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6.オペラ座の怪人 THE PHANTOM OF THE OPERA (2004年米・英)<4.5>
[監督]ジョエル・シューマーカー
[出演]ジェラルド・バトラー、エミー・ロッサム、パトリック・ウィルソン、ミランダ・リチャードソン、ミニ・ドライヴァー
[時間]140分
[内容]19世紀パリのオペラ座では”ファントム(オペラ座の怪人)”の仕業とされる謎の怪事件が多発していた。歌姫クリス
ティーヌは、ファントムを”音楽の天使”と信じ、やがてプリマドンナへ成長するが、ある日、仮面の下に隠されたファントム
の正体を知る・・・
[寸評]ガストン・ルルーの原作を基に「キャッツ」「エビータ」など大ヒットミュージカルの生みの親である稀代の天才作曲家
アンドリュー・ロイド=ウェーバーが、自身の最高傑作と賞賛されるミュージカル「オペラ座の怪人」を、自らのプロデュース
のもとに完全映画化。私は1991年に劇団四季のミュージカルを観て、音楽の素晴らしさに虜になり、四季版のCDを購入
し繰り返し聴いた。1997年に劇団四季の舞台を再び観て、友人よりロンドン版のCDを録音させてもらった。私にとって「オ
ペラ座の怪人」はミュージカルの中で最も好きな作品といってよい。今回の映画がアンドリュー・ロイド=ウェーバーが手掛
け、ミュージカルを忠実に再現する、という話を聞いて、公開を心待ちにしていたので、早速、初日の20:00より妻と鑑賞
(一姫二太郎は母と留守番)。私のようにミュージカルが好きな者にとっては、本作品は十分に堪能できるのではないか。
音楽も映像もキャストが実際に歌っている歌唱も非常に素晴らしい。聞き馴染んだ曲・歌を大画面で味わえ、ストーリー
をしみじみと確認する、という観方をした。本作品をいきなり初めて観た人にとっては、賛否両論あるかもしれない。しかし、
過去に製作された映画の同名作品を観た時は決して面白いと思えなかったが、本作品はモノが違う。モノクロで時折、登
場する現代(といっても1917年)が冒頭以外はストーリーを分断する形になっている感じがした事が少し気になったが、怪
人の哀しみも上手く描けていたのではないか。最後のあの○は、怪人について、どう解釈してよいものか?個人的には大
満足の出来映えといえ、DVDの発売(特典映像を満載してほしい)を楽しみにしている。
7.グッバイ、レーニン! GOOD BYE, LENIN! (2003年独)<4.0>
[監督]ヴォルフガング・ベッカー
[出演]ダニエル・ブリュール、カトリン・ザース、マリア・シモン、チュルバン・ハマートヴァ
[時間]121分
[内容]1989年の東ベルリン。テレビ修理店に勤める青年アレックス。彼の父は10年前に家族を捨て、西側に亡命した。一
方、母クリスティアーネは、その反動からますます愛国心を強めていく。そんなある日、秘かに反体制の考えを持っていた
アレックスが反社会主義デモに参加していた。その結果、警察と衝突するところを偶然目撃したクリスティアーネはショック
で心臓発作を起こし、昏睡状態に陥ってしまう。その間にベルリンの壁が崩壊し、統一ドイツは資本主義国家となる。やが
て8ヶ月後、クリスティアーネは奇跡的に覚醒するのだが…。
[寸評]東ベルリンを舞台に、昏睡中に東西ドイツが統一され、意識を取り戻した母が再びショックを受けないよう、消滅前の
東ドイツを必死に見せ続ける息子の奮闘をユーモラスに描いた作品。私が会社に入った1989年は天安門事件、ベルリン
の壁崩壊、という世界史に残る大きな2つの事件が起きた年である。高校時代の友人I君が卒業旅行で1990年春に欧州
に行き(一浪しているため)、ベルリンの壁の破片をおみやげにくれた。この東西ドイツ統合という史実をユーモラスに上
手く描写した本作品の発想は素晴らしいものがある。あの破片に込められた状況を理解する上で良い勉強にもなった。
母に悟られないよう、アレックスが西側のピクルスしか販売されていなくなったので、一生懸命、ごみをあさり、東側のラ
ベルに移し変える様、TV特番を捏造する様は微笑ましく印象的。また本作品はキューブリック監督の傑作「2001年宇宙
の旅」「時計じかけのオレンジ」を意識しているところが垣間見れる。なかなかの良質の作品でしょう。
8.理由 (2004年日)<4.0>
[監督]大林宣彦
[出演]村田雄浩、寺島咲、岸部一徳、大和田伸也、久本雅美、松田美由紀、風吹ジュン、渡辺裕行、勝野洋
[時間]160分
[内容]1996年6月2日、東京が暴風雨に見舞われていた深夜未明、荒川区にある超高層マンション“ヴァンダール千住北ニ
ューシティ”で一家4人が殺される事件が発生する。住民台帳から犯行現場の2025号室には小糸信治一家が住んでいた
事が分かる。調べを進めるなかで、4人は小糸一家とはまったく関係ない他人である事が判明する。マンション管理人の
佐野によると、この部屋は以前から人の出入りが激しかったという。小糸一家の行方は? 殺された4人は何者なのか?
