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6.小さな中国のお針子 BALZAC ET LA PETITE TAILLEUSE CHINOISE (2002年仏)<3.0>     
 [監督]ダイ・シージェ
  [出演]ジョウ・シュン、リィウ・イエ、チュン・コン、ツォン・チーチュン
  [時間]110分
 [内容]1971年、文革の嵐が吹き荒れる中国。青年マーとルオは医者を親に持つ事を理由に、反革命分子の子として再教育
    のために奥深い山村へ送り込まれた。彼らはそこで過酷な肉体労働を強いられる。ある日2人は、美しい少女、お針子に
    出会う。ルオはお針子に一目惚れした。彼らは、同じ再教育で来ている若者が禁書である西洋の本を大量に隠し持って
    いる事を知り、それを盗み出す。そして、文盲のお針子に毎夜、西洋の文学を読み聞かせてあげるのだった。許されな
    い秘密を共有することで結びつきを強める3人。そして、お針子は西洋文学が語る自由に次第に目覚めていく…。
  [寸評]昨年、ミニ・シアター系で公開された作品。中国の”あくまでも思想を強制しようとする「再教育」”には改めて驚いた。
    民家の糞をタルに入れて山道をかついで、こぼれ落ちるシーンは印象深い。雄大な景色は美しいが、あの環境の中で実
    際に生活するとなると大変だ。本作品はマーとルオとお針子とのピュアでほろ苦いラブ・ストーリーではあるが、マーの
    立場でみると非常に辛いものがあるよね。全体的に淡々とした調子は「山の郵便配達」と同じなのだが、本作品は余り訴
    えてくるものを感じ取れなかったかな。

7.呪怨 (2002年日)<3.0>     
 [監督]清水崇
  [出演]奥菜恵、伊東美咲、上原美佐、市川由衣、津田寛治、柴田かよこ
  [時間]92分
 [内容]ある日、介護ボランティアをする女子大生の仁科理佳は、寝たきりの老婆・徳永幸枝の様子を見るために”その家”
    を訪れた。理佳は何か不気味な雰囲気を感じつつも家の中へと入っていく。悪臭が漂い物が散乱する中を進み、一階の
    薄暗い部屋で幸枝を発見する理佳だったが…。数日前、幸枝の息子・勝也が帰宅すると妻が倒れていた。この家に引っ
    越して以来、一家は不吉なことに見舞われ続けていた。やがて勝也の妹・仁美が不審に思いこの家にやって来るが、
    どこか様子のおかしい勝也に門前払いをされてしまう。これを機に、仁美にも不吉なことが憑きまとうようになる・・・
  [寸評]昨年、妻と「リング3部作」を観た後、次に観るホラーは本作品と決めていた。2/3(火)の仕事帰りに近所のレンタル
    店に寄って半額クーポンを使って借りてきたら、妻がその日の夜に早速観たいと言うので拝見。本作品はどう評して良い
    のだろう。中味は極めて単純で、出てくる人が(時系列があちこちに飛ぶが)次々に餌食になってしまう様を描いている。
    但し、人は変わってもパターンは基本的に同じなのだが・・・。音響や心理的に怖がらせてはくれるのだが、本作品は
    ホラーといいながら、時折爆笑させてくれるのだ(ギャグを使っている、という意味ではない)。笑ってしまうホラー映画と
    いうのも珍しい。92分の時間をそれなりに楽しませてはもらったが、冷静に考えるとやはり内容はイマヒトツな感じがす
    る。そういう面では「リング」の方が上手く製作されている作品だと思った。

8.ベッカムに恋して BEND IT LIKE BECKHAM (2002年英・米・独)<3.5>     
 [監督]グリンダ・チャーダ
  [出演]バーミンダ・ナーグラ、キーラ・ナイトレイ、ジョナサン・リス=メイヤーズ、アヌパム・カー
  [時間]112分
 [内容]サッカーとベッカムが何よりも好きなジェスはインド系イギリス人の女の子だ。ところが、彼女の家はインドの伝統と
    習慣を重んじる保守的な家庭なので、大好きなサッカー中継も親の目を気にしながら観戦する有様。そんな彼女はある
    日、いつものように男の子達に混じってサッカーを楽しんでいるところ、地元の女子サッカーチームのエースストライカー
    のジュールズに能力の高さを見込まれて勧誘される。ジェスは戸惑いながらも両親に内緒で本格的にサッカーに取り組
    み始める。しかし、ある時、彼女は練習帰りにユニフォーム姿でいるのを母親に見られてしまうのだった…。
  [寸評]女性があくまでも自分の夢を追い求めたいものの、家族・慣習・民族という障壁が立ちふさがり、それをクリアして突
    き進んでいく、という内容。「モンスーン・ウェディング」「ムトゥ踊るマハラジャ」でもインドの文化を垣間見たが、本作品も
    ジェスの姉の結婚式の前夜祭では近親者が集まり、皆で派手に踊りまくっている。舞台が英国であれだけのインド人が
    いるというのは英国が移民国家という事を示しているのだろう。お世辞でも決して魅力的とはいえないジェスだが、好きな
    サッカーをやっている生き生きとした姿はいいものだ。最後の父親とのやり取りなんか良いよね。我が家の子供達は将来
    どんな道を選択していくのだろう?その時にはお父さんらしく見守ってあげたいものだが・・・。ジェスと監督との恋愛感情
    は妙に唐突ではないか?人の良いトニーが可哀相な感じがするな。

