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51.棒たおし! (2003年日)<3.0>     
 [監督]前田哲
  [出演]谷内伸也、金子恭平、古屋敬多、鍵本輝、平良愛梨、平田満、松田美由紀、三浦友和
  [時間]90分
 [内容]本格的な受験シーズンを目前に控え、高山次雄は退屈な高校生活を持て余していた。クラスのいじめらっ子が旗
   竿の上に引っ掛けられたズボンを、ポールをよじ登って取ってやったのも、別に大した意味があるわけじゃない。だがそ
   れを見ていた同じクラスの久永勇は、突然「相棒!一緒に体育祭で棒たおしやろうぜ!」といい始める。相棒だなんて冗
   談じゃない。棒たおしも真っ平ごめんだ。だが勇の勢いと強引さに押された事と、恋心を抱く同級生の小百合に“勝った
   らキスしてあげる”と言われ、て、結局は次雄も棒たおしに加わることになってしまう…。
  [寸評]「ウォーター・ボーイズ」のように高校生が何かにひたむきに取り組むドラマには青春時代を回帰できる事もあり、
   興味を感じる。本作品は一度レンタルしたものの観ずに返却してしまったが、深夜にTV放映されたので録画して拝見。
   「棒たおし」という競技をよく知らなかったが、これは結構危険なものだね。目標を見出せなく家庭の問題でも悩みを
   抱える次雄、彼を取り巻く勇と小百合も各々重いものを背負っている。ひと時ではあれ「棒たおし」にエネルギーを費や
   す男子達の姿は美しい。内容は、そんなに起伏のある話でもなく最後は物悲しい結末になるのだが、主となる高校生達
   の演技が非常に下手なのだ。特に勇役は何と表現していいのやら・・・。悩みを持つ高校生が、必ずしも上手く成し遂げ
   る事ができないのは現実の一つ。そんな側面を描いている点はよいかと思う。本作品を観終わる5分前(23:55)に2回
   目の震度4の地震があった。揺れも長く妻と緊迫していた。頼むから地震は勘弁してほしい。

52.茄子 アンダルシアの夏 (2003年日)<3.0>     
 [監督]高坂希太郎
  [出演]<声>大泉洋、小池栄子、筧利夫、平野稔、緒方愛香  
  [時間]47分
 [内容]灼熱の太陽が容赦なく照りつけるスペインのアンダルシア地方。そこでは現在、世界3大自転車レースの1つ“ブエ
    ルタ・ア・エスパーニャ”が行われていた。今日は総合争いを左右する重要な山岳ステージを明日に控えた平坦ステー
    ジだ。総合優勝を狙うチームは明日に備えて体力を温存しようと集団の中にいて大きな動きに出る気配はない。そん
    な中、ペペが所属するチーム・パオパオビールは撤退をほのめかすスポンサーにアピールするため、このステージで
    大きな勝負に打って出る。監督の指示の下、ペペはエースを引き連れ突然集団から飛び出すと追走する8人と共に10
    人の逃げの集団を形成する。そのまま後続との差を広げるため先頭に立って懸命にペダルを踏み続けるペペだが、そ
    の最中、ペペの無線には監督にペペの解雇を告げるスポンサー幹部の声が・・・。
  [寸評]本作品は黒田硫黄の連載漫画『茄子』の一編『アンダルシアの夏』を完全映像化した本格自転車アニメーション。
    監督はこれまで多くのジブリ作品にかかわり「千と千尋の神隠し」などで作画監督を務めた高坂希太郎で、日本のア
    ニメとして初めてカンヌ国際映画祭「監督週間」に正式出品された。劇場公開時も上映時間が短いので一律1,000円
    であったが、観に行かなかったのでDVDをレンタルして拝見。47分の短編ゆえ、あっという間に観れてしまうが、レンタ
    ルで観る分には悪くない。自転車レースの厳しさもよく分かるし、ゴール前の攻防もそれなりに見応えはある。但し、
    チームで戦うルールや戦略は分からなかったし、ぺぺ兄弟とカルメンの三角関係は余り意味がないような気もする。
    TVスペシャルとして観るのは良しとしても映画館で1,000円で観るのはやや高いかも?

53.LOVERS 十面埋伏  (2004年中)<4.0>     
 [監督]チャン・イーモウ
  [出演]金城武、チャン・ツィイー、アンディ・ラウ、ソン・タンタン
  [時間]120分
 [内容]唐王朝が衰退を始めた9世紀中頃の中国。“飛刀門”なる反乱軍が民衆の支持を得て勢力を拡大していた。飛刀
    門一派の壊滅に乗り出した王朝側は、捕吏のリウとジンに飛刀門のリーダーの拘束を命じる。リウは遊郭で評判を呼
    んでいる盲目の踊り子、シャオメイが飛刀門の一味とにらみ、遊郭の客になりすましたジンを送り込む。首尾良く娘を
    捕えるが、シャオメイの口が堅いと知ったリウは、今度はジンにシャオメイの脱獄を手助けさせ、彼を反乱戦士と信じ込
    ませて飛刀門のアジトへ案内させるよう仕向けるのだったが…。
  [寸評]チャン・イーモウ監督が「HERO」に引き続き、手掛けたアクション作品。互いに策略を秘めた2人の男と1人の女が
    繰り広げる壮絶な計略の応酬と悲劇的な運命に翻弄される愛の行方を描いている。美しい映像でアクションを見せて
    くれるし、話の内容もドンデン返しが続いて楽しませてくれる。主役の3人の心情もよく描かれているが、話が王朝と飛
    刀門の全面戦争までいき壮大なアクションになるかと思いきや、飛刀門の頭領も明確に姿を見せなかったし、3人の三
    角関係に終始してしまったのはやや尻すぼみの感じがした。チャン・ツィイーもすっかりアクション俳優という感じだが、
    彼女は今回、恋愛感情を表現しているので「HERO」より良い味が出ていたのではないか。

