世話をする事になるのだが…。
  [寸評]西岸良平の人気コミック『三丁目の夕日』(読んだ事はない)を映画化。誰もが明るい未来を信じていた昭和30年代
    の東京下町を舞台に、個性豊かな人々が織りなす心温まる人間模様を綴った作品。2005年の日本映画の中でかなり
    評価されて色々な賞を獲得した事もあり、年を越したが、1月6日迄の上映なので2006年の初見作品として鑑賞。いや
    〜、こういう人情ドラマは好きだ!涙がこぼれた!昭和33年の風情を知らないものの、東京タワーの構築の様を眺める
    下町の風情が実に良く描かれている。大人から子供まで何と人間味あふれている事か(逆なのもいるが・・)。皆、各々
    辛いものを抱えながら一生懸命に生きている姿、相手を思いやる心遣い・・・新年を迎えて改めて覚悟ができる心洗わ
    れる作品といってよい。TVドラマの「一リットルの涙」等、すっかりお母さん役が板に付いた薬師丸ひろ子を始め、俳優
    達の演技も良かった。

2.アフガン零年 OSAMA (2003年アフガニスタン・日本・アイルランド) <3.0>     
 [監督]セディク・バルマク
  [出演]マリナ・ゴルバハーリ、モハマド・アリフ・ヘラーティ、ゾベイダ・サハール、ハミダ・レファー
  [時間]82分
 [内容]長年の戦争の末、タリバンが政権の座についたアフガニスタン。イスラムの教えを厳格に守ろうとするタリバン政権
    下では、女性は身内の男性の同伴なしには外出が許されなかった。そんな中、生計を支えるべき男たちを全員戦争で
    失い、祖母と母親、そして12歳の少女の3人だけになってしまった一家があった。彼女達は外出も出来ず生活の糧を
    失う。祖母と母親は仕方なく少女を男の子に変装させて働かせる事を決意する。バレた時の恐怖に怯える少女をなだ
    めると、そのおさげ髪をバッサリと切り少年の姿にして、亡き父の戦友だったミルク屋に働きに出すのだったが…。
  [寸評]タリバン政権崩壊後の復興アフガニスタンで製作された映画第1作。日本のNHKが機材などのハード面を中心に
    全面サポートを行っている。タリバン政権下のアフガニスタンを舞台に、女性の置かれた過酷な状況を切実に描いた人
    間ドラマで第61回ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞を受賞している。この作品に登場してくる人物に名前は存在
    しない。主人公の少女も名前を呼ばれる事はない。作品の内容は限りなくドキュメンタリー・タッチで観る価値はあるが
    非常にアフガニスタンの厳しい状況とその中で生き抜く辛さが感じ取れ、虚しい・・・。少女を働きに行かせて、後は任せ
    たという感じの祖母・母にも憤りも感じるが、そうせざるを得ない厳しさ・仕方なさ、何よりそんな状況に追い込んだ情勢
    を責めねばならないのか・・・虚しい堂々めぐりとなる。まだ日本は幸福である(色々問題を抱えているが・・・)。感謝の
    念を常に持ちながら生きていかなばならない・・・

3.THE 有頂天ホテル (2005年日)<4.5>     
 [監督]三谷幸喜
  [出演]役所広司、松たか子、佐藤浩市、香取慎吾、篠原涼子、戸田恵子、伊東四朗、原田美枝子、唐沢寿明
  [時間]136分
 [内容]都内の高級ホテル“ホテルアバンティ”。新年のカウントダウンパーティーまであと2時間余りだ。その成否はホテル
    の威信に関わり、これを無事終える事が副支配人の新堂平吉に課せられた責務だ。ところが、そんな新堂をあざ笑う
    かのように、思いも掛けないトラブルが次々と発生する。刻一刻と新年のカウントダウンが迫る中、従業員と“訳あり”宿
    泊達を襲う数々のハプニング。果たして彼等は無事に新年を迎えることができるのだろうか?
  [寸評]「ラヂオの時間」「みんなのいえ」の三谷幸喜監督が、よくぞここまで揃えたかという程の豪華キャストで描くエンター
    テインメント・アンサンブル劇。思い切り期待して鑑賞しに行ったから、冒頭から途中迄、なかなか笑えないではない
    か!なんて思っていたが、全ての登場人物の動きが時間に沿って進んでいき、後半に行く程、話が収束されてきて引
    き込まれていく。やはり三谷監督は上手い。緻密に全登場人物の事を配慮して製作されている。会社でもそうだが、
    ホテルで繰り広げられる従業員、客の人間模様は多種多様で尽きない。石ノ森章太郎氏の原作の漫画「HOTEL」も素
    晴らしかったが、本作品もなかなかのもの。苦言を言えば香取慎吾扮するベルボーイが部屋の中でギターを弾いて
    歌を歌う場面があったが、実際にはホテルマン(その時は辞表提出済)ではやらない行為のはずだ(命を救うという使
    命感の方が強かったか?)。松たか子扮する客室係が何故、社長愛人に成り代わったのかが今一つ、消化しきれな
    かった。本作品のDVDは「めざましTV」の特集を集めたり、音声解説など特典満載のものになる事が予想される。今か
    ら楽しみだ。高島彩が一瞬出演したが、次回作も「めざましTV」の看板アナウンサーを起用するのかな?