謎は深まるばかりだった…。
[寸評]宮部みゆきが直木賞を受賞した作品を、大林宣彦監督が大物スターたちを贅沢に起用し映像化したサスペンス・ド
ラマ。当初はWOWOWのテレビ向けドラマ作品として企画されたが、放映後、強い要望から劇場公開が実現した。私は
宮部みゆきの小説も大林監督の映画(特に「転校生」「ふたり」)も好きである。その二人がコンビを組んだ本作品を観る
事を非常に楽しみにしていた。少なくとも、宮部の大傑作「模倣犯」の映画を観た時の失望感(あの作品は半年のTVドラ
マにすべきで映画化には無理があったとも思うが・・・)を味わう事はないと確信していた。原作を読んで7年経つので、詳
細は忘れていたが、原作を160分という枠の中で見事に具現化した出来映えといえよう。108人の登場人物が、入れ替
わり登場するが、混乱する事なく上手くまとめてある。出てくる人達は、大林作品に登場した馴染みの面子が多い。解説
・インタビュー形式を多く取り入れているが、それが結構、話を分かりやすくしている。20章程の区切りがあるが、家に帰
って原作を見ると同じような章立てであった。本作品を観て改めて、家族、人と人との絆、競売等を絡めた現代の問題を
浮き彫りにした原作の素晴らしさを実感した。大林監督まで登場するシーンがあり”やりすぎ”という感じもするが、せっか
くなら、宮部みゆきを登場させてほしかったな(中江有里が演じていたが・・・)。
9.殺人の追憶 MEMORIES OF MURDER (2003年韓)<3.5>
[監督]ポン・ジュノ
[出演]ソン・ガンホ、キム・サンギョン、バク・ヘイル、キム・レハ
[時間]130分
[内容]1986年10月23日、ソウル南部の農村で手足を縛られた若い女性の無惨な変死体が発見される。また数日後には、
同様の手口で2人目の犠牲者が出た。さっそく地元の刑事パク・トゥマンら捜査班が出動。だが、懸命な捜査も空しく、一
向に有力な手掛かりが掴めず、捜査陣は苛立ちを募らせる。その上パクと、ソウル市警から派遣されたソ・テユン刑事は
性格も捜査手法もことごとく対称的で、2人は事あるごとに衝突してしまう。こうして捜査は行き詰まり、犠牲者だけが増
えていく。そんな中、ついに一人の有力な容疑者が浮上してくるのだが…。
[寸評]韓国で80年代後半から6年間に10人の犠牲者を出し、空前の捜査態勢にもかかわらず迷宮入りしてしまった実在の
未解決連続殺人事件を基に映画化したサスペンス。最初に「犯人は未だ捕まらない・・・」と表示されていたので、結末
がモヤモヤした形になる事は見えていた。2人の刑事の葛藤が中心に描かれており、前半はソン・ガンホ演じるバク刑事
が安易な行動を繰り返すのに違和感を感じたが、後半は次第に切迫感が出てきて、それなりに見応えがあった。犯人
の有力候補まであげながら、結局断定できずに終わってしまうのはやはり辛く後味が悪い。最後のシーンのソン・ガンホ
の表情は意味深だった・・・(あれは犯人と思ったのか?ソ刑事と思ったのか?)それにしても事件の真犯人は本作品を
韓国かどこかで観たのだろうか?日本でも残虐な事件が迷宮化する事が多々あるが、本当に悲しいものがある。
10.阿修羅のごとく (2003年日)<3.0>
[監督]森田芳光
[出演]大竹しのぶ、黒木瞳、深津絵里、深田恭子、中村獅童、小林薫、RIKIYA、桃井かおり、八千草薫、仲代達也
[時間]135分
[内容]昭和54年の冬。竹沢家の三女・滝子が突然3人の姉妹全員を呼び集めた。滝子は探偵の証拠写真を示し、70歳に
なる父・恒太郎に愛人と子供がいると伝える。4人は母には知らせないようにと約束する。だが、彼女たちも互いに人に
は言えない問題を抱えていた。華道で生計を立てる未亡人の長女・綱子は、妻子ある男性と付き合っている。次女・巻
子は夫の浮気を疑い始めていた。潔癖症の滝子は、父の調査を頼んだ興信所の内気な青年との恋が足踏み状態。四
女・咲子は芽が出ないボクサーと同棲中。母・ふじだけが、何も知らずに平穏な日々を過ごしているようだった…。
[寸評]向田邦子の原作で、父の浮気を機に4姉妹各々の人生にも様々な問題を抱えていることが露呈し、やがてはお互
いに心の内をぶちまけていく様を描いた作品。昭和54〜55年が舞台となっており、やはり今と時代が異なるのか、女性
が”じっと耐えて極力波風を立てない姿”を描写している。両親・4姉妹のエピソードを交え、話は淡々と進んでいき、ラス
トは何ともスッキリしない(体裁よくまとめた感じ)形で終わる。印象深いのは大竹しのぶと桃井かおりの壮絶なバトルシ
ーン(この2人は上手いものだ)、中村獅童の妙演、やたら食事の場面が多い事(家族の触れ合いは食事にありき?)、
後半に冴え渡った深津絵里の演技かな。深田恭子が演じた咲子は子供をよく置いて登場していたが、その間、誰が面
倒をみていたのだろう?本作品で森田芳光監督は2003年日本アカデミー賞で最優秀監督賞を受賞しているが、そこま
でのものか個人的には疑問。
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