54.クジラの島の少女 WHALE RIDER  (2002年ニュージーランド・独)<4.0>     
 [監督]ニキ・カーロ
  [出演]ケイシャ・キャッスル=ヒューズ、ラウィリ・バラテーン、ヴィッキー・ホートン、クリフ・カーティス
  [時間]102分
 [内容]ニュージーランドの小さな浜辺の村。祖先の勇者パイケアがクジラに導かれこの地へ辿り着いたという伝説を語り
   継ぐマオリ族。彼らは代々男を族長として村を守り続けてきた。ある時、族長の長男ポロランギは双子の男女を授かっ
   た。しかし、喜びも束の間、男の子と母親は出産時に命を落としてしまう。ポロランギは悲しみに暮れ、一人娘を残して
   村を去って行った。娘は伝説の勇者と同じ名前パイケアと名付けられ、祖父母のもとで育てられる。パイケアが12歳に
   なった時、村では彼女と同年代の少年達が集められ、後継者育成の訓練が始まる。しかし、女であるパイケアはその
   訓練への参加を許されなかった…。
  [寸評]マオリ族出身の作家ウィティ・イヒマエラの原作を、ニュージーランドの女性監督ニキ・カーロが映画化。劇場公開
   時から関心があったのでレンタルで拝見。マオリ族の伝統を守ろうと奮闘する族長の苦悩や、女であるために伝統を継
   ぐ事を許されない少女が、因習を打破して自ら運命を切り開こうとする一途な姿を描いている。パイケアの祖父=族長は
   頑固で跡取りを男に固執しているので、パイケアに何かと辛く当たる。決して彼女が可愛くないわけではないのだが。
   パイケアも祖父の本心(奥底では自分を可愛いと思ってくれている)を知ってか、何とか関心をひこうと必死にもがく姿が
   健気であり、いたたまれない。彼女の強さには感心させられ、救いにもなっている。地球の裏側の世界を舞台にしてお  
   り、クジラを皆で救出しに行くシーンなど新鮮だった。文化の継承と継承者を巡る人間の葛藤を描いた何気に良い作品。

55.スウィングガールズ (2004年日)<4.0>     
 [監督]矢口史靖
  [出演]上野樹里、貫地谷しほり、本仮屋ユイカ、豊島由佳梨、平岡祐太、竹中直人、白石美帆、渡辺えり子
  [時間]105分
 [内容]東北地方の片田舎にある山川高校。夏休みのある日、13人の落ちこぼれ女子生徒達は教室で数学の補習を受け
   ていた。その時、補習組の一人、鈴木友子が高校野球の予選大会の応援に行ったブラスバンド部の仕出し弁当が遅れ
   て届いた事に気づき、弁当運びを口実に13人はまんまと補習を抜け出すことに成功する。だが道中、弁当は長い時間
   炎天下に晒されてしまい、それを口にしたブラスバンドの生徒達は、次々と腹痛を起こして入院する事態となった。唯一
   難を逃れた中村拓雄は、次の試合までに即席のブラスバンドを結成する事にするが、集まったのは補習をサボるのが
   目的の友子を始めとする13人と、ちょっと変わった女子3人だけだった。そこで拓雄は、17人でも演奏可能なビッグバンド
   ジャズをやろうと思いつくのだが…。
  [寸評]「ウォーターボーイズ」の矢口史靖監督が、今度は東北の高校を舞台に、ビッグバンドを組んでスウィング・ジャズ
    の演奏に熱中するようになる女子高生達を描いた青春音楽ドラマ。バンドのメンバー全員が4ヵ月にわたる猛特訓を行
    い、劇中で演奏される楽曲すべてを吹替えなしでこなしている。実際に現在、メンバーによる演奏会も行われている
    (「めざましテレビ」で紹介されていた)。内容は「ウォーターボーイズ」同様の展開である。最初は無気力な女子高生達
    が、ひよんな事からバンドを組む事になり、皆で協力をし紆余曲折しながら、最後はビシっと演奏を決めてくれる。細か
    いアラ(高校野球の予選であんなに試合の日程が空く事はない、演奏会のプログラムを見ずに演奏会当日に臨む事
    はありえない等)は所々見受けられるが、最後の演奏を聞けば良しとなる。私も形は違え、演奏会場の舞台で演奏を
    終えて拍手をされた際の感慨の大きさは分かるだけに、彼女達の感動と一体となれた。4ヶ月の練習で実際にあそこ
    まで演奏できるようになるのは大したもの。映画だけの話なら信憑性に欠けるが、実際に成し遂げているから、「人間
    その気になればやる事はできる!」という事でしょう。青春時代に彼女達のような経験を味わえる事は素晴らしい事
    だ。38歳の誕生日の日に微笑ましく勇気付けられる作品を見せて頂きました。

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