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56.クリムゾン・タイド CRIMSON TIDE (1995年米)<4.0>
[監督]トニー・スコット
[出演]デンゼル・ワシントン、ジーン・ハックマン、ジョージ・ズンザ、ヴィゴ・モーテンセン
[時間]115分
[内容]クーデターが勃発したロシアの情勢は一気に悪化する。、反乱軍が核施設を制圧した事で世界は第三次大戦の
危機を迎えた。米海軍はベテランの艦長と新任の副長を乗せた原子力潜水艦アラバマ号を派遣する。しかし、ロシア
艦に遭遇し、核攻撃準備の指令をめぐって艦長と副長は対立してしまう……。
[寸評]潜水艦の映画は過去に「Uボート」「レッド・オクトーバーを追え!」「U-571」「K-19」と観たが、どの作品も、深海の
密室の世界で世界の運命を左右する危機に遭遇する、という緊迫感のあるもので見応えがある。本作品がNHK衛星
放送で放映されたので録画して拝見したが、上記の作品に遜色のない面白いものであった。但し、敵方の人間は全く
登場せず、あくまで途中で途切れた命令の解釈、核攻撃の有無の判断を巡る艦長と副長の対立が全面的に描かれ
ていて内容はシンプル。トップに立つ人間の人格、判断力等、求められるものは大きく大変な事を教示している。艦長
と副長の意見対立や艦長を一度退けた副長に反乱を起こす者達、副長を支援する者達の姿は世の中の派閥抗争さ
ながらだ。デンゼル・ワシントンとジーン・ハックマンはやはり見せてくれる。ジーン・ハックマンの役は適任だった。
それにしても、あの状況の中で冷静さを保つのは神業なんだろうな。
57.マスター・アンド・コマンダー MASTER AND COMMANDER: THE FAR SIDE OF THE WORLD
(2003年米) <4.0>
[監督]ピーター・ウィアー
[出演]ラッセル・クロウ
[時間]139分
[内容]ヨーロッパがナポレオンに席巻されつつある1805年、海の上でもフランスの勢力は圧倒的に優勢を誇っていた。劣勢
のイギリス軍は、それまでに多くの兵士を失い、幼い少年たちまで徴兵しなければならない戦況に立たされている。そん
な中、弱冠12歳の士官候補生ブレイクニーら数人の少年達も兵士として軍艦サプライズ号に乗り込む。伝説的な名艦長
として名を馳せるジャック・オーブリー指揮のもと、乗組員達は、フランス軍の武装船アケロン号の拿捕という重大任務に
向かう。しかし、彼らの前には、大海原の脅威という試練も待ち構えていたのだ…。
[寸評]帆船もので女性が全くといっていい程、登場しない男達のドラマ。アカデミーで作品賞にノミネートされていたので劇
場でも観たいと思っていた作品でようやくレンタルで拝見。軍の規律がベースになっているが、幾多の人間模様が描かれ
る。艦長と博士の関係が特に良く、艦長としての判断の是非を「親友としてどう思う?」と博士に問うシーンは印象的だ。
ホロムが部下達から判断の仕方に不満を問われ反目され、自ら悩みぬき、追い込んでしまうのは、サラリーマン社会を
投影しており、深刻に受け止めた。映像も結構良かったが、ガラパゴス諸島のシーンは新鮮であった。映画ロケは初めて
の模様。イグアナ等、種々の生物が生息しているのが良く分かった。後半には激しい戦闘シーンを見せてくれ、少年海尉
も活躍するので見応えがある。全般的には無難で安心して楽しめる作品といえるでしょう。何故か「宇宙戦艦ヤマト」が思
い出されたな。船旅を家族で行ってみたいと思っているが、本作品のように海が荒れるのを見ると怖いかな・・・。
58.らくだの涙 THE STORY OF THE WEEPING CAMEL (2003年独)<4.5>
[監督]ビャンバスレン・ダヴァー・ルイジ・ファロルニ
[出演]モンゴルの遊牧民の家族
[時間]91分
[内容]モンゴル南部に暮らすその遊牧民一家は、四世代が一緒に生活する大家族だ。厳しい冬が過ぎ、ようやく暖かな春
となり、らくだの群れは出産の時期を迎え、家族も一段と忙しくなる。そんな中、今回が初産となる一頭の若い母らくだが
大変な難産の末、白い子らくだを産み落とす。しかし、この母らくだは生まれたばかりの子らくだが乳を欲しがっても決して
あげようとはしない。難産のショックから育児拒否をしてしまったのだ。このままでは子らくだの命はもたない。心配した一
家は、伝説の音楽療法を行なうため、遠い町から馬頭琴の演奏家を連れてくるのだった・・・。
