一覧へ 次頁ヘ
1.パリ・ルーヴル美術館の秘密  LA VILLE LOUVRE (1990年仏)<3.0>     
 [監督]ニコラ・フィベール
  [出演]ルーブル美術館のスタッフ達
  [時間]85分
 [内容]館内の所蔵品は約35万点を数え、全て隈無く見て廻ると1週間では足りないといわれる世界最大のルーヴル美
   術館。この巨大な美術館で働く人は当然ながら学芸員だけではない。美術品を設置する人、金メッキ師、清掃員、庭師、
   音響学者、消防士など、各々の分野の専門家達による約1,200名のスタッフによって支えられている。カメラは、献身的あ
   るいは職人的に働くスタッフや、一つの作品をめぐって激しい議論を戦わせる学芸員たちの姿を捉える一方で、彼らが時
   折見せる人間くさいユーモラスな一面をも愛情溢れる視点で映し出していく。
  [寸評]世界最大の美術館、パリ・ルーヴル美術館の、通常では決して目にすることのできない舞台裏に迫った貴重なドキ
   ュメンタリー。他のドキュメンタリー作品と異なり、ナレーションもなく、淡々とスタッフが貴重な所蔵作品を守り続け、美術
   館運営を影で支える献身的な仕事ぶりを映し出している。ルーブル美術館は行った事がないが、この映像を観ていると巨
   大である事が分かる。服装の身だしなみ、健康への留意(トレーニングルームが設置)、美術品の扱いの丁重さ等、裏方
   の仕事の大変さがよく分かる。観ていて楽しい内容ではないが、めったに目にする事のない貴重な映像だと思う。美術に
   関心の強い人は、もっと違う感じ取り方をするかもしれない。

2.カンフーハッスル 功天 (2004年中)<4.0>     
 [監督]チャウ・シンチー
  [出演]チャウ・シンチー、ツァン・カンチョン、ローラ・フオ、チョン・マンキョン
  [時間]99分
 [内容]生きるためには強くなり悪とならなければならないと信じる負け犬のチンピラ、シン。彼の夢は栄華を誇る冷酷非情
   なギャング団“斧頭会”に入る事だ。頼りにならない相棒とコソ泥を繰り返す。ある日、ひと仕事するべく貧民街の“豚小
   屋砦”というアパートに目を付けたシンは、そこで斧頭会の連中と住民たちとのモメ事に遭遇する。なんと住民達は大勢い
   た斧頭会の面々を易々とかたづけてしまうのだった。驚いた事に、彼らはかつてカンフーを極めた最強の達人達だったの
   だ。怒りに燃える組長は、殺し屋を雇い住民達のもとへ次々と送り込む。そしてその対決を目の当たりにしたシンの中で
   何かが目覚めるのだった・・・。
  [寸評]「少林サッカー」のチャウ・シンチー監督がカンフー映画に挑んだアクション・コメディ。宣伝コピーの「ありえねー」の
   通り、奇想天外なアクションを見せてくれるし、大いに笑わせてくれる。本年の初笑い映画として最適だった。何も気にせ
   ず純粋に楽しむのがよいでしょう。“豚小屋砦”の大家夫婦の役柄は良かった(特におかみさんのインパクトが強い-中尾
   ミエに似ている-)。主人公のシンの役割は一体何だろう?中途半端だな・・・と思って観ていたら、最後の最後に見せて
   くれたね。彼の覚醒シーンは昔、TVでやっていた特撮「イナズマン」を思い出してしまった。欲をいえば、もう少し彼の見せ
   場が増えても良かったかもしれない。
   
3.マイ・ボディガード MAN ON FIRE (2004年米・メキシコ)<4.0>     
 [監督]トニー・スコット
  [出演]デンゼル・ワシントン、ダコタ・ファニング、クリストファー・ウォーケン、ラダ・ミッチェル
  [時間]146分
 [内容]元CIAの特殊部隊員ジョン・クリーシーはこれまで、米軍の対テロ部隊に所属して16年に渡り暗殺の仕事を続けて
   きた。そのためか心を閉ざし、生きる希望を見失っている。そんなクリーシーはある日、メキシコで護衛の仕事をしている
   部隊の先輩レイバーンから新しい仕事を請け負う事になった。それは、誘拐事件が多発するメキシコ・シティに住む実業
   家の9歳になる可憐な娘ピタの“ボディガード”だった。さすがに始めはこの仕事に乗り気でなかったクリーシーも、ピタの
   無邪気な笑顔や素直な優しさに触れるうちに心洗われていくのだが…。事件は起こった・・・。
  [寸評]孤独な男と少女の心温まる交流と壮絶な復讐劇を緊迫感溢れるタッチで描いたサスペンス。「スパイゲーム」のトニ
   −・スコット監督らしい演出だった。本作品はR-15指定となっている。それはデンゼル演じるクリーシーの復讐の仕方が
   かなり凄まじいからだ。ピタが誘拐されてから、彼女の死をコメントされるものの、”本当に彼女の生死はどうなのか?”を
   常に思いながら復讐劇を見入る事になる。本作品を今後観てみようという人には、生死については何も言わない方がよい
   でしょう。クリーシーも可愛いピタのためとはいえ、あそこまでやってよいか、という気もするが、後半の展開は目が離せな
   い。穏やかな前半とは対照的だ。それにしても、警察は犯人追跡の際、完全にクリーシーを盾にしていたが、あれで良い
   のか?警察の誘拐担当の責任者、弁護士等の悪徳ぶりは嫌だね。現実にも十分ありそうで怖い。日本も物騒な事件が
   多いが、中南米の誘拐の多さには驚いた。