9.ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 THE LORD OF THE RINGS: THE RETURN OF THE KING
   (2003年ニュージーランド・米)<5.0>     
 [監督]ピーター・ジャクソン
  [出演]イライジャ・ウッド、イアン・マッケラン、リブ・タイラー、ヴィゴ・モーテンセン、ショーン・アスティン
  [時間]203分
 [内容]第2部はアラゴルンやガンダルフ達がサルマンの率いる1万を超える軍隊に勝利を収め、人間の国ローハンの人々を
    救い、メリーとピピンもエント族の助けを借りてサルマンが支配するオルサンクの塔を破壊してサルマンの封じ込めに成功
    したところで終わった。第3部では、再会を果たしたアラゴルンやメリー達の喜びも束の間、冥王サウロンは、もう一つの人
    間の国ゴンドールに20万もの大軍を送り込んでくる。中つ国の最後の砦であるゴンドールを死守するため、旅の仲間達は
    もちろん、永らくゴンドールと国交が途絶えていたローハンの人々も立ち上がる。一方、サムと共にモルドールの滅びの山
    を目指して旅を続けるフロドは、指輪の魔力に押し潰されかけたり、2人の道先案内のゴラム(前の指輪の所有者)の陰
    謀に陥れられようとしていた…。
  [寸評]待望の第3部完結編。子供達が両親と留守番をしてくれ、妻と先行上映(21:00開演)を鑑賞してきた。席が前から2列
    目しか取れなかったので画面を下から見上げる感じなので、始まる前は体勢が悪くて体が持つか心配だったが、何の事
    はない、3時間23分の長丁場も存分に堪能させてもらった。本当にしっかり完結する。一言でいうと”凄い!凄すぎる!”と
    いう感じだ。戦闘シーンは第2部「二つの塔」をも上回り、これでもか!これでもか!という程、恐ろしいクリーチャーが登場
    してくる(オークの戦闘リーダーの顔が一番グロテスクだと思うが・・・)。アラゴルン、レゴラス、ギムリは相変わらず目茶
    苦茶に強すぎるし、メリーやピピンも良い役割を果たす。エオウィンの活躍も印象深い。でも何といっても私が選ぶMVPは
    サムでしょう。彼の頭の中には鉄板が入っているのだろうか?ともかくタフで強くて温かいんだな。フロドは確かに担う責
    務は重いのだが、旅の仲間達の中で一番活躍していないのでは?サムや皆の力なしでは、とても責務を遂行できなかっ
    た。仕事でも何にしてもそうだが、皆の力を結集して始めて物事は遂行・達成できるものなんだ、という事を示してくれてい
    る。最後の最後のシーンをサムを写している事から、主役はサムと言ってもいいのかもしれない。それぐらい本作品のサ
    ムは魅せてくれる。戦闘シーンが中心であるが、最後にホビット荘が出てくるのはホっとさせてくれる。第1部を思い起こさ
    せ、メルヘンちっくな感じがして良いんだな。フロドとガンダルフの最後のあのシーンは何か唐突な感じもするがどうなの
    だろう?台詞の細かい部分で少しばかり気になる箇所はあったが文句なしに楽しめる作品でしょう。映画史を代表する
    3部作といってよい。今回、アカデミーで11部門にノミネートされているが、3度目の正直で最優秀作品賞は獲得できるだ
    ろうか?心情的には獲得してほしいけどね。DVDのスペシャル・エクステンディッド・ エディション版の発売(12月?)が今から待ち遠
    しい。追加シーンを加えたら本編は4時間超となるのか?この凄い本編の製作過程を描く特典映像も非常に興味深い。

10.「あの子を探して」ができるまで (2002年日)<3.5>     
 [監督]吉田啓
  [出演]ウェイ・ミンジ、チャン・ホエクー、チャン・イーモウ <ナレーション>武藤美幸
  [時間]60分
 [内容]過疎の進む小さな村の小学校を舞台にした映画「あの子を探して」のロケ地は、当初中国の北部を予定していた。と
    ころが、イーモウ監督が演出を担当するオペラ『トゥーランドット』の北京紫禁城公演と重なってしまったため、急遽北京郊
    外での撮影となる。一方、クラスの生徒役は、オーディションで決めることになっていたが、地元の小学校に通う生徒の父
    兄が全員の出演を希望してきた。これを制作サイドが了承し、結局地元の生徒18人とオーディションで選ばれた10人が出
    演する事になる。イーモウ監督は、子供達の自然な演技を引き出すため色々と腐心して撮影に挑むのだった。
  [寸評]1999年にヴェネチア映画祭でグランプリを受賞するなど世界各国で高い評価を受けたチャン・イーモウ監督の名作「あ
    の子を探して」の舞台裏を密着したドキュメンタリー作品で何故か日本が製作をしている。DVDの特典映像のメイキングと
    同じような内容・時間であるが、昨年、名古屋の1館で劇場公開もされていた。私も一昨年に「あの子を探して」を観て感
    銘したから、本作品は興味深く拝見した。チャン・イーモウ監督の映画への取り組み、子供達への色々な気遣い等には感
    心させられる。特にウェイ・ミンジやチャン・ホエクーに対する熱い言葉には胸を打たれる。映画監督は出演する少年少女
    にとっては良き親父でもなければならないんだ・・・。だてに幾つかの良い作品を生み出していない。学校の生徒役の子
    供達が撮影が終わった帰りのバスで終わるのが寂しくて皆で泣いていたり、チャン・ホエクーが全て仕事を終えた時に
    号泣するシーンは何ともいえない。あの年頃の時に映画出演という希少で貴重な体験を積める事は素晴らしい事だよな。

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