[寸評]ミュンヘン映像映画大学で映画製作を学ぶモンゴル人のビャンバスレン・ダバーとイタリア人のルイジ・ファロルニ
が、学校の卒業制作として作ったドキュメンタリー映画。らくだの母子の絆を遊牧民一家が優しく支援する話で、ほのぼの
とした良い内容だ。難産がショックで育児拒否になり、子供に愛情を感じない”母らくだ”、動物の本能か、あくまで母の乳
を求める”子らくだ”。子らくだも、ひたすら拒絶され続ける内に母らくだに嫌悪感を持ち、遊牧民が母らくだの乳をしぼって
きて飲ませようとしても吐き出す様・母に愛されずせつない雰囲気を漂わせる様はインパクトがあり、人間社会の「幼児虐
待」を思い起こされる。何とかならないのかと見守っていると、遊牧民一家が冷静に母子の絆を回復させるために取った
手段が琴の演奏と歌であった。それも本当に回復してしまうのだから驚きであった。音楽は「心を癒す」作用があるが、ら
くだにも通ずるものなんだね・・・。モンゴルの雰囲気、遊牧民の生活の様(「スターウォーズW」に出てくるルークが育った
惑星タトゥイーンみたいだ)が味わえ、親子の絆の大切さを描いた秀逸なドキュメンタリーである。
59.笑の大学 (2004年日)<4.0>
[監督]星護
[出演]役所広司、稲垣吾郎
[時間]121分
[内容]日本が戦争へと突き進んでいた昭和15年。国民の戦意高揚の妨げになると様々な娯楽が取締りの対象となってい
たこの時代では、演劇も台本の段階で厳しい検閲を受けていた。警視庁の取調室では2人の男が新作喜劇を巡って熱い
火花を散らしていた。一人は、一度も笑った事がないという厳格な検閲官・向坂睦夫。相対するのは、笑いに命をかける
劇団“笑の大学”の座付作家・椿一。向坂は椿に何かと無理難題を突きつける。上演の許可をもらうため、その要求を聞
き入れながらも、何とか“笑い”を残そうと苦悩する椿だったが…。
[寸評]脚本家・三谷幸喜の傑作舞台劇を三谷幸喜自らの脚本で映画化したコメディ・ドラマ。私にとっては、今年一番楽し
みにしていた邦画。三谷氏の脚本ゆえ、「2人芝居なので2時間、退屈しないだろうか?」という不安は余りなかったが、
役所広司の演技は素晴らしく、稲垣吾郎も役所広司に引っぱられるように奮闘しているので2人の熱演で十分楽しませて
くれた。最後はハッピーな展開になるかと思いきや、当時の時代背景もあり、緊迫感が漂ってきて、意外な展開になった
な・・・。劇作家というのは大変な稼業だな。本作品は「笑い」という効用についても語られており、吹き出すシーンが幾つ
かあるので、面白いとは思う。三谷作品(映画・ドラマ・ミュージカル)は登場人物の各人をユーモラスに描いているので、
今回は”2人だけ”ゆえ、ユーモア加減が、どうしても制約されてしまった感じがしたが、それは已むをえないかな?
60.ラブ・ストーリー THE CLASSICS (2003年韓)<4.0>
[監督]クァク・ジェオン
[出演]ソン・イェジン、チョ・スンウ、チョ・インソン、イ・ギウ、イ・サンイン
[時間]129分
[内容]女子大生のジヘは演劇部の先輩サンミンに恋焦がれている。彼女はある時、同じくサンミンに想いを寄せる友人か
ら、ラブレターの代筆を頼まれ引き受けてしまう。複雑な想いの彼女はある日、家の中で小さな木箱を見つける。その中
には、母ジュヒがしたためた35年前の日記帳と何通もの手紙が入っていた。ジヘは、それらにそっと目を通し始める。
やがて彼女は、母のあまりにも切ない初恋の物語を知る事になる。自分の今の境遇を思わせる母の恋愛に不思議なも
のを感じるのだった。そこに書かれていたある秘密が、やがてジヘ自身の恋の運命をも変えることになるのだった…。
[寸評]「猟奇的な彼女」の監督クァク・ジェヨンが描く、時を越え、親子2世代の各々の甘く切ない純愛を綴ったラブ・ストー
リー。7月に観た「永遠の片想い」に出演していたソン・イェジンがヒロインで母・子の2世代を演じている。「猟奇的な彼
女」のヒロインとは対照的な清楚なタイプだ。ノスタルジックに描かれており、しんみりとさせてくれる内容だ。途中で話
の結末が読めてしまったが、それでもラストは感動的である。「猟奇的な彼女」同様、音楽の使い方も巧みで、最後に
感動を与えてくれるところはクァク・ジェオンの上手さでしょう。本作品も良いが、「猟奇的な彼女」のインパクトは余りに
強烈だったと思う。12月に「猟奇的な彼女」の監督・ヒロインのコンビによる「僕の彼女を紹介します」が公開されるので
楽しみにしている。
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