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21.海を飛ぶ夢 MAR ADENTRO (2004年スペイン)<4.0>     
 [監督]アレハンドロ・アメナハバール
  [出演]バビエル・バルデム、ベレン・ルエダ、ロラ・ドゥエニャス、クララ・セグラ、マベル・リベラ
  [時間]125分
 [内容]スペイン、ラ・コルーニャの海で育ったラモン・サンペドロは19歳でノルウェー船のクルーとなり、世界中を旅して回
   る。だが1968年8月23日に25歳の彼は岩場から引き潮の海へダイブした際に海底で頭部を強打し、首から下が完全に麻
   痺してしまう。以来、家族に支えられながらも、ベッドの上で余生を過ごさなければならなくなった。彼にできるのは、部屋
   の窓から外を眺め、想像の世界で自由に空を飛ぶ事と、詩をしたためる事だけ。やがて事故から20数年が経ち、彼はつ
   いに重大な決断を下す。それは、自ら人生に終止符を打つ事で、本当の生と自由を獲得するというものだった。そしてラ
   モンは、彼の尊厳死を支援する団体のジェネを通じて女性弁護士フリアと対面し、その援助を仰ぐことに。また一方、貧し
   い子持ちの未婚女性ロサがドキュメンタリー番組でのラモンを見て心動かされ、尊厳死を思いとどまらせようと訪ねてくる。
  [寸評]事故で四肢麻痺となった主人公が、法律では認められていない尊厳死を求めて闘いを繰り広げる姿を通して、生と
   は何かを問いかけていく人間ドラマ。アカデミー賞で最優秀外国語映画賞を受賞した事と取り上げているテーマ「尊厳死」
   に関心を抱き、劇場で鑑賞。「尊厳死」という言葉を耳にしても、それを説明するのは難しい(というより、よく分からない)。
   「死」「生きる価値」というものは何か!をラモンの視点から、しっかり描いた希少で貴重な作品だと思う。ラモンを支える家
   族の心情・心境も本音ベースで上手く描かれている。ラモンの含蓄のある、重みのある台詞も結構印象に残る。観ていて
   辛い内容でもあるが、どこか美しく切ない、良質な作品といえるでしょう。

22.みなさん、さようなら LES INVASIONS BARBARES (2003年カナダ・仏)<4.5>     
 [監督]ドゥニ・アルカン
  [出演]レミー・ジラール、ステファン・ルソー、マリ=ジョゼ・クローズ、マリナ・ハンズ、ドロテ・ベリマン
  [時間]99分
 [内容]ある日、ロンドンで働く証券ディーラーのセバスチャンは、カナダのモントリオールに住む母ルイーズから彼の父の
   病状が悪化しているので帰ってきて欲しいと連絡を受ける。父、大学教授のレミは女ぐせが悪いために、これまでさんざ
   ん家族に迷惑をかけてきた。セバスチャンは、そんな父のような人間にはなるまいと別の道を歩んできたのだった。それ
   でも彼は葛藤を抑え、婚約者を伴い帰国する事にした。そして、父が末期ガンと知ったセバスチャンは、“友人を呼んで
   楽しい病室にして”という母の頼みを聞き入れ、早速、行動を開始するのだった・・・。
  [寸評]病床に伏す偏屈な父と、彼を看取る家族や友人達との最後のひとときをユーモア溢れるタッチで描いた作品。昨年
   のアカデミー賞で最優秀外国語映画賞を受賞し、他にも幾つか受賞して評価された作品。昨年、父を病で亡くし、見送っ
   た私は、本作品のセバスチャンの姿に着目していた。私自身、父に対しては、自分達の事で余り心配をかける事はせずに
   すんだ、という思いと、もっともっと優しく大事にしてあげれなかったか、という思いが残る。誰しもそうだろうが、故人に対し
   て100%悔いなし、という事はありえないだろう。冒頭であれ程、父レミに反目していたセバスチャンが、母の一言から心が
   揺らいだのか、凄まじいまでの献身的な行動にでる。稼ぎが良い事から、札束を振りまいて何でもレミの願い事をかなえ
   てあげるのだ。そんな奔放的に生きてきたレミも最期に「家族・友情の大切さ」を認識し、感謝する。レミとセバスチャンの抱
   擁と言葉は非常に感動的だな。本作品は、人を送る時にスポットをあてて”家族・友情のあり方・大切さ”を説いている。ブ
   ツ切リ(製作側の意図があるのだろうが)が幾つかあるのが少し気になるが、非常に心に残る良質な作品でしょう。

23.解夏(げげ) (2003日)<2.5>     
 [監督]磯村一路
  [出演]大沢たかお、石田ゆり子、富司純子、田辺誠一、渡辺えり子、柄本明、林隆三、松村達雄、古田新太
  [時間]113分
 [内容]東京の小学校で教師をする隆之は、突然ベーチェット病に倒れた。それは、徐々に視力を失っていく原因不明の難
    病である。隆之は、研究のためモンゴルにいる恋人・陽子の未来を思い、ひとりで、故郷の長崎へ戻る事にした。しかし、
    隆之の病気を知った陽子は、長崎へ追いかけてきた。隆之は、生まれ育った長崎の景色を目に焼き付けようと、陽子と
    2人で坂の町を歩き始める。日を追うごとに曇っていく隆之の視界。光を失う恐怖のなか、やがて隆之に「解夏」の時がや
    ってくる…
  [寸評]G.W休みの4/30にTV放映されたので録画して妻と拝見。さだまさしが故郷の長崎を舞台に描いた小説の映画化。石
    田ゆり子が演じる陽子は可愛らしく、恋人のために一生懸命献身する姿は美しい。全体の悲しいトーンの中で隆之と陽子
    の相手を思いやる心遣いは温かさを感じる。しかし、物語全体は冒頭から最後迄、大きな変化もなく、淡々としている。
    ”あれ、これで終わり?”という感じで強いインパクトもなく終わってしまう。元の素材は良いと思うので、もうひとひねり、ふ
    たふねり加えて、メリハリのついた厚味のある物語にできなかったろうか?。長崎は一度旅行した事があり、長崎の風景
    を幾つか見せてくれたので懐かしかった。旅行の時に稲佐山の頂上から夜景を見たが、作品の中で稲佐山の裏側を海
    側から見た時に隆之の友人が語ったコメントが印象的。