4.単騎、千里を走る。 千里走単騎 (2005年中・日) <3.0>     
 [監督]チャン・イーモウ
  [出演]高倉健、寺島しのぶ、リー・ジャーミン、チュー・リン、ジャン・ウェン、ヤン・ジェンボー
  [時間]108分
 [内容]静かな漁村に暮らす高田剛一のもとにある日、東京にいる息子の健一が重病だとの報せが届く。しかし父と子の
    間には長年に渡る確執が存在し、そのために健一は父との面会を拒んでいた。息子ともう一度向き合う事を決意する
    高田は、嫁の理恵から民俗学者の健一が、中国の有名な俳優リー・ジャーミンと交わした約束を果たす事が出来ずに
    悔やんでいる事を知らされる。そこで高田は、健一の代わりに彼がやり残した仕事を成し遂げようと、無謀にもたった
    一人で中国の麗江市へと旅立つのだった…。
  [寸評]チャン・イーモウ監督と高倉健のコンビ、という事に惹かれて鑑賞。高倉健は彼特有の雰囲気・存在感を出していた
    とは思うし、中国の雄大な光景にマッチはしていた。しかし、過去のチャン・イーモウ監督作品の「活きる」「あの子を探し
    て」の印象が強いからか、内容的には期待していた程、感動するようなものではなかった(私の好みの問題?)。高田
    親子の直接対面による和解をしてほしかったし、ヤンヤンの使い方も、もう少しひとひねり、加えられなかったものか?
    本作品の中国人は皆、高田に友好的で、事情を察するとお金を受け取らずに協力する姿勢を示す者もいる。実際、
    そうだと良いのだが、中国人の描き方をかなり美化されている感じもするな・・・。日中友好の架け橋になればよいの
    だが・・・。本作品は高倉健の存在感に頼りすぎた感じが強く、少し残念だった。

5.ミュンヘン MUNICH (2005年米) <4.0>     
 [監督]スティーブン・スピルバーグ
  [出演]エリック・バナ、ダニエル・クレイグ、キアラン・ハインズ、マチュー・カソヴィッツ、ジェフリー・ラッシュ
  [時間]164分
 [内容]1972年9月、ミュンヘン・オリンピックの開催中、武装したパレスチナのテロリスト集団“黒い九月”がイスラエルの選
    手村を襲撃し、最終的にイスラエル選手団の11名が犠牲となる悲劇が起きる。これを受けてイスラエル政府は犠牲者
    数と同じ11名のパレスチナ幹部の暗殺を決定、諜報機関“モサド”の精鋭5人による暗殺チームを秘密裏に組織する。
    チームのリーダーに抜擢されたアヴナーは、祖国と愛する家族のため他の4人の仲間と共に冷酷な任務の遂行に当
    たるのだが…。
  [寸評]スピルバーグ監督が、1972年のミュンヘン・オリンピックで起きたパレスチナ・ゲリラによるイスラエル選手殺害事件
    とその後のイスラエル暗殺部隊による報復の過程をドキュメンタリー・タッチで描いた衝撃の問題作で「シンドラーのリ
    スト」「プライベート・ライアン」系の久々の社会派ドラマだ。イスラエルの報復の行動を描いたもので、過激な描写も
    あり、非常に「重い」。任務を背負うアブナーの、家族にも危害が及ぶのではないか、という不安感、ベッドに爆弾が仕
    掛けられているのではないかという焦燥等が緊迫感十分に描かれている。本作品は監督の先述の2作品に比べれば
    感動要素はない。ひたすら重苦しく、葛藤の連続というノリだ。164分という長時間ゆえ、体調を整え、事前にトイレに行
    って観るべきでしょう。最近、平日は残業続きで体がへばっていたので、疲労感を感じながら観ていた。世界史に疎い
    私にとって、本作品は勉強になったし、鑑賞する価値はあったと思う。

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