4.レイクサイド マーダーケース (2004年日)<3.5>     
 [監督]青山真治
  [出演]役所広司薬師丸ひろ子、柄本明、鶴見辰吾、杉田かおる、黒田福美、眞野裕子、豊川悦司
  [時間]118分
 [内容]ある日、中学受験を控えた子どもを持つ3家族が塾の講師を招き、湖畔の別荘で一緒に勉強合宿を開く事になっ
   た。家族とは別居中の並木俊介も、中学受験には疑問を持ちつつも、妻・美菜子と娘(美菜子の連れ子)のためと思い、
   已む無くこの合宿に参加した。3家族は講師・津久見の指導のもと、子どもの勉強や面接の訓練などに打ち込む。そんな
   時、俊介の仕事仲間で愛人でもある英里子が突然別荘にやって来る。俊介は困惑する。やがてその夜、俊介は別荘の
   リビングで英里子の死体を発見する。美菜子が犯行を告白する中、スキャンダルを恐れた他の親たちは積極的に事件の
   隠蔽工作進めるのだが・・
  [寸評]人気作家・東野圭吾の小説『レイクサイド』を映画化したミステリー・サスペンス。俳優陣が豪華で各々が持ち味を発
   揮している。私にとって高校・大学時代にアイドルであった薬師丸ひろ子が、刺々しい表情を何度も見せるので、時代の
   流れと寂しいものを感じたな。「金八先生」の”十五才の母”のカップルを演じた鶴見辰吾と今、話題の杉田かおるが夫婦
   役として登場している。話の内容は緊張感があり、R‐15指定になるだけの辛いシーンもあるが、意外な結末を迎える。そ
   れだけに後味の悪い結末だ・・・。この作品は”お受験”の問題をクローズアップして、それに伴う家庭の支援体制、親子
   の心理状況を描いている。「それにしてもなあ・・・」と思うが、親の立場から分からなくもない。しかし、この作品のポイント
   は結末とそれに対する親の対応の仕方にある。話はできませんが、重苦しいなあ・・・

5.赤毛のアン/アンの結婚 ANNE OF GREEN GABLES: THE CONTINUING STORY
    (2000年カナダ)<3.5>     
 [監督]ステファン・スケイニ
  [出演]ミーガン・フォローズ、ジョサナン・グロンビー、シュイラー・グラント、キャメロン・ダッド
  [時間]147分
 [内容]プリンス・エドワード島のアボンリーにアンはマリラの死後、はじめて帰郷した。ニューヨークの病院で外科医として
   働く事になった婚約者のギルバートは、自分と一緒に行ってくれるようアンを説得する。そのために、ギルバートは大手出
   版社にアンの働き口を手配していた。しかし、そこで編集者として働く事になったアンは、隙を見てやり手のライター・ジャ
   ックに協力する形で自分の作品を書き上げたが、ジャックのみの著作として出版されてしまう。一方、ギルバートも大都
   会の病院で横行する政治の渦に翻弄され打ちのめされてしまう。夢破れた2人はプリンス・エドワード島へと戻り、そこで
   結婚する・・・。しかし、間のなくギルバートは戦場へと旅立ち、そのまま行方不明になってしまう。アンはギルバートの行
   方を探すため、フランスへと渡るのだった……。
  [寸評]10年以上前に「赤毛のアン」(1作目)「アンの青春」(2作目)を観て”良い作品”という印象をずっと持っていた。3作
    目となる「アンの結婚」が2000年頃に劇場公開された時に、観たいとは思ったが、2作目との間の期間が空きすぎて前
    2作の内容を忘れているため、躊躇している内に機を逸していた。昨年11月に3部作の各作品のDVDが廉価版で発売
    されたので、”子供達にもみせたい”と思い、1・2作目を購入し、冬休みの1/4〜5に妻子・母と一緒に鑑賞した。2作品
    で7時間という長さにも関わらず、全員集中して観て面白さを痛感した。母は実はアンの作品が好きで1,2作目を数回観
    ており、3作目も劇場で観ている。私と妻子は、ここまできたら3作目を観ないと気がすまなくなり、DVDを購入して鑑賞
    する運びとなった。(長い前置きでした・・・)
    本作品は「アンの青春」から5年後の設定であるが、製作期間が12年空いており、アン、ギルバート、ダイアナは同じ俳
    優が演じているので、どう見ても年取ってみえてしょうがない(特にアン)。一番涙ぐませてくれたマニラが既に亡くなっ
    ている設定で、美しいグリーン・ゲーブルもすたれた感じがするので非常に残念だった。今回は、都会や戦場にまで
    飛び込んでいくので、まるで前2作とは雰囲気が違う。戦場のシーンになると子供達には流石に刺激が強いため、鑑賞
    中止とした。アンのたくましさ・優しさを描く点はシリーズを通じて変わらないし、観ていて飽きないのだが、どうしても本
    作品は外伝という感じが否めない。147分の作品だが、カナダでは「完全版」が上映されており、本作品に40分程追加
    されているようだ。話の展開が急に飛んだりするのは、そのせいだろう。最後はそれなりに良い形で締めたので、これ
    で完結という事でしょう。3作目は異色ではあるが、「赤毛のアン」シリーズは総じてオススメである事は確かです。

                              一覧へ 次頁ヘ