24.フォッグ・オブ・ウォー−マクナマラ元米国防長官の告白− THE FOG OF WAR:
   ELEVEN LESSONS FROM THE LIFE OF ROBERT S. MCNAMARAES INVASIONS BARBARES
  (2003年米)<4.0>     
 [監督]エロール・モリス
  [出演]ロバート・マクナマラ
  [時間]106分
 [内容]元米国国防長官のロバート・マクナマラ。”戦争の世紀”と言われた20世紀に政財界の要職に君臨した彼は80歳を越
    えた今、かつての経験から自らが導き出した結論を21世紀への祈りを込め語ってゆく。第一次世界大戦下に生まれ、第
    二次世界大戦では経営の理論を戦争に応用、攻撃の効率向上を図る。それは、カーティス・E・メイル少尉の指揮の下、
    日本本土への無差別絨毯爆撃という形の民間人を狙った大量殺戮として実行に移される。戦後、フォードに入社し、社長
    にまで登り詰めた彼は、やがて、ケネディ大統領の下で国防長官に就任する。しかし、マクナマラを待っていたのは苦渋
    に満ちた悪夢のような日々だった・・・。
  [寸評]2003年アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞を受賞した作品で、関心があったのでDVDをレンタルして鑑賞した。
    「第二次世界大戦」「キューバ危機」「ベトナム戦争」「フォード勤務時代」等の経験から彼が感じた”11の教訓(※)”につ
    いて当時の映像・音声テープを交えて自ら語っている。非常に歴史の勉強になる内容だ。大きな史実の裏には、こんな
    事が隠されていたのか!と思わされる。但し、日本への空襲の話は日本人として聞いていて、驚いたし気分を害した。
    彼自身は「日米戦争は類をみない悲惨な戦争」と語っているが・・・。”危機は理性ある人間が集まっていても、何らかの
    拍子で起こりうる””全ての変化を人間は読み取れない⇒戦争は霧の中の存在”という語りが特に印象に残った。
    (※)1.敵の身になって考えよ。2.理性には頼れない。3.自己を超えた何かのために。4.効率を最大限に高めよ。
     5.戦争にも目的と手段の”釣り合い”が必要だ。6.データを集めよ。7.目に見えた事実が正しいとは限らない。
     8.理屈付けを再検証せよ。9.人は善をなさんとして悪をなす。10.”決して”とは決して言うな。11.人間の本質は変え
     られない。
    
25.ザ・インタープリター THE INTERPRETER (2005年米)<2.5>     
 [監督]シドニー・ポラック
  [出演]ニコール・キッドマン、ショーン・ペン、キャサリン・キーナー、イェスパー・クリステンセン、イヴァン・アタル
  [時間]118分
 [内容]アフリカのマトボ共和国は独裁的な大統領ズワーニが治めており、民主化を目指す多くの活動家の命が無惨に奪
    われていた。マトボに生まれた女性シルヴィア・ブルームは、現地のクー語の通訳として5年前からニューヨークの国連
    本部で働いていた。ある日、彼女はズワーニ暗殺計画にまつわる会話を偶然耳にする。すぐさま当局に通報したシルヴ
    ィアだったが、以来、彼女の身辺では不穏な動きがつきまとう。彼女を守るためトビン・ケラーや女性捜査官ウッズらシー
    クレット・サービスのメンバーが送り込まれる。しかしケラーはすぐに、シルヴィアが何か嘘をついているとの直感を抱くよ
    うになり、彼女への疑念を強めていくのだが…。
  [寸評]ニコール・キッドマンとショーン・ペンが共演するサスペンス、という理由だけで劇場に足を運んだ。子供達が午前中
    に「子供会」の行事があるため、その間を狙って鑑賞したのだが、私は平日にどれだけ疲労が蓄積しようが、何故か土曜
    の朝はいつも早く目が覚めてしまう。その影響が多分にあり、時折睡魔が襲ってきて、台詞台詞の間が分断してしまっ
    た。よって正当な評価ではないかもしれないが、前半はよく分からず、途中に平坦な状態が続き、最後も盛り上がりに欠
    けた(話の展開+ニコールとショーンのやり取り)印象を持った。私が話を理解しきれなかったかな(難しい事を言っている
    訳でない事も確かだろうが)・・・。国連本部、ニューヨークが舞台で、ニコールとショーンが登場し、話も国際的なもの
    なのに、どうにもしっくりこなかったのは残念だ。国連本部(実際のもの)と二コールを観れたのは価値があったのだが。
    今後は体調の良い状態で劇場に足を運ぶように気をつけよう。

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